2009年に時代劇専門チャンネルにおいておそらくCS初?でオンエアしたものが、アンコールなのか今月再びオンエアされている。
http://www.jidaigeki.com/prog/002117_000.html
直近では今週末16日(土)の早朝5:00から、次が4月30日(土)の深夜3:00からと、時間帯があまり恵まれていないが、まあそこはCSなんで。
さて、この「大江戸神仙伝」、制作の経緯が面白い。それは80年代前半の、テレビにおける邦画放送の事情が絡む。
レンタルビデオはおろか、まだビデオデッキがそれほど普及していなかったこの時代、テレビ各局において、映画の放送は巨人戦と列ぶ魅力あるコンテンツだった。しかし、魅力あるコンテンツということは、各局間で争奪戦がひろげられ、それだけ買い付け値段も高騰していったのである。邦画では、とくに1983年のカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した「楢山節考」と、それと争った「戦場のメリークリスマス」の両作品は、話題性と箔が付いていた面でも、相当なものだったと言われる。
また一方で、現在のようなテレビ局による劇場公開作品への制作の介入も始まっていて、1983年夏、フジテレビは「南極物語」を興行的に成功させただけではなく、テレビ放送においても翌年秋の改編期の金曜日と土曜日二夜連続でプライム時間帯に前後編に分けて放送し、とくに後編は視聴率30%以上と裏番組の連続ドラマの新番組(日テレ「気分は名探偵」、TBS「スクールウォーズ」)を蹴散らした。
そういうわけで、80年代後半に入ると、各局は“二度おいしい”映画事業に本格的に乗り出していくのだが、その端境期に作られたのが「大江戸神仙伝」をはじめとした日本テレビの「水曜ロードショー」および後継の「金曜ロードショー」枠で放送するためのテレフィーチャー作品だったのである。
ご存じのように、テレフィーチャーとは、テレビ用映画のことで、広義において、長時間ドラマのことを指してもいる。日本では1977年のテレビ朝日「土曜ワイド劇場」から本格的に作られ、他の局も後に続いた。それ以前からではあるが、ドラマ、とくにフィルム作品などは、斜陽の映画産業からスタッフや俳優、プロダクションそのものまでも流入してきて、そのクオリティと隆盛とを誇っていて、映画と同じ1時間半から2時間弱の単発もの作品はさらに拍車を掛けるものであった。が、いかんせん一回限りの放送だから、制作予算も題材もテレビの枠に収まってしまっていて、どうしても“本編”と呼ばれる映画との差異が目に付くようになってきてしまったのも否めない。だから、2時間ドラマの枠にいつもより豪華な感じで邦画作品は持ってこれても、逆に映画放送の枠にいくらフィルム作品だからといってテレフィーチャー作品を持ってこれなかったのはこのためである。
つまるところ、映画放送枠における邦画作品のジレンマを抱えていたのだ。
その打破を狙って、劇場用作品なみの予算、制作期間、スタッフや俳優の豪華な布陣を敷いたのが、先述の日本テレビの「水曜ロードショー」および後継の「金曜ロードショー」枠でのテレフィーチャー作品なのである。
うーん、あいかわらず話が長くなっていく。というわけで、次回に続く。