こんな感じ
写真はまだマシなほうで、時間が経つにつれて視界はほとんど無くなっていった。
慣れたスキー場だし雪面の感覚だけで問題無く滑っていたが、一般の方達は霧が濃くなるにつれ、ほとんど帰っていってしまった。
ある意味ラッキー。
私は視界不良や天候不良、またどんな荒れた斜面でも全く気にならない。
条件が悪いほど征服意欲を掻き立てられるし、得るものも大きいからね。
そういう意味では難しい条件で滑るのは本当に楽しい。
嘘でもなんでも無くて、私は昔アイマスクをして視界を遮り、身体の感覚だけで滑る練習を何度もした事がある。
もちろん恐ろしいが、足裏の感覚に全神経が研ぎ澄まされるし、そのような悪条件を経験すると、アイマスクを外した時には精神的に強くなっているのか、普段は逃げ腰になるような難斜面でもなんなく滑る事が出来るようになっている。
しかし私のアイマスクなど全然甘かった。
何故なら全くと言っていいほど視覚が無いにもかかわらず、雨の日も風の日も自分一人でジムに向かいハードなトレーニングを行ない、常に上を見て挑戦を続ける男を知ってしまったからだ。
”盲目の闘将” 大谷重司。
この男に比べたら私のやっている事など甘チャンもいいとこだ。
残念な事に今後彼と一緒に闘う機会は例の男によって奪われてしまったが、この選手と出逢い、共に世界の舞台で闘う事が出来たのは、私の人生で大きな意味のあるものとなった。