従来の業務用パソコンや専用端末の置き換えとして、あるいはまったく新しいかたちのコミュニケーションツールとして、iPadに代表される「タブレット端末」のビジネス用途での利用が拡大している。今回はその一例として、ファイルメーカーとBCNが共同で実施したアンケート結果を紹介しながら、個人利用からビジネスまで、ハードとアプリ・サービスとの組み合わせで無限に広がる「タブレット」の可能性を探る。 【図表データ入りの記事】 ●伸びるWi-Fiタブレット、参入メーカーは32社に  まずは簡単に、量販店の実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、iPad発売以降のタブレット端末の販売動向を振り返ろう。初代iPadが日本で発売された2010年5月のタブレット端末の販売台数を1とすると、2010年6月、7月をピークに下がり、年末年始は若干盛り返したものの、2011年3月には0.4まで落ち込んだ。しかし、4月28日のiPad 2発売あたりから勢いが戻り、2011年5月、6月は1.5、7月は1.8、8月は1.5、9月は1.6と、今年4月以降は2010年5月を上回る売れ行きが続いている。参入メーカーも増え、9月30日時点で32社に達した。多くのPCメーカーが、競うように製品を投入した2008年のネットブックと同じような状況になりつつある。  特に最近は、自宅・職場など無線LAN環境のある場所や、モバイルWi-Fiルータと組み合わせて使う「Wi-Fiモデル」が伸びている。5月以降、SIMフリーを含む3G対応モデルの販売台数は前年を下回っているが、SIMスロットを搭載していないWi-Fiモデルは販売台数前年比177.3~239.2%と好調だ。カラーバリエーション、容量を合算したモデル別でみると、2011年9月は、iPad 2のWi-Fiモデルが販売台数シェア42.9%でダントツの1位だった。ソニーの「Sony Table Sシリーズ」のWi-Fiモデル、日本エイサーの「ICONIA TAB A500」など、一部のAndroid搭載タブレットも売れており、今年6月以降はタブレット端末全体の販売台数の8割以上をWi-Fiモデルが占めている。現在の主流はWi-Fiモデルといっていい。 ●ビジネスで活躍するiPad、相次ぐ企業・法人での導入  ITビジネス情報専門紙『週刊BCN』の昨年7月15日号(vol.1340)の記事<iPad、法人需要に火はつくのか>では、iPad発売直後の時点で、大塚製薬、みずほ銀行など、さまざまな業種・業界の企業・団体がすでに導入を決めていたことを報じている。この記事では、iPadに適している業種として「飲食店」「病院」「学校」の三つを挙げ、それぞれ普及の可能性を探った。今年に入り、企業・団体の導入事例は、ますます増えている。アップルのiPadに限らず、タッチパネルを搭載したタブレット型端末全般を活用する動きも出てきている。  先日、全日本空輸(ANAグループ)が2012年4月からグループ全客室乗務員にiPadを配布すると発表し、話題になった。従来の紙マニュアルの代わりにiPadを携行し、電子化した最新の乗務マニュアルをいつでも参照できるようにするとともに、iPadを活用した自己学習形式の教育訓練を導入し、訓練業務の効率化を図るという。ビジネス用途で導入する最大の目的は、おおむねペーパーレス化による「コスト削減」と「業務効率化」にある。もちろん、イメージアップや話題づくりも兼ねてのことだろう。 ●医療関係者の高い個人購入率 仕事での利用率は100%  さまざまな業種・業界のうち、医療分野でタブレット型端末、特にiPadの利用が進んでいる。そこで、企業向けデータベースソフト「FileMaker Pro(ファイルメーカー プロ)」を発売し、それらと連携するiPad向けアプリ「FileMaker Go for iPad(ファイルメーカー・ゴー・フォー・アイパッド)」を提供しているファイルメーカーとBCNは共同で、医療分野でのタブレット利用実態の把握を目的に、個人購入または勤務先からの支給でiPad/iPad 2を所有・使用している医療関係者200人にアンケートを実施した。その調査結果の一部を紹介する。  有効回答200人のうち、「個人購入」は167人、「勤務先からの支給」は47人、「個人購入/勤務先からの支給の両方」は14人で、「個人購入」が全体の83.5%を占めた。モデル別ではiPad Wi-Fiモデルが最も多く(個人購入68人+勤務先支給25人の計93人)、どのモデルも「勤務先支給」より「個人購入」のほうが多かった。ただ、なかにはモバイル向けのiPad 2 Wi-Fi +3Gモデル、iPad Wi-Fi +3Gモデルを「勤務先支給」で所有している人もいた。  勤務先で仕事にiPadを活用しているかどうか質問すると、ちょうど50%にあたる100人が「利用する」、残り100人が「たまに利用する」と回答した。