38度線の北側でのできごと

38度線の北側でのできごと

38度線の北側の国でのお話を書きます

 韓国は第一の敵国である。

 

 北朝鮮の統一方針の転換が、日本で小さな嵐を起こしている。想像以上にダメージは大きい。朝鮮総連は気に食わないが、統一という旗印の下に集っていた在日コリアンの友人たちの苦悩は深い。離れていく人も多いと聞く。

 

 先日、ある方から「ぜひ見に来て!」と映画の上映会のお勧めをもらった。「WARmericaの運命」の続編「巨大な転換」というタイトルの映画である。

 

 WARmericaの運命、前編の映画をYouTubeで見て、思ったのだ。

 

 なるほど。これが在日コリアンの掲げる新しい旗なのだなと。

 

 「世界平和」ということばについて考えてみよう。世界平和に反対と述べるひとはなかなか珍しい。今日現在もイランとアメリカとイスラエルが大変なことになっているが、この三か国の個々人、一人ずつ「世界平和はどうですか?と聞いていけば「平和がよい」と答える人が大多数ではないか。

 

 それが国対国になると戦争となる不思議。

 

 在日コリアンにとっては「統一」がそれだった。結構韓国人はこの点ドライで、特に若い世代は「統一はいやだ」という人の割合が想像以上に高い。

 

 人口約5000万人の韓国が、約2500万人の貧しい北朝鮮を支えられないというのだ。

 

 なるほど。

 

 しかし情的な部分では「でもやっぱり一つの民族だし」という話になる。統一せねばという空気になる。特に在日コリアンはそうだった。北朝鮮本国もそうだった。統一?すべし!今すぐ!というものであったのだが、それを北朝鮮は転換したわけだ。憲法も変えて不可逆的な環境にしてしまった。

 

 その評価はここではしない。在日コリアンのかなりの割合の人が「いいね!」「やるべし!」という「統一」という旗印を本国は降ろしてしまった事実は重い。

 

 旗を降ろした掲揚台からはどんどん人が離れていく。これはまずい。そこでこの映画の上映会である。中身は結局、アメリカの歴史とは先住民を蹂躙し、戦争戦争で多くの人を殺し、軍産複合体で儲けて来たものだった。アメリカ一強、帝国主義の仕組みが今、崩れようとしている、世界に新たな秩序が生まれようとしているという内容だった。

 

 その流れと内容には頷ける部分も多い。ベクトルはイアン・ブレマー氏の著書と同じではないか。だがどうだろう。「統一」という旗に集っていた人たちが「反米」という旗を新たにあげたとして、再び「そうだそうだ」と集まるだろうか。ぼくはそちらの方が気になる。

 

 その数と結束の強さはどうだろうか。「統一」の旗並みだろうか。

 

 否。上げるべきは「反米」という新しい旗ではないとぼくは感じている。降ろした「統一」という旗についての評価と議論だ。

 

 本当に下げてもいいのか。本国との議論は必要ではないのか。本国の方針に逆らってでも統一という旗を守るという考えはないのか。

 

 反米という新しい旗の下で「そうだそうだ!」という会は一時、盛り上がるだろう。だが本当にその旗でいいのかという疑問をぼくは捨て去ることが出来なかった。統一からの転換という本国の方針に対し、反対も賛成の立場も明らかにせず、何の議論も評価もしないまま、新しい旗の下に集えというのはどうも納得いかない。

 

 行きますとは約束したが、結局反故にした。代官山で好きなイラストレーターの個展を見て、恵比寿で美味しいラーメンを食べて帰ってきた。それがささやかなぼくなりの抗議だった。