「我々のビジネスは正常化した」。宏碁(エイサー)は、世界のパソコン(PC)市場で首位をうかがう位置につけながら、欧州で積み上がった在庫問題でシェアを落とし、戦略の見直しを余儀なくされた。だが、ここへきて立て直しが進んでいる。タブレット端末やウルトラブックが激しく競い合う市場で、PC市場の将来をどう占うのか。今年4月にナンバー2の総経理・全球総裁に就いた翁建仁氏が、NNAなど海外記者団のインタビューに応じた。【高田英俊】 ——今年第2四半期は10年ぶりの赤字に陥り、第3四半期もまだ赤字が残った。業績立て直しの進ちょくは。 赤字に転落した原因は、市場の需要や米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」との競合に対してあまりに楽観的過ぎたからだった。我々の販路の流通在庫が過剰に積み上がり、9月は事実上、製品を出荷することができなかった。しかし、今四半期は損益均衡か若干の黒字を確保できるだろう。通年では赤字が残るが、我々のビジネスは正常な状態に戻った。いらぬ在庫さえなくなれば、利益を上げるのは難しいことではない。 ——PC市場は、タブレット端末の人気沸騰や超軽量・薄型の次世代ノートPC「ウルトラブック」が登場し始めた。何が勝つのか先が見えない。 タブレットでは来年もアップルが首位のままだろう。ただ、ウルトラブックは我々が世界で初めて発売した。あらゆる製品で常に市場の先導者でありたい。 ウルトラブックは価格が高すぎてiPadと競争できないと懸念されているが、来年の第2四半期にも次の価格調整期が来るとみている。主要価格帯は現在の999米ドル(約7万8,000円)から来年には799米ドルへ下がる。2013年には499米ドルも出てきて、需要を刺激する。 市場全体を見渡すと、PCメーカーにとって来年は大きな変動が起こるパラダイムシフトの年になる。これまで製品の開発と作ることに経営資源をつぎ込んできた結果、激しい競争の中で製品の差がなくなり、効率性だけの勝負になっていた。 次の2~3年に最も合う表現は「いつでもどこでも、どの端末からでもデジタルサービスを享受できること」。PCは家庭に1台からポータブルになり、今やポケットサイズ。操作面ではキーボードからマウスへと変化し、今やタッチ操作や音声反応へのシフトが同時発生的に起こっている。PCメーカーはもはや、自身を単なるハード企業とみなすことはできない。これからは、より高い付加価値を提供できるかどうかが重要になる。より多くの創造力が求められる。 ユーザーは今後、より多くのデータを消費するようになることから、クラウドコンピューティングの重要性が増してきた。当社は今年7月、米クラウドコンピューティング技術のアイジーウエア買収を発表し、パーソナルクラウドへの参入を果たした。端末のユーザー体験をより豊かにして、価値を高めるためだ。パーソナルはパブリッククラウドと競合関係にならない。むしろパーソナルクラウドからパブリックへと発展する礎にもなると考えている。 ——パラダイムシフトに備えたM&A(企業の合併・買収)戦略は。 買収は07年ごろまで選択肢になかった。しかし、その後はPC市場での地歩を固めるため米ゲートウェイやパッカードベルの買収に踏み切った。今後の買収はこれらとは異なる。イノベーションが重要なキーワードになる中で、個人向けのクラウドサービスやデータシェアリングがユーザーのニーズとして高まってくる。買収するなら、ユーザー体験を豊かにするものだけだろう。ただし、非常に慎重に臨む。案件は数多くは出てこない。 ——商品別の売り上げ構成比は今後、どう変化する。 現在、ノートPCが65%を占めているが、数年後には半分に満たなくなる。デスクトップPCは18~20%が10~12%に低下。これらと対照的にタブレットは7~8%から20%程度まで高まるだろう。スマートフォンは現在1.5~2%にとどまっている。多様な端末で、いつでもどこからでもデータにアクセスし、利用可能にするインフラとしてタブレットとスマホは極めて重要だ。 スマホは実は過去、戦略を誤った。ノートPCで確立した事業拡大のビジネスモデルが転用できると考え、通信会社を通じて拡販しようとしたがうまくいかなかった。クラウドサービスの事業基盤を持てれば、スマホは重要な端末の一つになるため、今後2~3年は戦略を変えていく。 ——新興国市場での販売状況、今後の戦略は。 現在の市場別売上高は、今年は欧州40%、米州が32%、アジア太平洋が28%。来年は順に40%、30%、30%の割合になるだろう。 ここ2年は中国とロシアで大きな成功を収めた。中国では、大都市である「一級都市」から地方の「六級都市」まで異なる需要に対応していかねばならない。すでに三級都市までは市場が飽和に近づいており、四~六級都市の開拓に力を入れる。IT製品を扱うモールにエイサー専門売り場を積極的に出していく。今はシェアが拮抗(きっこう)している企業同士が2~4位にひしめき合っている。来年にはノートPCで確固たる2位につきたい。 その他の新興国では、昨年後半からインドネシア市場の需要が強くなり、ブラジルも急速な成長が始まった。来年はブラジル、コロンビアなど南米とアジア太平洋の急成長に注目している。 ブラジルには3年前に販売会社を設け、現在、ノートPCの生産委託先が2社ある。昨年から今年にかけては、2倍以上の成長を遂げ、シェアは2~3位で安定した。今後3年も年平均成長率は30%以上と高いものになるだろう。
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