ライバル | 城山魂

ライバル

皆さんは人生のライバルといえる存在をお持ちだろうか?私には人生のライバルといえる存在が三人いるのだが、そのうちの一人にRという男がいる。Rは私がライフセービングに打ち込んでいた18歳の時に出会った大親友である。残念ながら私は大学の資格課程の関係で、ライフセービングをやめることになったのだが、その後もRとの交友関係は続いている。

最後に浜で出会った日から8年が経ち、今夏、私たちは一緒にビーチパトロールに入ることになった。月日は経ち、私は幼稚園の経営者、彼はライフセービングの全日本チャンピオン経験者になっていた。

ライフセーバーの朝はトレーニングから始まる。彼にしてみれば日々のトレーニングも、私にとっては決死のトレーニング。夜中、筋肉痛の痛みで目が覚める経験は久々であった。正直、先の見えないトレーニングにサボろうとする悪魔がささやいたこともあった。

しかし、パトロール最終日の朝のトレーニングで、沖からパドルボード(溺者を救出するときに使用する手漕ぎボード)で競争をすることになった。「ヨーイ!スタート!」の合図でパドルをスタートする。スタート後10秒もすると、はるか前方に彼の姿が見えた。しかし、その後の記憶はあまりない。

とにかく、必死でパドルをしていた。そして、パドルを繰り返すたびに、何かを思い出し始めていた。ひとかき、ひとかき進むたびに何ともいえない懐かしい熱い感情がこみあげる。悔しいような、ワクワクするような、誇らしいような不思議な感情。それは、間違いなく18歳の時に感じた感情であった。

毎朝5時になると起床し、一緒に浜に行く。まだ誰もいない浜の前でストレッチをした後、海に入る。そこで視線を合わせた瞬間、友達としての時間は終了。そこから2人はライバルになる。台風が押し寄せる荒波の中、どちらが先に波を越えて、沖に着くかを無言のまま競い合う。そして、先に沖に辿り着いた者がうねりに揺られながら朝日を独り占めする。それが何よりもの至福の時間であった18歳の夏。

今でこそ私たちは口で多くを語るようになってしまった。働くフィールドが違うから、それも仕方がないことだろう。ただ、人間には本気で競い合わなければ切り替わらない、心のスイッチのようなものがある。かつて背中で語り合った相手と、再び背中を見せ合ったことで私のスイッチは再びONに切り替わった(結果的に背中を見せつけられてばかりだったが・・・)。そのスイッチは生きていることの喜びを再認識させてくれる。

競争を終えた私は、この夏最高の至福の時間に包まれていた。人間には本気で向き合った時間の後にしか得られない幸せや人間関係があることに改めて気付かされた。

そんな自分のスイッチを切り替えてくれる存在を「ライバル」というのだと思う。




※1番左が私、ガッツポーズのR