利用方法に関する自由回答では、インターネット検索による情報収集・ウェブ閲覧、メール、文書作成、プレゼンテーション資料の確認、クラウドサービス「Evernote」を利用したメモ作成・データの記録、スケジュール管理といった一般的な使い方のほか、「インフォームド・コンセントに利用する」「レントゲン画像、症例写真を見せる」「検査結果の表示」など、患者とのコミュニケーションや、「治験の記入に使用」「カルテの閲覧」「患者さんの管理・記録・情報を記録している」など、診療や管理業務の一部として使っているという回答もあった。  インターネット検索に関しても、「医療用の錠剤識別コードなどを調べる」「薬の検索、医療情報の検索」「診断基準などの参照、論文検索」「診療に関する情報の検索」など、医療関係者ならではの利用方法が挙がっている。特に、「薬剤情報の検索」を挙げる人が多く、情報収集を中心に、個々の業務やスタイルに合わせて、さまざまな用途でiPadを活用していることがうかがえる。  現在、勤務先の医療機関で1台以上iPadを導入していると回答した人は91人。さらに、「現在導入していない/個人のものを利用している」と回答した人に今後の導入意欲をたずねたところ、18.3%に当たる20人が「今後導入を検討している」、56人が「わからない」と回答した。導入済みの人数に、導入を検討している人数を加算すると、過半数を超える全体の55.5%が導入に積極的だ。iPad使用者に限った偏りのある母集団のアンケート結果とはいえ、医療関係者の個人購入率は高く、業務への導入意欲も高いといえるだろう。  また、iPadやiPhone上で「FileMaker Pro」のデータベースを閲覧・編集・検索できるアプリ「FileMaker Go」の認知度は、約半数の54.5%が「知っている」と回答。うち6.5%に当たる13人が「現在導入している」と回答した。  ファイルメーカーによると、「名古屋記念病院」では血液浄化センター認証プログラムに、「ロイヤルベルクリニック」では産婦人科の問診ツールに、「FileMaker Go」を利用しているという。  「FileMaker Go」は、アップルが運営する「App Store」の「ビジネスカテゴリ」で、ランキング1位を獲得したこともある人気アプリ。企業向けデータベースソフト「FileMaker」と「FileMaker Go」をインストールしたiPadやiPhoneを組み合わせることで、コミュニケーションの促進や業務の効率化を図ることができる。医療分野で「FileMaker Go」が活用されていることについて、ファイルメーカー マーケティング部の堀谷佳史氏は、「iPadのインターフェースを生かし、患者様とのコミュニケーションや業務効率化のために、『FileMaker Go』をご利用いただいている。『FileMaker Pro』で作成したファイルをiPadで活用できるので、迅速にソリューションを導入でき、医療関係の方々に高い評価をいただいている」と手応えを語る。 ●利用するアプリやサービスによって変わる“魔法のデバイス”  iPadに代表されるタブレット端末に対して、「使い道がわからない」「モバイルPCやスマートフォンとの違いがわからない」という声をたまに聞く。実際のところ、どんなアプリを入れるか、どんなサービスを利用するかによって、タブレットの使い道、使い勝手は変わり、活用の幅はアプリ・サービスの数だけあるといっても過言ではない。  さらに、直感的に操作できるタッチパネル、7~10インチという適度な画面サイズ、持ち運びしやすい大きさが活用の幅を広げている。自分一人で見るだけでなく、複数の人で同じ画面をのぞき込んだり、対面している相手に見せたりと、画面が小さいスマートフォンより「オープン」だし、一方通行な印象のあるPC用ディスプレイに比べて「フレンドリー」だ。タブレットの活躍の場は、医療分野での実際の活用例をみると、プライベートシーンよりも、むしろビジネス分野にあるかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美) ■調査概要 ・名称:医療従事者iPad利用実態調査 ・調査期間:2011年9月9日~9月14日 ・方式:ウェブアンケート(インターネット調査) ・抽出条件:医療関連に従事する「iPad」もしくは「iPad2」を個人購入もしくは勤務先支給で所有している人 ・回答者数:医療関連に従事する男女200人(男性165人・女性35人、平均年齢44.8歳) ・実施:シタシオンジャパン(企画協力 : BCN/ファイルメーカー) *「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。


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