北海道電力の「やらせ」問題を調査していた第三者委員会の報告書要旨は次の通り。 ◆調査体制・調査方法 第三者委員会は9月3日に設置され、社員のパソコン88台やサーバーからデータを出力したり、初期化されたパソコンデータを復元して解析作業を行い、北電社内外の48人にヒアリングした。関係先への照会や道に対して情報公開請求も行った。 ◆ご意見を伺う会(08年5~6月に5回) <動員> 泊原子力事務所渉外課の依頼で泊原発建設所が関係会社を含む10人の動員を決定。泊発電所からも5人の参加を決めた。実際に参加した人数は不明。 <事前準備> 渉外課は参加者に「応援発言」を依頼し、泊会場で2人、神恵内会場で1人が北電作成の例文とほぼ同内容の質問をした。発言者は今回の調査で「質問内容のような専門的な知識はないので自らそうした質問はできない」と回答した。 <組織的関与> 動員や事前準備は本店電源立地部、渉外課を中心に実行され、本店を含めた相当数の部署の組織的関与があったことは明らか。電源立地部長の関与の疑いが濃厚。取締役ら上層部が積極的に指示した証拠はなかった。会場発言やアンケートなど計199件の意見が出されたが、動員や事前準備で結果がゆがめられた証拠は見いだせなかった。 ◆国主催のシンポジウム(08年8月31日) <動員> 渉外課は7月、泊村3人▽共和町3人▽岩内町4人▽神恵内村2人に会場での発言を依頼。当日は会場を4ブロックに分けて各ブロックから2人程度発言してもらうことを企画。「8/31シンポジウム動員計画」を立案し、社員30人▽協力会社30人▽地元オピニオン(渉外課などが地元推進派で見識が高いと評価する人物)40人に参加協力を求めることとした。 組合本部(北電労組)は泊特別支部から約50人を参加させる方針を決めた。渉外課長や組合支部書記長らは、組合員の参加に対して時間外手当の支給を決めた。 渉外課は泊原子力事務所など482人に対して参加依頼のメールを送信。原子力部原子力業務グループリーダー(GL)はメールで「当日に反対派の集会が行われるとの情報があり、有意義なものにならない可能性がある。つきましては、各グループに以下の人数をお願いしたい」などと、同部の他グループに計20人の参加を要請した。メールでは「服務・交通については、検討して一律になるようにしたい」と時間外手当や交通費の支給をほのめかした。 渉外課長は電源立地部社員にメールを送り、泊発電所や地元住民らに327通の参加証が発行され、出席予定者が249人であることを報告。「『参加証合計』と『出席者合計』の差がダミーということになります」と伝えた。シンポでは「ダミー」を含む計143人が反対派の参加を排斥するためのものだった。シンポには北電社員が92人参加した。 <事前準備> 8月13日、資源エネルギー庁と北電の間でシンポ運営の打ち合わせがあり、同庁職員から「電源立地部長にも伝えてあるが、推進の側で発言いただくことも準備をお願いしたい」と依頼があった。同21日、同庁職員は北電側に対し、発言者の指名方法やブロック分けなどの詳細について、運営を委託した社会経済生産性本部(現日本生産性本部)と相談するよう求めた。その後、北電側は同庁職員の求めに応じ、意見表明の依頼内容や人数、質問集案を報告した。 同27日、電源立地部社員が会場を8ブロックに分け、各ブロックに推進派の質問者を割り当てるよう立案。各質問予定者の座席を決定した。同庁職員には座席配置表を送った。電源立地部社員は質問と回答案を原子力部統括室にメールし、「(原子力部)部長がOKでしたら常務取締役兼発電本部長にも送ります」と伝えた。約1時間後には発電本部長にも完成版を送信した。 <アンケート記載要請> シンポ当日は12人の質問予定者が北電担当者の誘導で座席に座り、このうち3人が実際に質問。アンケートは参加者351人中158人が回答したが、北電社員が何人かは特定できなかった。ただし、参加した92人の北電社員のうち相当数がアンケートに回答した可能性は大きい。 <組織的関与> 組織的関与は明らかで、電源立地部長の指示があった疑いが極めて濃厚。常務取締役兼発電本部長と原子力部長も質問の事前準備を黙認していた。 ◆道主催のシンポジウム(08年10月12日) <北電の対応方針> 泊原子力事務所次長、渉外課、広報課は9月29日、動員要請や質問依頼などについての対応要領を定め、連携して進めることを確認。「動員依頼の訪問時に正式依頼。