田中邦衛さんが亡くなった。その前職が、中学校の臨時教員というニュースを見たからか知らないが、田中邦衛さんが夢に出て来た。中学校の先生になって。
時間は午前1時半を過ぎ、田中邦衛さんの熱のある授業は終わった。ぼくたちはヘトヘトで、明日までにさて、あと何時間寝られるんだろうとぼくはぼんやり考えていた。
女子生徒(中学校の同級生)が憤懣やるかたないという様子で「今からスタバに行こう」と息巻いている。田中邦衛さんを糾弾しようというようだ。そんなことしてる間に寝ろよな、そもそもスタバなんてやってないだろとぼくは思ったのだが、そこに声をかけてきた奴がいた。
いけ好かない男子生徒(同じく中学校の同級生だった)だった。
「あのよぉ、おまえさぁ、修学旅行無理だろ。アメリカ横断旅行なんて、体力的に無理だろ?」
厭味ったらしいその言い方。確かに体力的に無理なのは明らかだ。だがその口ぶりにムッとした。
親友が言い返す。「俺がカバーするから。おまえが気にすることないだろ」。全く現実とぶれない親友の熱い口ぶりに、夢なのに不思議だなぁと思いつつぼくは一歩踏み出した。
「ああそうだね。やめとくよアメリカなんて。キャンセルして、そのお金で北朝鮮行くわ」。
ぼくもぶれてない。いけ好かない奴はあんぐりとしている。
「それにさ、そもそもオレ北朝鮮行ってるからESTA出ないんだわ。アメリカ行けねえし」。
親友もぽかーんとしている。そのままぼくは親友とともに職員室へ向かった。田中邦衛さんは帰って来ていない。
「あの、修学旅行キャンセルしたいのですが」。
慌ててばらばらと教師が数人寄って来た。
「なんで?詳しく話を聞こうじゃないの」。にこにこと笑い肩に手をかけてきた教師にいう。
「政治的事情で無理です。ビザが出ません」。
そっかそっかー、と別の教員が用紙を持ってきた。登場人物全員がぶれてなかった。そして、ぼくにESTAが出ない現実も、アメリカが遠い事実も変わらない。ああ、北朝鮮行きてえなぁ。目が覚めてぼくは呟いた。