下村湖人さん(1885~1955)が『論語』を題材に
して書いた短編小説集です。
『論語』そのものは、短い文で前後の脈絡も無い言葉
の集まりですから、道徳や格言の本のような感じが
あります。
よく「成功者」みたいな経営者や政治家などの『論語』
を解説した本がありますが、職場の上司のお説教を聞い
ているようで、つまらないものが多い。
しかし、下村さんの小説では実に生き生きと登場人物が
躍動し、孔子やその弟子達がぐっと身近に感じられます。
粗野だけれども実直な「子路」、賢いけれども利口すぎる
「子貢」、身体が弱く物静かだが真理を見抜いている「顔回」、
師匠「孔子」自身、人間として悩みながら生きている姿が
描かれます。