「パワー」とは正に「力」の事ですが、スポーツのシーンでのパワーを説明出来る人は意外に多くありません。
物理的にはパワーはMA=Fで定義されますが、これは重い物を速く動かすという事に他なりません。
よく「スピードはあるがパワーが無い」などと耳にする事がありますが、これはパワーの定義を履き違えています。
スピードが速いという事は生み出されるパワーもそれだけ大きくなります。
例えばイチロー選手は身体は細身ですが、筋力を補って余りあるスピードがあのパフォーマンスを実現させています。
もし筋力だけを下手にアップさせれば、まずスピードが犠牲になってしまい、結果としてパワーもパフォーマンスも落ちてしまうでしょう。
長年トレーニングを指導してきて気付いた事ですが、人それぞれ生まれ持った身体には身長や骨格と言ったものに違いがあり、目的に合わせてその身体を最大限に活かせるようにトレーニングでコンディショニングをする事が大切ではないかと思っています。
スポーツのシーンでは、技術、筋力、スピード、柔軟性に加え、身長や体重も大きなファクターとなる場合があります。
自分が何を一番の武器にしたらいいのかを間違えてしまうと、せっかくのトレーニングも逆効果になりかねません。
筋力という物は無いよりあった方がいいですが、それはあくまでも他の要素を犠牲にしないという事が前提となります。
サッカー選手がいくらスクワットが強くなろうが、走るスピードが遅くなってしまっては何の為のトレーニングかわかりません。
筋トレをする事が当然のようになってきた現在、「筋力アップ=パフォーマンスアップ」と思い込んでいる人が多くいますが、そんな単純なものではありません。
ただムキムキになりたいだけなら構いませんが、何の為のトレーニングかという事を理解して正しいアプローチをしなければ、スポーツのパフォーマンスアップには繋がりません。
加えて体格には個人差がある為、皆が皆同じトレーニングをしてもその人特有の個性や能力を最大限に引き出す事は不可能です。
イチロー選手がもし筋力やホームランの数だけで勝負していたら、あの偉大な記録は残せなかったはずです。
配られたカードを駆使して闘う、すなわち生まれ持った身体を最大限に活かすには、その人の身体に合ったスキルアップの方法があり、それを実現させるのがコーチの仕事だと思っています。
長くなりましたが筋力というものは必ずしもパワーやパフォーマンスに繋がる訳ではなく、一番大切なのはその人に合ったトータルバランスを崩さないように身体をコンディショニングしていく事ではないかと考えています。