タイトルは「危機一髪!うちの女房にかぎって!」、これは察しが付くとおり、同じTBSで1985年4月期スタートのドラマ『うちの子にかぎって・・・』からの借用。当時、フジテレビの『夕やけニャンニャン』のなかでも「うちの子に小切手」という、ダジャレで賞金を小切手にしただけのクイズコーナーがあったりしたほど。

 

今回はタンバの腰巾着となっている小野寺昭の主演エピソード。さて、小野寺はスーパーポリス所属ではなく、本庁捜査課遊撃班所属なのだが、“遊撃班”なんてのはあぶれた人物が廻されるところだから窓際部署には変わりない。しかし、洒落た高層マンションで4LDKはあろうかという間取りの自宅があり、結婚5年目で倦怠期真っ最中ながら美人妻・山口いづみを専業主婦として扶養しているだけあって、なかなか甲斐性があるもんだ。やはり、いつの時代も公務員は強いとしみじみ感じる。

 

今回、小野寺には相棒が付けられ、それは『スーパーポリス』において三浦友和に次ぐナンバー2キャラに抜擢したものの、実際はデブキャラも日系アメリカ人設定も使い切れなくて困っているウガンダ。そのスタッフの心の声をかとうかずこに代弁させて、小野寺に押しつけられる、いや預けられる。

 

そして小野寺とウガンダとで新宿歌舞伎町をぐるぐる廻って強盗犯人の阿藤海(現・阿藤快)の居所捜し出し、ラブホでお楽しみの最中のところに踏み込む。絶対的なアドバンテージがあるにもかかわらず、いらない童貞キャラでもあるウガンダは女の裸を観て発情してしまったため逮捕に失敗して、あげくに小野寺の拳銃を奪って逃げられてしまった次第。

 

部下に優しいタンバは小野寺らにマスコミを押さえられる48時間の猶予与えて、秘密裏に取り戻すよう指示。ふたたび、新宿歌舞伎町をぐるぐる廻ってみて捜したものの、結局はタイムアウトで見つからず、タンバは記者会見する羽目に。ただ、これがイイ!、タンバといえば、なんといっても“演説”が醍醐味。まさにこれがタンバ・マニア垂涎のシーンで、今回は時間が短かったり、途中で切られてしまうものの、記者会見の“演説”は、この果てしなきダメドラマの溜飲を下げてくれた。

 

また、前回から偽ロスアンゼルス・ロケや国際犯罪ネタなど大風呂敷な設定捨てて、ありがちなネタにしているのが功を奏したのか、以前と比べてあんまり突っ込みどころはない。いや、賞賛に値する部分すらある!

 

というのは、時代も時代だし、規制もそろそろ入り出した1985年にもなると相当緩くなったかなと思いきや、良くも悪くもスタッフの頭が1970年代から止まっているようで、今回の犯人の“指の無いサンタクロース”こと阿藤海はかなりのイカれた設定。傷害、殺人未遂に加えて婦女暴行で社会復帰無理な前科三犯という設定をこれでもかと活かす。

 

夜ふけのコンビニに押し入った阿藤海の拳銃強盗は、レジ裏の事務所でコンビニなのに秘密カジノなみのうなる札束勘定している店長襲撃したのをはじめ、とにかく撃つ!、撃つ!、ウガンダも撃たれるし、いつも事件に巻き込まれる不幸な出光元も撃たれる。そして勝手に宿敵にされた小野寺の美人妻・山口いづみも目を付けられ、わざわざ自宅マンションまで押し入り、まずは拳銃で脅迫。そして嫌がる山口をベッドに押し倒して犯そうとしているところに小野寺が一心不乱になって駆けつけ、まさに緊迫の対決が始まるのだが・・・。

 

うーん、誉めておいてなんだが、ここまでだな。あとは相変わらず詰めが甘い。

 

結論からいえば、拳銃を奪われた小野寺は、今回出番があんまりない三浦から事前に拳銃を借り受けていて、それで阿藤海を撃ち殺して一件落着、そのまま渡辺美里の黒歴史なデビュー曲が流れるエンディングに突入してしまう。

 

しかし、映画『野良犬』以来のせっかくの刑事ドラマ王道のネタにもかかわらず、警察官が拳銃が奪われた焦りや緊張感がまったくない。

 

まず、すでに阿藤海は拳銃を持っているから、拳銃による凶悪さの価値が半減。そして小野寺の拳銃が奪われた後の犯行に、躊躇なくその拳銃が使われてしまう。これが阿藤海が元から持っている拳銃ならば、一々の犯行のたびに自分のじゃなく小野寺も視聴者も一応は安堵するし、なんとしても自分の拳銃使わせまいと奮闘する小野寺の必死さも視聴者に伝わるものだけど、三浦から安易に拳銃借り受けて、それで最後は阿藤海を不意打ちにして仕留めるのなんてカタルシスがあまりにもない。阿藤海は小野寺が拳銃持っていないものだと思っているからこそ、クライマックスで美人妻・山口いづみを人質に取った上、さらには丸腰だと捉えて大上段に出て威圧、小野寺の絶体絶命なピンチが演出出来るはずなのに。

 

とにもかくにも、タンバの“演説”記者会見で、拳銃が犯人に奪われたことを小野寺は実名で晒され、それでウガンダや出光元も撃たれる大不祥事となり、本来は懲戒免職ものなんだけど、部下に優しいタンバのことだから、たんに謹慎だけなのか次回一週休みであとは平然と復帰してくる。