承諾をいただければ意見案を手渡す」などとした。 <動員> 9月24日、渉外課が「動員予定」の一覧表を作成し、泊発電所や労組、地元建設業協会などから計300人の動員を予定。10月3日に「参加協力」を呼びかけたメールが延べ556人の社員に送信された。本社では30人の「自主参加者」が決められ、時間外労働と出張として処理されることになった。 原子力業務GLのメールには「あくまでも自主参加であり、動員という言葉は発しない」との注意喚起や「(アンケートは)必ず回答してください。プルサーマルは重要であると思うなどと書いていただければと思います」との記載があった。 渉外課から電源立地部に対し、質問を依頼した8人の氏名や居住町村、質問の例文などがメールで送られた。このうち国のシンポで発言予定だった2人が例文とほぼ同内容の質問をした。 <組織的関与> 電源立地部と渉外課のラインに原子力部が加わって実行され、組織的関与があったことは明らか。電源立地部長の指示があった疑いが濃厚で、原子力部長は少なくとも黙認していた。上層部の関与の証拠は見いだせなかった。 動員とアンケート記載要請は、結果に少なからず影響を及ぼした疑いがある。また、当日の質問は慎重派6件に対し推進派3件で、このうち2件が事前依頼されていた。 ◆意見の提出 <道の第1次、第2次意見募集・08年5~7月> 電源立地部が推進派意見の八つの例文を作成し、泊原子力事務所次長と渉外課に送信した。「具体的意見案については、キーワードを参考に『地元意見らしく』アレンジしてください」「地元住民以外の意見が圧倒的に多い(道原子力安全対策課)とのことであり、意見として特に『地元意見を尊重』を検討願います」などと書かれており、渉外課は例文を17例に増やした。 7月8日に北電と道原子力安全対策課との打ち合わせがあり、このときの「道庁打ち合わせメモ(プル)<取扱注意>」には、道職員から北電側に「7月11日までの意見募集について反対意見が多いので、地元から反対派の主張を打ち消す意見もほしい」との発言があったと記載されていた。調査委に対し、道総務部は「要請をした認識は全くない」と回答したが、出席者のメールなどからこうした趣旨の発言があったことは否定しがたい。 <道の中間報告の意見募集・08年10月> 「泊発電所3号機のプルサーマル計画に係る安全性の検討状況(中間報告)」に関する意見募集では、渉外課が泊所在の21部署に対し、推進意見の提出を求めるメールを送信。渉外課副長は泊原子力事務所次長らにメールで「万一、『名前は貸すから北電で出してもらいたい』との要望があれば柔軟に対応を(但し会社FAXの使用は厳禁)」として、名義借りを容認した。 10月7日、原子力部原子力業務GLは、同部長を含む経営職ら20人にメールで「本パブリックコメントの結果は、今後の道・4町村の判断を左右することになる。とりあえずは特別経営職・経営職で60件(ひとり3件)の自主的なコメントをお願いしたい」「応募はあくまでも一般道民の自主的な立場で出すものであり、北電の名を出さないこと。名前を書きたくない場合は、匿名希望かつ札幌在住でOKです」「会社のメールやfaxは北電の名前が残ってしまうので、自宅のメール、faxを使ってください」と連絡した。同23日、同GLは泊発電所、泊建設所の次長にメールで「全社で200件出すことで進められている」とメールした。 本件調査で、同GLらのパソコンから22通の意見書が発見された。道が開示した意見書の写しと内容が完全に一致するものは18通あった。 <組織的関与> 組織的関与は明らかで、電源立地部長の指示があった疑いは濃厚。原子力部長は黙認していたことが認められる。中間報告への意見書は221通で、泊・原子力部の社員だけでも100通の準備が進められており、集約結果をゆがめた可能性がある。 ◆原因分析 安全性に関する説明責任▽公正であるべき行政作用に関与しているという認識▽コンプライアンス意識などが不足していた。不適切行為への規範がなく、ガバナンス不全は深刻である。 ◆再発防止策 原発の安全性の説明責任を認識し、行政が行うシンポジウムなどで公正、透明を損なわないよう配慮する。意見提出依頼や動員を禁止する規範を策定する。ガバナンスを強化し、行政と適度な距離を保つ。10月15日朝刊
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