読みやすさを重視した活字書体が相次いで開発され、商品パッケージなどの印刷文字として採用されている。1文字ごとに点と線の形やすき間の空け方など、誤読を防ぐ工夫を施しているのが特徴。高齢化が進み、読みやすい文字が一層求められているようだ。 博報堂と慶応大教授の中野泰志さんらは2年前、「つたわるフォント」を共同開発した。フォントとはパソコンなどで使う書体データ。読み間違いや入力ミスを防ぐことが目的で作られた書体だ。「9」と「q」や、「5」と「6」など似た数字やアルファベットを判別しやすい形にした。「る」や「む」の輪の部分も大きく読みやすくしている。 この書体は昨年、キリンビバレッジの飲料「生茶」のラベル表示に採用された。NTTドコモの商品パンフレットにも今年から使われている。2年間で採用した企業は約70社にのぼる。 読みやすさを重視して開発された書体は「ユニバーサルデザイン(UD)フォント」と呼ばれ、各社が開発に力を入れている。フォント開発会社のイワタとパナソニックは共同で「読みやすさとデザイン性にこだわった」というUDフォントを2006年に開発。例えば「3」「S」は形の違いをはっきりさせ、濁点、半濁点のすき間も確保。パナソニック製品の操作表示は現在、この書体を使っている。 読みやすい書体が求められる背景には、高齢化で文字が見えにくい人が増えている一方で、製品の多機能・小型化で表示が小さくなっているという実情がある。正確な食品表示が求められる食品メーカーも同様で、カゴメは「原材料や栄養成分など多くの事項を限られたスペースに表示する必要があり、読みやすいフォントを採用した」と説明。三菱東京UFJ銀行も高齢者に配慮して、「今年度末までに窓口に置く申込書の8割を読みやすい文字にしたい」。 書体の変更は小さな文字だけではない。NEXCO東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社(旧日本道路公団)は、40年以上にわたって案内標識で使ってきた独特なデザインの書体を、切り替えることに決めた。 新たに採用した和文書体は「ヒラギノ」という大日本スクリーン製造のフォント。文字の線の端が少し末広がりで、部首もやや大きめにして強調。「高速道路を走行中、一瞬見ただけでも判別しやすい」と評価された。昨年末から、新設する標識に使っている。 従来の書体は「公団文字」と呼ばれ、文字枠いっぱいに漢字を変形させるデザインで、画数が多い漢字の線やハネを簡略化することもあった。「公団文字を惜しむ声もあるが、判読しやすさをより重視し、高齢者にも外国人観光客にもわかりやすい標識にしたい」とNEXCO東日本の広報担当者は話している。
この記事の著作権は、下記の引用元に帰属します。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111109-00000301-yomidr-sci