OYAKATA! | 城山魂

OYAKATA!

一昨日、親友の父親の紹介で相撲部屋の親方であるN氏と一緒に食事をさせていただく機会があった。N氏は現役時代、三役まで昇進し、そのドラマティックな人生が多くのファンを引き付けた名力士である。現在は自身で相撲部屋を立ち上げ、明日の相撲界のスターの育成に励んでいる。

 親方と一緒に食事をとり、約2時間が経過した頃だったろうか。私は、親方がたびたび繰り返す、ある言葉が気になり出していた。

「反省はしてもいいが、後悔はしちゃいかんよね・・・」

親方はこの言葉を2・3回繰り返された。この言葉は経営哲学やスポーツ心理でよく耳にする言葉であった。その為、私は「この人も後悔をしないように常に全力で突き進んできた人なんだ・・・」くらいの理解で、この言葉を聞いていた。しかし、私はこの後、この言葉に対する親方の本当の思い入れに気付かされることになる。

 それは、親方が自身の現役引退について語りだした時のことだった。引退後、時間が経ち、周辺が落ち着きを見せ始めた頃、親方は自身の相撲人生を振り返る中で、稽古というものについて、考える機会があったそうだ。というのも膝が満身創痍の中、迎えた引退だったが、改めて考えると、もう少し、這いつくばってでも、頑張ることができれば、もしかしたら横綱になることが出来たのではないか、と強く感じることがあったからである。そして、親方はそれを、強く思えば思うほど、後悔の念にかられたそうである。そのことを親方が口にすると、一緒に食事をしていた女性が「あれ?親方は後悔しないんじゃなかったんですか?」と笑ってみせた。

 しかし、親方は表情ひとつ変えず、こう続けた。

「だから、親方になったんです。もし、私が引退と同時に、相撲との関わりを止めてしまったら、確かに私は後悔を抱えたまま相撲人生を終えていたでしょう。しかし、私はこの思いを自分の弟子に伝え、同じ思いをさせないことだけが、私の後悔を反省に変える唯一の方法だと思ったんです。」

 私はこの話を聞いた時、鳥肌が立った。過去を悔むことは誰にでもできる。しかし、いくら悔やんでも、過去は過去。人間は未来に解決策を見出すことでしか自分の後悔を反省に変えることは出来ない。それを親方は伝えたかったのだと思う。

一連の会話を終えた後、目の前にいる大男が、とてつもなく素敵な漢(おとこ)であることに改めて気付かされた。

 かつて、発明王エジソンが、電球発明に際し、記者からインタビューを受けた時のことである。電球を発明するまで10000回もの失敗を繰り返していたエジソンに対し、記者は、こんな質問をあびせたそうだ。
「10000回も失敗したそうですが、苦労しましたね?」
すると、エジソンはこの質問に対し、こう答えたという。
「私は失敗などしていません。上手くいかない方法を10000通り発見しただけです。」
エジソンは10000回もの反省を繰り返し、成功へと繋げる、とんでもなくタフな発明家であったのである。この精神が、やがてエジソンを発明王と呼ばれるまでに、育て上げる。

つまり、人生に勝ち負けというものが存在するとしたら、それは人生が終わった時に決まるように思う。従って、命ある限り、反省(挑戦)を繰り返していれば、それは成功への道を歩いていることになる。そんな、生き方が出来れば、それだけで人生は充実していくのではないか?親方は私に、背中でそう語りかけて下さった。

他にも、親方について、お伝えしたいエピソードは沢山あるが、まだまだ内容が消化不良の部分が多い。自分の中で解釈が出来しだい、改めて皆様にお伝えしていきたいと思う。

※今回、機会を提供してくださった萩原社長、中根常務、重政さんには本当に感謝しております。ありがとうございました。また誘ってください。