太陽や月を本格的(天体観測的)に撮影しようと思ったら、レンズはカメラ用というより天体観測用に近いものになる。レンズでいえば35ミリ換算で2000ミリくらいは欲しい。そうすればかなり大きく撮れる。【写真:模様まではっきり見える月、ほか】 かなりしっかりした三脚も必要だ。望遠になればなるほど「目的の被写体を中央に置いておく」のが大変になるから。前述のようなレンズは重いので、かなりしっかりした三脚じゃないと、構図を決めて、カメラから手を離した途端にレンズの重みでほんの少し傾いちゃう。ほんの少しだから普段は気にならないのだけど、1000ミリ相当以上の超望遠だとそのかすかな動きで被写体がフレームアウトしちゃうのだ。 それに太陽や月って「思ってるより動きが速い」。その上、直線運動じゃなくて、大きく弧を描いて動くので、上手に追いかけるのがなかなか難しい。天体観測・撮影用の「赤道儀」なら月の動きを自動的に追ってくれるものもある。 だがしかし、そういう本格的な天体撮影はそれを趣味にしている人に任せておくとして、ここではそこまで気合いを入れない、できるだけ余計なコストをかけない、お気軽な月や太陽の写真撮影、という話をします。●満月は手軽に撮れます 夜、晴れた日にぽっかりと月が浮かんでて、あ、きれいだから撮りたい、と思ったらどうするか。 実はこれ、分かっちゃえば実に簡単。手持ちでも撮れる。 普通にカメラを向けてオートで撮ると、カメラは月の明るさより周辺の暗さにひっぱられて、シャッタースピードが遅くなったりISO感度があがったりして、撮れた写真はブレてたり、月が「真っ白」に白飛びしまくったりピントがあってなかったり、確かに月は写ってるんだけどね、というレベルになる。 だから難しいと思われがちなのだが、その理由が分かってしまえば簡単。 晴れた日の月は実はすごく明るいからだ。 月って、晴れていれば昼間でもよく見える。月が明るいのは太陽光を反射しているからで、その明るさ自体は昼も夜も大して変わらないのだ。つまり月だけを撮るなら、昼間とあんまし変わらないセッティングでいいのである。 昼間と同じ……では言い過ぎとしても、マニュアル露出にして、ISO200なら1/320秒のF5.6くらいでいける。あとはよく晴れてたり空気が澄んでたり淀んでたりという状況に合わせて調整すればいい。 コンデジでも望遠に強くてマニュアル露出が可能なら大丈夫。手ブレ補正がついてるカメラなら、十分手持ちで撮れる。そうするとこんな感じで撮れる。 上の写真は、一般的な望遠系標準ズームレンズ(300ミリ相当)で撮った月。1/320秒でF5.6でISO200。昼間の写真と変わらないのだ。 かなり小さいけど、陰影がくっきりしてなかなかいい感じに撮れる。満月よりこのくらいの方が横から太陽光が当たっている分、凹凸がはっきりでて面白い。 いわゆるダブルズームキットの望遠ズームレンズはAPS-Cサイズのカメラなら300ミリ相当になるものが多いので、上の写真と同じくらいに撮れる。マイクフォローサーズ系のダブルズームキットの望遠ズームレンズは400ミリ相当なのでもうちょっと大きく撮れる。最近の高倍率ズームコンデジでもマニュアル露出さえ可能なら、このくらいは撮れるのだ。 ただ、月だけを撮るのならもっとアップで、と思うのが人情。そこで、満月の夜、600ミリ相当のさらなる望遠レンズで撮ってみた。マイクロフォーサーズのカメラに300ミリ(つまり600ミリ相当)の望遠レンズをつけて撮った満月がこれ。 ただ、600ミリ相当の望遠でも大きさはこのくらいだ。でもトリミングすればネットに公開するなら十分なサイズである。試しに1000ミリ相当の超望遠で撮ってみた。するとここまで大きくなる。 ここまでくるとレンズが大きくて重くなるので、手持ちでは無理。手の微妙な震えで月がフレームアウトしちゃうし、保持するのが大変なので、素直に三脚を。 普通はこれを適当にトリミングするので、こうなる。 1600万画素のカメラに1000ミリ相当のレンズをつけて、月の大きさは1320×1320ピクセルくらい。ただ上の写真はスーパームーンと呼ばれる普段より大きめに見える月なので、普段の満月はもうちょっと小さい。 