化学大手などが電気自動車(EV)の普及をにらみ、リチウムイオン電池用材料事業を相次ぎ強化している。各社とも国内だけでなく海外生産も拡大するほか、新規参入もあり、日本メーカーの強みを発揮したい考え。ただ、携帯電話やパソコン向けなど小型リチウムイオン電池の世界シェアでは昨年、日本勢が韓国勢に抜かれるなど海外メーカーも台頭。これに伴い、韓国や中国の電池材料メーカーも力をつけている。次の“主役”とされる車載電池向け材料では技術力で先行する日本メーカーも、海外に対抗するコスト競争力が求められている。 ◆海外市場開拓に躍起 「次世代のリチウムイオン電池向けセパレーターのデファクトスタンダード(事実上の標準)を狙える革新的な電池材料だ」。2月6日、帝人の小山俊也新機能材料事業開発部長は、電池の正極と負極を隔離するセパレーターへの参入発表会見でこう意気込んだ。同社は数十億円を投じて韓国のフィルム加工メーカーと合弁で韓国に新工場を建設、6月から耐熱性に優れ長寿命を実現した製品の生産を開始。韓国などの電池メーカーに採用を働きかけ、2020年には売上高200億円を目指す。 宇部興産は昨年12月、米ダウ・ケミカルと電池用電解液を製造・販売する合弁会社を米国に設立。今年末にも米国で新工場を稼働させるほか、中国やスペインでも電解液を生産するなど海外市場開拓に躍起だ。 クラレとクレハ、伊藤忠商事は植物由来の原料を用いた負極材を共同で事業化する。合弁会社が岡山県で13年に年産1000トン規模で量産に着手し、15年には4000トン規模に拡大する。 いずれも、車載電池用材料が「巨大な潜在市場」(化学大手)とみてシェア拡大を狙う。 炭素材料や樹脂加工など、化学関連技術の集積であるリチウムイオン電池は“小さな化学プラント”で、「化学メーカーとして(海外には)負けられない」(三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長)と技術力に自信を持つ。実際「安全性や技術開発力で日本の材料メーカーは、韓国や中国の数歩先を行っている」(証券アナリスト)との評価が一般的だ。 同電池で「主要4材料」とされるのが正極材と負極材、電解液、セパレーター。調査会社テクノ・システム・リサーチ(TSR)の11年の推計によると、負極材では日立化成工業(世界シェア32%)、セパレーターで旭化成イーマテリアルズ(同37%)、電解液で宇部興産(同23%)がいずれもトップに立つ。 ◆ウォン安で韓国台頭 ただ、TSRの山本連三マーケティングアナリストは「日系の材料メーカーは今も優位にあるが、それを揺るがす変化が起きている」と指摘する。 一つは、完成品の電池でここ数年、韓国勢が急速に勢力を拡大していることだ。TSRの調べでは、パソコンなど小型民生用電池の11年の出荷シェアは、サムスンSDIとLG化学を合計した韓国勢が39.5%と、パナソニックやソニーなどの日本勢(34.8%)を初めて上回った。3年前の08年には日本勢のシェアが50%弱で、韓国勢(21.9%)と大差をつけていたが、円高ウォン安などを追い風に韓国勢が価格競争力を高めたのが要因。これに伴い、特に09~10年は韓国の材料メーカーのシェア拡大が顕著だったという。 「日系の材料メーカーは日本の電池メーカーへの供給が中心という企業もあり、日本勢の電池シェアが落ちればそれに連動して材料も厳しくなる」(山本氏)という。                   ◇ ■EV本格普及へ強まる値下げ圧力 もう一つは、中国メーカーが力をつけてきたことだ。中国にはBYDやATLなど著名な電池メーカーのほか、品質面で劣る地場メーカーが600~700社はあるといわれる。「山寨機(さんさいき)」と呼ばれる模倣携帯電話市場に供給するほか、2、3個目の電池需要に応えている。それら地場メーカーは材料の大半を中国国内で調達しており「中国の材料市場の成長につながった」(同)。 最近では、コスト面から韓国や日本製のリチウムイオン電池に中国製材料が採用されるケースも出ているとされ、「サムスンSDIの電池に使われている負極材の半分程度は中国製」(業界関係者)ともいわれる。 日本の電池材料大手が大きな期待を寄せるEVはまだ価格が高いこともあり、「市場は立ち上がりきれていない」(矢野経済研究所)のが現状。EVが本格普及するには車体コストの半分近くを占める電池価格の引き下げが不可欠で、材料メーカーにも値下げ圧力が強まる上、力をつけた韓国や中国勢との競争が車載用電池でも繰り広げられそうだ。韓中勢に負けないためには、消耗戦に耐えられるだけの技術力とコスト競争力が求められている。(森田晶宏)


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