先月、ソニーミュージックショップの通販限定で西城秀樹の1980年代半ばに発表されたオリジナル・アルバム5枚、『IT'S YOU』(1983年発表)、『GENTLE・A MAN』(1984年発表)、『TWILIGHT MADE…』(1985年発表)、『FROM TOKYO』(1986年発表)、『33才』(1988年発表)が復刻された。
ソニーミュージックショップ 公式WEB 「「ヒデキの軌跡。 西城秀樹 特別販売 全5作品」
http://www.110107.com/mob/pageShw.php?site=OTONANO&ima=3512&cd=hideki5cd
西城秀樹の世間一般のイメージといえば、郷ひろみ、野口五郎らとの新御三家で毎日のようにテレビに出ていた70年代がやはり圧倒的なもので、その頂点となった「ヤングマン(Y.M.C.A)」(1979年発表)があって、長髪だった髪を短くした80年代に入ってからの西城秀樹というと、まあせいぜい「ギャランドゥ」(1983年発表)くらいかと思う。
80年代初頭の頃から西城秀樹はオフコースのカバーや吉田拓郎から楽曲提供されたシングルで脱アイドルを図っていき、デビュー以来の所属事務所・芸映から独立した80年代半ばに入るとさらに拍車が掛かって、年末の賞レースやランキング番組への出演を目標とした、定期的にシングルをリリースしてテレビの視聴者層にアピールしていく活動からそういうのは傍らに置いてのアーティスト指向でアルバム中心の活動へと試みるようになっていく。今回の5枚はその時代の知る人ぞ知る作品群なのである。
80'sフリークの自分としては、ファンであった角松敏生がその時代に西城秀樹のいくつかの楽曲制作に携わっていたことを知って以来、そこから〝遡って〟80年代の西城秀樹に興味を持ち始め、とくに角松敏生の作・編曲と吉田美奈子の作詞のコラボレート曲が4曲も収録されたアルバム『TWILIGHT MADE…』は愛聴盤となっていった。
匿名性を帯びさせるためジャケットにヒデキの写真が載せられていない異色作
Wikipedia 西城秀樹『TWILIGHT MADE…』
https://ja.wikipedia.org/wiki/TWILIGHT_MADE_%E2%80%A6HIDEKI
角松敏生 VOUGU'S BAR ゲスト 西城秀樹(1992.2.9放送)
http://www.youtube.com/watch?v=-pCfc5I71Q0
しかし、この『TWILIGHT MADE…』、1985年の発表とまだCDが出始めの頃であり、当時の慣例で一斉発売とはいかなくて、アナログ盤のLPとカセットがまず先行で発売(7月21日)されてから少し経った頃(9月5日)に遅れてCD化された経緯がある。その初版っきりで早々に市場から消えてしまい、以後一度も復刻されることがなかったことから、後のCD時代になって以降はレアアイテム中のレアアイテムと化してしまった。
自分も90年代半ばの昔から関東周辺だけではなく地方の中古レコード店もこまめに廻って探していたのだが、アナログ盤のLPやその近辺のアルバムCDは発掘出来たのに『TWILIGHT MADE…』のCDはついぞ見つからなかった。結局、ヤフオクで珍しく出てきたものをかなりの高値で購入した次第。でもまあ、それこそ聴き倒すくらい聴いてきたので、ウン万円の落札金額は回収出来たと自分を納得しておこう(笑)。
BITTER AND SWEET AKINA NAKAMORI 8TH ALBUM(紙ジャケッ.../ワーナーミュージック・ジャパン
- ¥3,200
- Amazon.co.jp
- 『TWILIGHT MADE…』と同時期に角松敏生と吉田美奈子がそれぞれで関わった中森明菜のアルバム『BITTER AND SWEET』(1985年4月3日)。「ミ・アモーレ」なんかのシングルを大ヒット連発していた絶頂期の作品だったり、現在に至るまで幾度も復刻されているので、比較的容易にCDは入手出来る。
- さて今回の5枚、1983年発表の『IT'S YOU』と1984年発表の『GENTLE・A MAN』が初CD化である。とくに『GENTLE・A MAN』は『TWILIGHT MADE…』の前に角松敏生が参加した作品であるからこちらもまたカドマツ・ファン必須アイテム。昔、このアルバムはCD化されているのか否かとファンの間で情報が錯綜していたことがあった。というのは、この1984年にシングル曲のベストセレクションがCDで発表されていたし、西城秀樹と同じレコード会社のRCAビクター(当時)で作品を出していた角松敏生や石川秀美なんかは既に1984年発表のアルバムは同年中にCD化されていたので、だから『GENTLE・A MAN』も・・・と。後に結局はCD化されていないことが判明したのだけど、マヌケにも何年かは本当の幻の作品を追いかけていただけに、今回のCD復刻5作品のなかで一番『GENTLE・A MAN』が感慨深い。
角松敏生 作詞・作曲・編曲の『THROUGH THE NIGHT』のほかにも〝あの時代〟が始まる前の秋元康 作詞、後藤次利 作曲・編曲の「ONESIDED NIGHT」も聴きどころ。ゴッキーこと後藤次利が同時期にソニーのFITZBEATレーベルで作っていたソロアルバムなみにベースがうるさい!
角松敏生は参加していないが、1986年発表の『FROM TOKYO』も『TWILIGHT MADE…』と同じくらい好きなアルバム。吉田美奈子が作詞だけでなく、作曲も兼ねた3曲(うち1曲は編曲も)で参加している。それにしてもジャケットのデカいサングラスがまさに80'sといったかんじ!
今回、5枚もの80年代のオリジナル・アルバムが復刻されて嬉しいことは嬉しいのだけど、惜しむらくは『FROM TOKYO』の後に発表した洋楽スタンダードのカバー集『STRANGERS IN THE NIGHT』(1986年発表)が入っていないことだ。このアルバム、角松敏生こそ参加していないが、角松のバックバンドでシンセ全般を担当していた林有三(キーボード)が全曲アレンジ。当時で二十年から三十年前という枯れている原曲を大胆にアレンジし、リズムマシーン&シーケンサーてんこ盛りで、ドッ・ドッ・ドッ・ドッ・パッ!のカドマツサウンドが鳴っているのだ。他にも角松の右腕的存在だった青木智仁(ベース) や翌1987年のインスト・アルバム『SEA IS A LADY』で起用する土肥晃(ドラムス)と小池修(サックス)なんかも参加していて、結構なまでにカドマツ度合いが高い作品に仕上がっている。