中内㓛のかばん持ち　昭和のカリスマと呼ばれた男＠恩地祥光

ネアカ、のびのび、へこたれず

中内功のかばん持ち/プレジデント社: ￥1,890; Amazon.co.jp

ダイエー創業者、今でも中内さんを尊敬している方は多くいらっしゃいます
その一方で、晩年は苦しいことばかりな印象もあって
失敗して終えたみたいな、そんなイメージもぬぐえないのではないでしょうか

中内さんの秘書をされていた恩地祥光さんの著書です

それにしても、この本、面白かったー

つい先日、ダイエーはイオンの子会社となると発表がありましたが
流通業に携わる方々からすると、あり得ないことが起きている
そういっても過言ではありません
ダイエーとイオン、イオンとダイエー、まさにライバル
しのぎを削って切磋琢磨して流通業を引っ張ってきたといっていい
両社が同じグループとなるなんて、時代はどうなっちゃうんでしょう

中内さんという方は、ダイエー凋落の張本人という

レッテルも貼られていたりして
でも、やはり魅力的な方だったからこそダイエーは大きくなり
三越を抜いて小売業No.１に売上１兆円越え
数々の企業を買収し、一大企業グループを一代で築き上げた
最初にCEOと名乗ったのも中内さんみたいです
本当に面白く興味深く拝読いたしました

変わったことをすると周りから叩かれる
特に日本はそんな風潮があるような気もしてきたりして
なかなか起業するのが難しいなんて言われたりもするのですが
好奇心の塊である中内さんからすれば、一組織人として働くなんて
まぁできっこないような、そんな風に感じ取れるエピソード満載でした

私自身、ダイエーで働いていた時期があります
新人のころに、配属先の店長が最初に話をしたのが
中内さんの座右の銘「ネアカ、のびのび、へこたれず」

これ、店長室の壁に飾ってありました

店に視察に来られたときの話を、配属された私を含めた新人に

１時間以上、その時の様子を店長が語っていました

崇拝するとは、こういうことかと、同時は思ったもので

何かを築き上げる、基礎をつくった人が、同時に

人格もできているなんてなかなかないことかもしれません
どの方も、周りに無茶を言っては達成させていく

中内さんも、できそうもないことを指示したりして
でも、周りはなんだかんだとついていく
結果的にいい方向にもたらしてくれるみたいな

不思議な魅力があると
その辺りは今も昔も変わっていないのではないかと感じます

いわゆる、無茶ぶりってやつでしょうか

私は、中内さんに一度だけお目にかかる機会がありました
新人研修に視察に来られたことがあったんです
すごいオーラだったことは覚えています
自分の就職する会社の社長は、まぁ普通の器じゃない
そんなの語られなくても分かるみたいな、存在感はスゴかったです

流通業って、お店を出すのって簡単かどうか分かりませんが
業界として力がなかったイメージなんですよね
金融やゼネコン、メーカーなどが力を持っていて
お店は自分たちでつくることなんてできないんだからと言われたか
どうかは知りませんが、当時は流通業出身の政治家は一人しか
いなかったような記憶があります

（それも、聞いたことがないその政治家の名前）

松下vsダイエーの論争は有名ですが、「よい品をどんどん安く」
「価格破壊」をスローガンに事業を拡大してきた創業者は
見えぬ敵と、世論と、業界団体などど戦っていたような
そうとう重圧があった、心が折れそうになったこともあったのではと
勝手に推測するのですが、まぁ、かなりお茶目なお人だと

今のチェーンストアの原型はまさにダイエーにあったと思います
セルフサービス、過剰なサービスをそぎ落とし販売価格を下げる
晩年は「ダイエーには何でもある。でも、欲しいものは何もない」なんて
言われるようにもなって、とても寂しい気持ちにもなりますが
やっぱり魅力的な方だったからここまでできたんだろうと
この本を読んで改めて感じたりもしました