僕が通っていた福岡大学
今住んでいる会社の寮からそんなに遠くない。

卒業してから10年もたって大学の近くに住む
なんて、想像もしていなかった。

学校の前をとおると、よくあの頃を思い出す。

そんなある日、軽い散歩の途中、大学の近くの小さい公園にある
ベンチに休憩がてら腰掛けた。

一服しようと、カンコーヒーを開けようとしたその瞬間
ある記憶が蘇った




このベンチはぁぁぁぁ!!!!




そう!!あれは、14年くらい前の話、僕はまだ大学一年生。 

スポーツ推薦で剣道部に入った僕は、絵に書いたようなバリバリの
体育会系生活をおくっていた。上下関係も厳しく身分制度も
1年奴隷、2年平民、3年殿様、4年神様!
という見事なカースト制度であった。




先輩という存在はとにかく絶対で何事にも逆らう
事が出来なかった。




唯一の反抗といえば、同輩との飲み会であの先輩があんな失敗したとか、
誰々先輩が豆タンクみたいな柔道部の女性とデートしていたなどなど・・




先輩の失敗をスクープしては報告しあい陰でバカにして
ストレスを発散していた。




そんな中どうしてもスクープできない先輩がいた。




その先輩とは、抜群強靭な体を持ち抜群の恐ろしさをもった
Y先輩。




その、割腹の良い体系と後輩に対しての悪魔のようないじめ方
をする事から、僕等は西郷エクソシスト(悪魔にとりつかれた西郷隆盛)
と呼んで怖れていた。




ある真冬、西郷エクソシストから夜中の2時に大急ぎで家に来いと
呼ばれた。なんかあったと眠い目をこすってバタバタ先輩の家に到着
した。




「どうかしましたか?」と僕、

「おう、あのさ俺寝るから電気消してくれ」

「えっ?」とまどう僕

「さっさと消せ!!布団から出るの寒いんだよぉお!!」




夜中の二時の話である




にくき西郷エクソシスト!!!がしかしその先輩、ミスもすくなく
僕らのストレス発散方法がなかった。




どうしてもミスという酒のつまみがほしい!!!




後輩一同、一丸となって西郷エクソシストの失敗スクープを狙っていた。





その数日後この僕がスクープする事になるとはまだ誰も知らない。





その日は、雨が降っていた。
気分は憂鬱だった。理由は天気ではない。
あの先輩と会わなければいけないからだ。




英語の授業をうける為教室に入る。




一年生の授業なのに、うわさの西郷がその教室にいる。
そう先輩は、一年の時単位を取れず、もう一度受けなおしているのだ。




目があうと
となりに来いと命令される。作り笑顔でとなりにすわる。




授業がはじまった。




わきばらをずっとつねってくる。
声に、でないくらいの痛さで・・そのあたりが悪魔だ。




そんな中、先生が僕等に問題をだした。




「前回のテストはひどかった。とりあえずみんなのレベルがみたい
一人一人、自分が思いつく一番難しいと思う英単語を発表してください」




びっつくりするだろうが
これが体育学部の英語の授業である。スポーツばかりで
勉強などしてこなかった連中の授業だ。




一人一人一番難しいと思う英単語を言っていく。




「アップル」

「ストロベリー」

「トレイン」




このレベルの単語を一番難しい単語として堂々と
発表する体育学部の仲間。
笑いなどひとつもおきない。

僕の番になり「ブック」と答え席にすわる。


悲しいかな体育学部。そうおバカなのである。




しかし!!!




そんな中この教室がひっくりかえるような
答えを西郷エクソシストが放つ!!




自分の番になりゆっくりと席を立ち自信満々にその先輩は
こう答えた。





「マイルドセブン」





一瞬時がとまり

先生の顔がポカーンと(はにわ)みたいになっている




先輩は何を思ったか、さっきより張った声でもう一度




「マイルドセブン!!!」




とさらにいい放ち先生をにらみつけた。




そこでゲームオーバー。

先生はにらまれてるのもかかわらず、顔をくしゃくしゃにして
まるで北斗の拳にでてくる雑魚キャラのような見下した笑い方で

「ぎゃはぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!そりゃぁぁ!!タバコだよぉおおおお」

と、つっこんだ。




静かに下をむく先輩




授業が終わると我先に教室から出て行った。




帰りがけラッキーな事に偶然




このベンチに座ってコーヒー飲む先輩を発見した。




飲み終えた後。しばらく上を向きコーヒーの硬いショートカンを
一気にグシャッ!!!とつぶした。




小雨の中ベンチにすわる先輩、なんだか泣いてるようにも見えた。




その夜僕等はそのスクープをつまみにいつもより
余計に盛り上がったのは言うまでもない。