去年CSTVで『すばらしい蒸気機関車』が放送されていた、50年以上も前に封切られたドキュメンタリー映画である。
東京では既にその姿は見られなくなっていたが、私が宇治に赴任した当時は奈良線、山陰線、草津線では乗客を乗せて蒸気機関車が走っていた。

                           奈良線を走る団体列車
宇治勤務2ヶ月後、出張の帰り、新幹線を降り、奈良線ホームに向かうと蒸気機関車が待っていた、暗い薄汚れた車内に入り堅いBOXシートに腰を下ろしたとき、新幹線では味わう事が出来ない<懐かしさ>と共に、つい数時間前まで同期の友人達と呑んでいた華やかな東京の街と豪華な新幹線『ひかり』の車内との落差に、これが「都落ち」と言う事なのか、塞ぎ込んでしまった事を思い出す。
奈良線で蒸気機関車が牽引する客車に乗ったのはこの時が初めで最後だった。
奈良線は京都駅から関西本線木津駅を結ぶ全線単線の路線で、キハ10・20・35等の気動車が混結で京都-奈良間を1時間に
1本程度という何ら特徴の無い超ローカル路線だった。
京都や大阪、奈良へ行くとき、奈良線を使うことは殆ど無く、京阪電車や近鉄電車を利用していた、そして、いつの間にか奈良線から『黒い塊』が牽引する茶色の古ぼけた列車は消えていた。

それでもしばらくの期間、貨物を引いたり、団体客を乗せた客車をひいて、その勇姿を見せてくれていた。

                                wikipediaより借用
鉄道ファンにもいろいろあるが、私の場合は完全に『乗り鉄・音鉄』であった。、
黒い姿の蒸気機関車が牽引するく煤で汚れ古ぼけた臙脂色の客車の堅いシートに腰を下ろし、短レールの継ぎ目の音に耳を傾ける、≪ボーッ、ガッタン、ガタガタガッタン、ゴットン、ガッタンゴットン・・・≫ワクワクしながら聞き入っていた。
『すばらしい蒸気機関車』、この映画のオープニングとエンディングシーンは奈良線を走るC58となっている、当時、私は毎日黒い煙を吐き出しながら鉄路を走るC58の姿を見ながら「東京に帰りたい」と思っていたのだ。