手話を使った携帯電話向けアプリケーションや、手話通訳システムを開発しているベンチャー企業が藤沢市にある。創業から4年。「聴覚障害者が夢を諦めない社会を」と、24歳の若手経営者は思いを新たにしている。「まったく聞こえない聴覚障害者は、110番がかけられない。そんな社会はおかしい」。そうしたことを知らずに20年間生きてきた自分と、その社会に怒りを感じた。 ベンチャー企業「シュアール」の代表者、大木洵人(じゅんと)さん(24)は、創業への思いを振り返る。 2007年、慶応大在学中に手話サークルを立ち上げた。以前から意味が形になっていることに興味を覚えていた。習って間もなくテレビの音楽番組で歌詞を手話通訳する仕事に携わった。「私たちのライブでも」といった要望を受け、反響の大きさに驚いた。 ニーズを知り、手話ビジネスを展開する「シュアールグループ」を08年に創業。今も慶応藤沢イノベーションビレッジ(藤沢市遠藤)に拠点を置く。 創業直後から関係者の注目を集めたのは、インターネットを活用した遠隔手話通訳システムだ。 「手話通訳センター」を設け、常駐する手話通訳者がカメラ付きのノート型パソコンなどを使い、テレビ電話の要領で、画面を通して聴覚障害者の会話を通訳する仕組み。既に24時間体制の実証実験は終えた。 手話通訳者の派遣より費用が安く、短時間や緊急時の利用などでもメリットがある。「現在、手話通訳者は週に1~2回ほどの仕事で1回4千円程度。職業として成り立たない。質の高い手話通訳を継続的に提供するにはビジネスにするしかない」 将来的には、手話通訳者を正規雇用し、24時間365日、コールセンターのように手話通訳を受けられる体制を目指すという。 現在取り組んでいる最新の仕組みが、インターネットを使った手話辞典だ。 既存の手話辞典は日本語から手話表現を調べる手順になっている。その逆はできない。 「手話は一つの言語。手話から日本語を調べられるようにしたい」と開発を始めた。 左右の手の形と位置を入力することでその意味が表示される仕組みだ。例えば、手話通訳者の手話から、日本語を調べることもできる。 同じ仕組みの中に、手話動画と、対応する日本語を、利用者が投稿できるシステムも組み込む。流行語や固有名詞も、賛同者が多い手話に統一されるようになるという。 このシステムは既に世界各国で特許を申請中だ。 大木さんの目標は、ITを聴覚障害者のために活用し、聴覚障害を障害としない社会を築くこと。 「例えば、僕らがメガネをかけて社会と接しているように、遠隔手話通訳が使われるようにしたい」 


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