「プディングのおかわりはいかが?ミスター・フォックス」クァイ夫人が言った。

 「いえ、結構です」

 「ではコーヒーは?それともリキュールがよいかしらね?いずれにせよポーチに出て飲めると思いますよ。きっと、ポーチはもう十分乾いているでしょうから」

 「そうでしょうね。でも私は家に帰った方が良さそうです。こんなにも長居するつもりはなかったものですから」

 「あら、私たちはあなたを引き留めてしまっていたようですね。でも楽しかったわ。子供部屋に上がって、ジーンにさよならを言っていらしては?子供部屋の行き方はお分かりだと思うのですが?」

 「分かります。そして、そうします」

 「それでは、私はここでお別れを言うことにします。私はお昼寝する時間ですから。あなたと偶然出くわすことが出来て、本当に良かった。こうしてランチにいらしていただけたのですから。近々またお会いできるでしょう、楽しみにしていますよ」

 私は立ち上がってクァイ夫人をドアまで送った。そして彼女の手を握って、感謝と別れの挨拶を告げた。

 ナンシーは席に着いたままぐずぐずしていた。

 「あなたにもお会いできて良かった、」と私は戸口から呼び掛けた。

 「タバコは?」彼女は言った。

 「いや、吸わないんだ」

 「私がタバコを吸う間、一緒に居てもらえるかしら?」

 「もちろん」と私は答えて席に戻った。

 彼女は席を立つとサイドボードに置かれた白鉄鉱製のケースからタバコを取り出して、火を点けた。そしてボトルに数インチ残っていたワインを私のグラスに注いで、座った。

 「それで、あなたはデント夫妻とお知り合いなのね?」

 「ええ。あなたも彼らを?」

 「実際には知らないわ。つまり、彼らが例の犬を連れているのを見たことはあるの。ご主人はとてもハンサムな方だと思ったわ。彼らはオーストラリア人だと言ったわよね?」

 「そう、オーストラリア人ですよ」

 「ああ、もちろんそうよね。オーストラリア人。あなたもそうかしら?」

 「私はアメリカ人だよ」

 「あなたが?そうは見えないわ」

 「どういう風に見えるんだい?」

 彼女は私を見つめ、食べかけのプディングの皿にタバコの灰を落とした。「分からないわ。どこか奇妙なところがあるけど、それが具体的にどこかを上手く言えないの、そうできれば良いのだろうけど。ここで、あなたには他に友達はいるかしら?デント夫妻以外で」

 「実際のところ、居ないな。ここに来た理由の一つは独りになるためだったからね」

 「私は独りぼっちは大嫌い。それは多分私が、自分のことを好きじゃないからだと思うの。私たちは随分と違っているみたいね。あなたはきっと御自分のことを好きなんだわ、そうでしょう?」

 「そうするように努めているよ」

 「上手くいってるかしら?」

 「まだ何とも言えないな」

 「まあ、あなたに世界中の幸運を! どうしてあなたが自分を好きになれないのか私には分からないけど。私があなただったら、自分を好きになるわ。もしあなたが私だったら、私を好きになるかしら?」

 「君は自分を好きになるべきだ」

 「どうして?」

 「なぜならそれは、良いことだからさ。健康的なことだしね」

 「違う、あなたは誤解しているわ。私が言ったのは、もっと具体的な意味なの。どうして私は自分を好きになるべきなの?好きになる理由は何?」

 「理由は自分で探さなきゃだめさ。そうしなければ意味がない」

 「なんて抜かりない人なのかしら、あなたって! 私みたいな頭の悪い女をはぐらかすくらい、きっと何でもないことなんでしょうね!」彼女はタバコを消すと立ち上がった。「どうやら娘の様子を見に行った方が良さそうね。ここでは誰かがそうすることになっているのよ、あなたもとっくに気づいているとおり。私たちは永遠にビツィーの様子を看つづけるんだわ」

 「まだ小さな、可愛い女の子じゃないか。具合が良くなればいいのだけど」

 「まあ、お願いよ!あの娘は耳痛で寝てる小さな女の子、確かにその通り。でもね、あの娘は私たちの誰よりも長生きするんだから」



(第11章へ続く)