スポーツジャーナリズムには大きく分けて下の3つのパターンがあると思います。

①戦術もの
②文化や歴史の観点から書いたもの
③ビジネスもの

①は野球でいえば、配球の妙であったり、打撃や守備の技術論であったりします。サッカーでいえば、4-3-3、4-4-2とかいったものになるのでしょうか。
それから、②は競技そのものの歴史であったり、その競技が行われた場所の歴史であったり、ひいてはプレーヤーの個人的な歴史から書かれたものです。最も一般的ですかね。

そして、③。ビジネスものです。

何年か前に、「マネーボール」という本がはやったと思います。金欠球団だったアスレチックスが、独自の視点で選手を集め、育成し強くなってゆく過程が書かれていました。
打者の力を打率、本塁打数、打点でみるのではなく、出塁率、長打率でみた点に新しさがありました。
より勝利に貢献しているのは、出塁率、長打率の高い選手なのです。(ちなみに、一部の野球ファンからはイチローの出塁率の低さが指摘されています。そのような批評が成立するのもこの本によるところが多いのではないでしょうか。)

さて、この「楽天球団のシークレットマネジメント」は「マネーボール」を更に進化させた内容になっていると思います。
楽天は去年、クライマックスシリーズに出場しましたが、初年度を知っている野球ファンからはかなりの驚きでした。この本では、そのクライマックスシリーズへの進出が必然であったことが示されます。
出塁率や進塁数でみていくと、毎年着実に進化していたのですね・・・。

ただ、先に「マネーボール」より進化していると書いたのは、上記の分析に加え、球団の財務面からの分析があるためです。
著者はもともと野球とは、あまり縁のなかった人で、他業種での経営者としての実績により楽天球団の社長をまかされた方です。

ですので、視点が完全にビジネスマン!!
特に驚いたのが、楽天の損益計算書を、一部ではありますが公開しているところです。
私が知らないだけかもしれませんが、今までの球団の収支というと、損益計算書の「販売費および一般管理費」に分類され(完全な費用扱い・・。赤字前提。)、はたしてそれがいくらななのかも闇の中。といった感じでした。

楽天は1年目から営業損益が黒字になり話題になりましたが、2年目以降は赤字であることものっています。
そして、その赤字の90%近くが球場設備の減価償却費であること(本を読んだところ球場設備の減価償却費だけで年間7億円はありそうです。赤字金額は8憶円ほど)償却が終われば黒字に転換する可能性が高いことも書いてあります。その証拠にキャッシュフローは現時点で黒字とのことです。

また、楽天球団が明確な企業コンセプトのもと、どのような活動をおこなっているかも詳しく書いてあります。

スポーツを金儲けの視点からみるなんてという意見もあるかもしれませんが、球団が安定した利益をださないと十分なファンサービスができないのも事実です。

スポーツが好きなサラリーマンの方、ぜひご一読を。
大の巨人ファンである僕でも楽しめたのですから。。

「便利屋」。
最近、私の周辺では、何人か起業するやつがいるのですが、
便利屋はいません・・。

でも、どことなく人を引き付ける職業ですよね。
この小説は、そんな便利屋が主人公です。

偶然、ある雑誌で便利屋の特集(といっても1ページ)をしていました。
なかには、年収1500万円の人もいて、来年、自身がモデルの「ふうけもん」という
映画が公開されるようです。
ただ、「暴力亭主から離婚届に判をもらう」仕事もあるようで
ある意味命がけだなと思います。

この小説は直木賞も受賞したので有名かとは思いますが、
作者は三浦しをんさん。女性です。

これといった事件がおこるわけではありません。
超人的な能力をもった人がでてくるわけでもありません。

でも、主人公の多田と行天は、なんとなく普通ではありません。
なんとなく普通ではない二人が、同じくちょっと普通でないけど、
そんな変でもない人とちょっと不思議なドラマを繰り広げてゆきます。

私も含め、日常生活では、「あいつって、なんか変ってるよな・・」って人は案外多いのでは。
でも、その人に50%くらいは共感しちゃうんですよね。
そんな感じの共感度を持たせる人物が何人かでてきます。

また、それぞれの登場人物には、それぞれ重い過去があることがほのめかされています。
でも、重い過去があまり前面にでてこない。というか、作者もあまり深くほりさげようとはしません。
そのかわり、重い過去を乗り越えるためか、作品の随所に前向きで力強い言葉が数々出てきます。
名言の密度で言ったらこの作品は相当高いはずです。

ストーリーを追うのも面白いのですが、心に響く言葉にめぐりあうこと請け合いですよ。


東野圭吾作品を読むのは、10作目位になります。
一番最初に読んだ作品は、「秘密」でした。

生まれて初めて、小説を読んで涙がでたのですご~く印象に残ってます。
映画にもなりましたよね。
でも、この「秘密」が98年の出版だそうで。。
もう10年以上前なんですね。

「秘密」後も注目してまして、
「ゲームの名は誘拐」は映画で観たのを覚えてます。
どんでん返しの結末で一人で興奮してたな~。
「レイクサイド」もよかった。

ところがです!!
直木賞をとった「容疑者Xの献身」あたりから、何かが変わってきたような。
「幻夜」などの長編を読んでたころから違和感がだんだんとはっきりしてきたような・・

そして、その違和感がさらに明確になってしまった作品が
「夜明けの街で」でした。

不倫がテーマになっているのですが、主人公に感情移入するのが難しかった。
これは私が独身だからというだけではないような気がするのです。

私の中での東野作品は、ミステリー的な要素が強く、
主人公の心情も大切でしたが、
謎解きの妙で読者を引っ張ってくれるイメージでした。

この作品はミステリー的要素もそれほどありません。
どちらかというと心理描写がメインで進んでいきます。

ただ、これも作者の作風の変化なのですかね?
それとも、私の読み込みが足りないのかな?
いずれにしてもオールドファンからみるとちょっと寂しいです。

まあ、こんなえらそうなことを書いてますが、
クライマックスはさすがでした。
久しぶりに鳥肌がたちました。これ本当です。

なんやかんやで、読者に損した気分にさせない東野圭吾さんは
さすがですねグッド!