明日は年に一度のエイプリルフール。
エイプリルフールに因んだ映画っていうのがあって、それが今回紹介するYMO・高橋幸宏主演の『四月の魚』。
四月の魚とは、フランス語でポワゾン・ダブリル。
そのポワゾン・ダブリルとは、英語で言うところのエイプリルフール。
この日は冗談じみた大嘘つくだけでなく、この四月の魚=鯖のかたちをしたチョコレート渡す習慣から、あちらでは愛の告白の日でもあるみたいで、実におフランスらしいざーます。ねぇ、スネちゃま。
で、これを題材にした映画がそれで、監督は大林宣彦。作られたのが1984年のちょうど今頃。1985年初頭を目指して公開しようとしたものの、当時は大林宣彦も高橋幸宏も一大ネームだったのにもかかわらず、なかなか配給会社の調整は付かず、制作時よりも二人の旬が落ちてしまった二年後の1986年にひっそりと公開されてしまった曰く付きの映画。
原作は、ジェームス三木の『危険なパーティー』。テレビドラマでも1973年と1992年になされていて、どちらも未見なのだけど、どうやら映画と設定は変わりない様子。というのは、内容はシチュエーション・コメディーで、妻である一流女優のヒモ同然の売れない映画監督(高橋幸宏)の家に、昔CM撮影で世話になった南の島の酋長が訪ねて来るというもの。しかし、その島の習慣で妻を大事な客人に差し出す習わしで、映画監督も差し出されていたから、今度は酋長にお返ししなければならない。いまさらそんなこと妻に言えるわけがない。さあ、困った!、どうする?、ということで、映画監督は妻の吹き替え、つまり代役を立てたのだが・・・。
素人丸出しの高橋幸宏に対し、酋長役はなんと丹波哲郎大先生。これほどまでにビミョーなキャスティングがあるだろうか(後年、テレビ東京のバラエティ番組『タモリのギャップ丼』に高橋幸宏がゲストで出たとき、レギュラーだった丹波哲郎と再会しているが、とくにこの映画のことには触れられなかったのが残念)。しかしながら、これほどまでに面白いシチュエーション・コメディーな映画はない。妻と酋長にウソを付いてテンパっている映画監督は慣れない演技にあっぷあっぷしている高橋幸宏そのものだし、対する百戦錬磨のタンバは酋長役にノリノリ。南の島の酋長といっても腰ミノ着けてやってくるわけではなく、フランス領の島だから、じつにおしゃれにそして陽気に振る舞う。普段重厚な役ばっかりだから、ここぞとばかりに開放した演技は見もの。
それから、この1984年の、一流女優の邸宅で繰り広げられる『危険なパーティー』は、身に纏う衣服も調度品もとりわけノーブル。80年代の豪華とは、誰もがすぐにバブルの頃のギトギトしたアレが頭に浮かぶけど、それとは一線を画していて世の中がバブルに突入する前だから、センスの良い豪華さに浸れること受け合い。
ハマっていた頃は、ひと月に何度も観返していたけど、最近は年に一回ある日に観るだけ。そう、毎年のエイプリルフールにいわば儀式的に観ている。それもレンタル落ちのVHSで(笑)。大林作品だというのに未だDVDソフトが出ていないんだよね、これが。
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