昨夜からとうとう始まった『スーパーポリス』、二話連続放送であるから第1話・第2話を連チャンして視聴してみたものの、やはり噂に違わぬグダグダさが漂っていた。

 

同じ15話で打ちきりになったアクション・ドラマ『少女コマンドーIZUMI』(フジテレビ-東映 1987年-1988年)のDVDソフト封入の解説書には、第1話放送翌日の10%未満という低視聴率の結果がもたらされた時点で打ち切りが決まった旨が記されている。当初は前番組「スケバン刑事」シリーズに倣って4クールプラス映画化で展開を構想していたが、1クール13話に縮小、さらに次番組開始への調整用に蛇足的な2話の合計15話で挫折してしまう。おそらく『スーパーポリス』も第1話、もしくは第2話くらいの時点で打ち切りが決まってしまったのは想像に難くない。

 

それでも、第1話のプロットは、ありがちな話ながら一見すると悪くはない。警視庁の一匹狼、異端児、トラブルメーカー・三浦友和は、研修名目でアメリカのロスアンゼルスに左遷させられていた。そこでジャパニーズ・ヤクザが絡む事件に首を突っ込み、スタンドプレーで裁判まで持ち込むが、組織の逆襲によって証人が襲撃されてしまう。三浦は日本に逃げた証人を追って急遽帰国。しかし、時すでに遅し、証人は消されてしまって、ますます窮地に立たされる。部下に優しい上司のタンバは、そんな三浦のために起死回生の特別部隊、スーパーポリスを編成する。そして襲撃犯人の一人で、日米で証人や関係者を次々と殺す凄腕のスナイパーは、じつは三浦の警察学校の同期で親友、前年のロス五輪射撃競技の元代表選手・高岡健二と知る。高岡はロス五輪での無残な成績に世間から嘲笑されたのを苦にして世捨て人となって裏社会に堕ちていた。三浦は消息がつかめない高岡が婚約していた根本律子を頼るのではないかと追跡し、二人は敵同士となって哀しみの再会を果たした。そして、運命の対決を迎える。

 

しかし、まあ全体的に、しょぼい出来は否めない。簡潔に示せば、『Gメン'75』の末期そのままの『Gメン'82』の、さらなる劣化版だった。

 

たとえば、第1話冒頭はあらすじに示したとおりに、ロスを舞台にしているものの、市街地の風景シーンはニュース映像の流用かライブラリーからのバンクフィルム、襲撃事件が演じられるロス市議会庁舎のシーンは、なんと逗子マリーナ(笑)。それにタイアップにおそらく日本航空が入っているのに、羽田にある乗員訓練センターにある旅客機の客室をそのまま再現したモックアップくらいしか使っていない。それで、ロスのすべてのシーンを済ましてしまっている。

 

香港ロケやヨーロッパロケで眼が肥えている従来からの『Gメン'75』ファンはあきれるし、裏番組のフジテレビ「ゴールデン洋画劇場」枠はハリウッド映画をバンバン流しているのに、これはない。ちなみに、この第1話の裏にはスティーブン・スピルバーグ制作指揮による『ポルターガイスト』(1982年公開)を本邦初オンエアで迎え撃っている。また、ほかの裏番組、テレ朝「土曜ワイド劇場」枠は、ハズさない松本清張原作もの、テレ東の看板番組となっていった『テレビあッとランダム』は、科学万博特集と強敵揃いで、この夜7時半からのTBSの看板番組『クイズダービー』に三浦友和出演させて大いに『スーパーポリス』を宣伝したからといってゴマカシの効くものではない。

 

キャスティングに関してもそれが伺える。とりあえず、タンバと三浦友和をキャスティングさせたら、あとはどうでもいい役者ばかり揃えてしまった。どうってことはない主婦生活をワイドショーやら写真週刊誌の取材攻勢に追いかけられまくった山口百恵の旦那の三浦友和以外は、旬な役者が誰一人として出てこない(肝心な第1話のゲストにしたってそう。あまりにもシブい。高岡健二に、根本律子なんて、一般的な視聴者の誰が喜ぶ?)。

 

とくに三浦友和の右腕となるウガンダだ。三浦友和とのギャップを効かしたキャスティングと思いきや、第1話・第2話通して、完全に二枚目キャラが当てはめられている。ウガンダで視聴率も女性の番組ファンも獲得できると思っていたのだろうか?、ウガンダの巨体に追いやられた二枚目新人刑事キャラの山下規介は完全に“空気”になっていた。こんなことならば、コネが横行していた『太陽にほえろ!』に行っていたほうがマシだったかもしれない。

 

その点、『スーパーポリス』から半年後の1985年秋に放送開始された、『俺たちの勲章』の80年代版リメイク、中村雅俊&根津甚八主演の「誇りの報酬」は絶妙だった。当時、「中村さんちのマックロード」で腑抜けた中村雅俊に足りないハードボイルドを根津甚八がカバーし、逆に根津のハードボイルドと妖しさからくる立ち寄りがたさを国民的人気だった中村のすっとぼけ感が緩和してお互いの魅力が十二分に発揮することになった。このいまでいうところのイケメンコンビキャラが後番組『あぶない刑事』につながったし、また展開としてハードボイルド基調の作品のなかにある数々のギャグも冴えていた。二人のハミダシ捜査に尻ぬぐいばかりさせられる上司の柳生博のガミガミキャラは言うに及ばず、中村の幼なじみの情報屋で、しがないノミ屋稼業の石橋正次が、中村と丁々発止のやりとりを繰り広げたり、いつも空回りで“漢を立てられない”悔しさのあまりに、たったひとりの舎弟の宮田恭男となすドつき漫才は面白かった。刑事ドラマファンである自分はよく人から「いや~、あぶデカってかっこよかったし、面白かったですよね!」と言われるのだが、“遊び”をウリにじゃなく、スマートに収めてある「誇りの報酬」のほうが遙かに素晴らしいと思っている。


でも、『あぶない刑事』もハードボイルド路線で、“遊び”はあくまで余興。『大追跡』みたいに撮影を重ねていく課程で芸達者な出演者たちのアドリブやツーカーになったスタッフのテンポの良さが開花したものだ。連ドラの続編の『もっとあぶない刑事』ぐらいから、それが過ぎてしまった感があるが、それは刑事ドラマの範疇を超えた番組のおしゃれ要素の人気に推されてしまったワケで、開始時に立てた基調とする路線はしっかりしていた。

 

当初から捕らぬ狸の皮算用で作られた『スーパーポリス』に足りなかったのはこれではなかったのではないか?