月が何時にどこにどんな月齢で昇るか。これはかなり大事なこと。月が出る時刻って毎日ずれていくからあらかじめ調べておくといい。わたしはiPhoneの「iステラ」というアプリを使っている。こんな風に、何時何分に月がどっちの方向に出るかをチェックできるので便利なのだ。 2012年5月のスーパームーンのときは日没直後の18時過ぎに月が昇ってくれたので、こんな写真も手持ちで撮れた。下の写真は50ミリ相当の標準レンズで撮影している。月の位置が低ければ周りの風景も一緒に狙ってみるといい。これなら望遠レンズがなくても月写真を楽しめる。 なお、月の動きはけっこう速い。肉眼でじーっと見てても分からないけれど、建物のような相対的に比較できるものがあると、実に速く動いているのが分かる。ちょっと油断するとこんなことになる。 要注意ってことで。●太陽を撮るにはNDフィルターが絶対必要 後半は太陽を撮る話。●注意!!太陽を肉眼で注視するのは大変危険です。・絶対に太陽の光を直接見ない ・太陽の方向を確認するときには「太陽観測用」のグラスを利用する ・カメラを介して見る際にも、適切なフィルターを装着するこれらの手段を講じた上でも、長時間見ないことを心がけてください。 太陽は危険である。いうまでもないけど、明るすぎる。肉眼で見てはダメなレベルである。一瞬チラッと見るくらいならよくても、太陽の写真を撮ろうなんて思うと無意識のうちに何度も見ちゃうわけで、これもよくない。 写真を撮る際でも、沈みかけた夕日レベルならまだしも(これでも十分に明るくて、地面や空と一緒に撮ろうと思ったら太陽が白飛びしちゃう)、晴れた日の太陽なんて普通では撮れない。 露出を思い切り落としても、めいっぱい絞り込んで、シャッタースピードをめいっぱい上げても無理である。 なので、太陽を撮るときは「NDフィルター」を使う。日本語だと減光フィルター。カメラにつけるサングラスみたいなもので、光量をぐんと落としてくれるのだ。ND2フィルターだと光量が1/2に、ND8フィルターだと1/8に(露出値で4段分)なる。昼間にわざとスローシャッターで撮りたいときなどに使う。 一般に売ってるのはだいたいND400(光量を1/400に落としてくれる)くらいまで。ND400にND8フィルターを重ねるとなんとか太陽を撮れる感じだ。本格的に太陽を撮るなら、太陽撮影用のNDフィルターが必要になる。ND100000である。10万分の1に光量を落とすのだ。想像できない値だよね。 実物を見ると、単なる黒い板だもん。 これを買う。実際にどのくらいのフィルターをつけてどう撮ればいいかは、フィルターを出しているケンコー・トキナーのサイトに詳しい。また、太陽撮影用フィルターを出しているマルミ光機のサイトも参考になる。 ケンコー・トキナーのページにはNDフィルターと露出の関係が書いてあるので参考になる。特にND400とND8フィルターを重ねた場合や、ND10000フィルターを使った場合の組み合わせも書いてくれるのがよいところ。ND100000フィルターが手に入らなかったり、ND100000フィルターは太陽を撮る以外に使い道がないので、もうちょっと幅広く使えるフィルターが欲しい、って人はND400とND8やND16を組み合わせるという手もある。ND400とND16を重ねると、ND6400分になるから金環日食なら撮れるでしょう。 ND100000のフィルターともなると、フィルター径のバリエーションも少ないので、ステップアップリングやステップダウンリングと組み合わせて使うことになる。 わたしはマイクロフォーサーズ用の100-300ミリレンズにND100000フィルターを組み合わせることにした。本当はもっと望遠のレンズがいいんだけど、なるべくコストをかけないという方針なので。 このレンズはフィルター径が67ミリなので、普通は大きめの77ミリのフィルターを購入し、67ミリ径のレンズに77ミリ径のフィルターをつける「ステップアップリング」で装着するのだが、77ミリのフィルターよりその下の58ミリのフィルターの方が安いので、逆に、67ミリ径のレンズに58ミリ径フィルターをつける「ステップアップリング」を装着した。