帰り道
昨夜も、職場のある江東区から自宅のある足立区西新井へ、自転車で帰宅。
荒川沿いをひた走る。
荒川河川敷から首都高速中央環状線を見上げると、いつも、4年4か月前に足立区へ引っ越してきた時のことを思い出す。
あの時は、レンタカー屋で軽トラックを借りることができなかったため、代わりにTOYOTAのハイエースを借り、相模原市橋本から足立区までを、1日で2往復した。
たった一人で。ペーパードライバーのくせに。高速を使って。
朝の8時から引っ越しを始めて、深夜0時に終わり、翌朝5時に起きて、相模原市橋本のレンタカー屋に車を返しに行った。
2往復目の終盤、ラジオから流れるエアロ・スミスの曲を聴きながら首都高速中央環状線を走っているとき、「俺はこれから、どんな仕事にも耐えられるような気がする」と、思えた。
たぶん、勘違いの思い上がりだったのだろうけれど、あの時、そう思えたことは、今の自分にとって、重要な意味を持っている。
それにしても、昨夜の帰り道の向かい風は、冷たさと強さの両方において、自分の自転車帰宅歴の中でも、最強だった。
あまりの風の強さから、自転車を漕いでいる最中に前輪が浮くんじゃないかと思ったほど。
対向車線からたまたま来た自転車の2人組みとすれ違った時に、彼らは、「すげー追い風!漕がなくても、進むー。バイクみたい」と言っていた。
自分は、いつもいつも、帰り道が強い向かい風だと、「これは、本当に家まで辿り着けるのだろうか?」と本気で考える。途方に暮れたりもする。
「途中で止まろうか」
「こりゃ、鐘ヶ淵あたりで自転車を担いで駅まで行き、電車に乗って帰ろうか」といった考えも、頭に浮かぶ。
でも、途中でペダルを漕ぐのをやめたとしても、家に帰ることはできない。
結局は、進むしかない。
そう考えた次は、「ふざけんな、向かい風!ブッとばすぞ、ボケ!」といった、怒りのパワーを放出し、ペダルを漕ぎ続ける。
きついところで、わざと、ギアを一番重いのに入れて。
そうやって、向かい風に負けず、一番きついところを終える。
そして、北千住に入る頃、いつも不思議な感覚が沸いてくる。
「このまま、自転車でどこまでも行ってしまうような気がする」
と、そんなことを感じるのだ。
すごく、変だ。
どこまでも、と言っても、その先には結局、埼玉県しかないのだが、どこまでもどこまでも続くように思える真っ暗な道に、吸い込まれるような感覚を持つ。
毎回そうだ。
それは、子供のころ、夢で見た内容に似ている。
その、吸い込まれるように入り込んだ暗い場所には、自分を待ち構えている人たちが大勢いるのだけれど、その人たちには、一度も会ったことはない。
しかし、嫌な感覚はない。
そんな内容の夢。
「この先、進んでも、埼玉だけだぞ」と気を取り直して、千住新橋を渡り、家へ。
途中、コンビニで牛乳を買って帰る。
手も足も寒さで感覚がない。
なんとか耐えながら、洗濯物を洗濯機に入れたり、干してあった洗濯物を取り込む。
風呂に入って、牛乳を温めて飲んだ後、俺は、良い生活をしている、そう思った。