日本嫌いの朝鮮好き | 38度線の北側でのできごと

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38度線の北側の国でのお話を書きます

 朝鮮・朝鮮民主主義人民共和国から韓国にやって来たスパイ、李チョルジンをコミカルに描いた韓国映画「간첩 리철진」(スパイ・李チョルジン)に印象的なシーンがある。

 

 韓国人の悪党一味が警察に捕まり「おまえら(北の)スパイだろ」と疑われ気色ばみ、唐突に韓国の愛国歌を歌い出すのだ。当時(90年代)の韓国において、北のスパイと疑われるのは実に大変なこと。現在でも国家保安法が生きている韓国では今でも大変なことだ。

 

 その窮地を脱するために、怒りと共に悪党一味が歌う愛国歌は実にコミカルな印象を与える。

 

 いわゆる左翼系の人たちを中心とした集会や講演に取材に赴くことがある。朝鮮学校関連のイベントでもこれは同じなのだが、基本的にそこで出会う日本人の方は現在の与党に対して批判的なスタンスを取る方が多い。持っているかばんをよく見ると「アベ政治を許さない」というキーホルダーがあったりもする。

 

 嘆息する。

 

 当然、ぼくも同じ政治的スタンスを取っていると思われるようで、彼らから親しげに声をかけられる。やがて安倍政権への悪口を延々と聞かされることになるのだが、ある程度愛想笑いと共に相づちをうった段階でぼくは「いや、ぼくは実は選挙では自民党に入れましたよ」という。大概驚愕される。

 

 現地での旧民主党系の元議員さんの余りに無礼な振る舞いに閉口したこと。また逆に自民党の議員さんの現地での振る舞いを見たことがその理由としてある。明らかに自民党の議員さんの方が、言うべきことを言い、また堂々としていて、一方で拙いながらも現地の人と朝鮮語で会話を試みたりするなど、非常に好感が持てたのだ。少なくとも現地での態度、関わり方の態度には圧倒的な差がある。

 

 確かに安倍政権には色々な課題がある。問題も多い。だが自国の総理大臣を「アベ」などと呼び捨てにし、自国の政府や政権、指導者の悪口を北朝鮮にまで行って言い続けて、平気でいられる神経はぼくには理解出来ない。安倍総理を選んだのは誰か。選ばれるプロセス、即ち選挙のシステムは世界の中でも有数のレベルにないだろうか。

 

 逆に考えて見て欲しい。北朝鮮の人が「いやー、うちの国ダメでしょ?あとうちの指導者。ダメダメでしょ」などと言い出したらどう思うか。「そうですね。ダメダメっすね」などとぼくたちは言えるだろうか。しかもそれが北朝鮮現地だったら?ぼくはあいまいな笑顔を浮かべ回答を避け、きょろきょろと眼を動かして盗聴器の存在を探す。

 

 別にいたずらに誇る必要はない。愛国心を示すために君が代を歌うなんて必要はない。最近よく見られる「日本すごい!素晴らしい!」というテレビ番組の存在にはぼくだって鼻白んでいる。

 

 だが、ぼくは日本が好きである。日本嫌いの朝鮮好きではなく、日本好きの朝鮮好き。日本嫌いの果ての朝鮮好きというのは、やはりどこかおかしい。ねじれている。日本と北朝鮮に限らず世界のどの国であってもその国の人の前で、自国の悪口を言い、また貶める発言を積極的にする姿は滑稽を通り越し、ただただ恥ずかしいことではないか。