ちょっとせこいけど問題はない。 では撮る。 撮るときはできるだけ太陽を見ないように……というけど、構図を決めるときなんかは見ちゃうよね。そういう意味ではチルト式液晶のモニタを起こし、モニタを見ながら構図を決めると、肉眼が太陽を向くこともないので安全。空はもう見ない、というくらいの感じで。 フォーカスはAFであえばラッキー、あわなければMFで。試しにISO200 1/2000秒 F8で撮ってみたのがこれ。 黒点がはっきり見える。右下に大きなのがひとつ。中央左に2つ、上方にひとつ。これだけ撮れればけっこう楽しい。右下の大きな黒点は「AR1476」と呼ばれる巨大黒点だ。 実際、太陽はどのくらいの大きさで撮れるか。実は満月を撮るのと変わらないと思っていい。地表からの見かけ大きさはほとんど同じだ。だから日食が起きるわけだし。上の写真もトリミングしてないとこんな感じだ。 露出は撮影場所、大気の条件や太陽の位置によって変わる。真っ昼間だとこんな感じだが、早朝や夕刻だともうちょっと露出を下げていい。シャッタースピードを下げるとかでもいい。日の出直後の太陽だと、1/800秒でOKだった。 手持ちでも撮れるけど、楽で安全(手持ちだとつい太陽を見ちゃいがちだから)なのは三脚。この季節の昼間は太陽が高い位置にあるのでこんな風にすると撮りやすい。 三脚にカメラを前後反対にとりつけると、真上に近い写真も撮れる。液晶モニタをこうやって開いて撮ると空を直接見なくて済むのでよい。金環日食はもっと低い位置で起きるのでひっくり返す必要はなし。●金環日食の準備をしておくべし ではいよいよ金環日食の準備だ。 大事なのは撮影場所の選定。今回の日食は朝が早い。東京の場合、午前6時20分くらいに日食がはじまる。このとき太陽の方向は79度、高さは20度。79度ってことは、真東よりちょっと北だ。 金環日食のピークは89度(ほぼ真東)で高さは35度。日食のはじまりから撮りたいなら、東に向けて開けた場所で、20度の高さで太陽が隠れない場所の確保ってことになる。金環日食だけを撮りたいなら、7時半くらいに東の空で仰角35度くらいが開けてる場所を確保すればOK。 建物や木々が近いとそれらが邪魔をする。東側にベランダのあるマンションや一戸建てに住んでて、そちら側に高い建物がなかったらもうラッキーなので、そこから撮るのがいい。 そうじゃないときはあらかじめいい場所を探し、そこで試し撮りをしておくこと。場所探しや自分の住んでるところでは何時にどこに太陽が出るのかを知りたいときは、金環食2012(無料)や金環アプリ2012(無料)といった金環日食観察用のiPhoneアプリを使うのがおすすめ。楽でいい。 これらを使うと、GPSを利用し、AR的に金環日食を観測できる場所かどうかをチェックしてくれるのだ。まあGPSなので微妙な位置のずれはあるけれどもかなり参考になる。日食開始時から撮りたい人は要注意ということだね。 パソコンで調べるならこういうサイトがある。場所を指定してやれば何時にどの方向で見られるかが分かる。・全国市町村別 金環食・部分日食撮影ガイド http://www.annulareclipse2012.com/ もっと詳しく知りたいなら国立天文台のサイトもお勧め。・国立天文台暦計算室 日食各地予報 http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/koyomix/eclipsex_s.html そして当日の晴れを祈るべし。 ちなみに6月8日には太陽の前を金星が通過する現象もおきるそうで、それも上記の太陽撮影セットで撮ることができる。 手元に望遠レンズが、あるいは超望遠対応のコンデジがあれば、フィルターのひとつくらい買って試してみる価値はあるかと思う。どちらも天気が悪かったら、まあ、普通の太陽の写真を撮って黒点を楽しみましょう。黒点の場所や大きさも刻々と変化するのでけっこうハマるかも。[荻窪圭,ITmedia]
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