RIE.Aのブログ

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彼が母国へ帰ってから、私はとにかく泣いた。
色んな感情が渦の如く私の心の中を壊していった。
仕事をしていても娘と一緒にいても、もうどんな顔で対応していたのか覚えていない。
人と一緒にいるのが苦痛で耐えられなかった。
それでも、赤ちゃんと娘と生活を守るために必死で働いた。
妊娠を隠し続けながら。

そんな日々が何日か続き、連絡の来ない携帯電話を眺めていたとき、学校から帰宅してきた娘が慌てて私にこう言った。
「facebookであの人から友達申請がきたよ!」
私は娘と共に娘のfacebookを開き、一緒に確認した。
そこには彼の新しいアカウントが作成されていた。
でもなぜ娘に申請なんかしてきたのだろう?
そう疑問に思っていたら、私の携帯からメッセンジャーの受信音が鳴った。
…彼からだった。

「あなたからの答えを待っている」
私は文の意味がわからなかった。
彼は自分で答えを出して国へ帰ったのではなかったのか?
今更私に何を答えろと?
少し悩んだ後、返事を返してみることにした。
「何の答え?」
そうすると彼は透かさず返事を返してきた。
「こっちに来て。」
「結婚したい。」
いきなりの言葉に全く理解できなかった。
彼は別れる決断をして帰国したのではなかったのか?
私と私達の赤ちゃんを捨てて、自分の意思で。
なのに今更結婚?
まだ日本語も話せないのに?
ましてや仕事も安定していなく、収入も無いのに?
私達を守る力が全く無いのに、なぜその言葉を言えるのだろうか?
すると彼から再度メッセンジャーが届いた。
「結婚したらVISAがもらえる。」
「そうしたら日本へ行ける。」
「日本で働ける。」
「ここでは稼げない。」

…開いた口が塞がらないとは、きっとこの事を言うのだろう。
自分の国でもそんな状態で、他の国で通用すると思っているのだろうか?
ましてや日本語さえ話せないのに。
私は彼にその事を伝え、
「結婚したいのであれば、まず日本語を勉強して。」
「それから母国で出産費等を最低限貯めて。」
「それが男としての対応であり、父親としての責任だよ。」
「全く先の見えないもの状態で、結婚なんてできない!」
そう答えると、彼はこう返答してきた。
「僕を助けてくれないなら、僕は君を助けない。」
「僕を助けてくれるなら、僕は君を助ける。」
「だからこっちに来て結婚して。」
「そしたら僕は日本へ戻り、君をサポートできる。」

…そんな、何の根拠も証明もない言葉をよよく言えるものだ。
自分の国で出来る限りの努力をして、就労VISAを取得しようとは考えないのだろうか?
その事を再度メッセンジャーで伝えると、
「僕のVISAには問題がある。」
「結婚しないと日本へ行けない。
「君は僕よりお金を持っている。それでチケット買えばこちらへ来れるでしょ?」
「こっちに僕と結婚して。」

私は彼のあまりの自分勝手さに言葉を失った。
何度も言うが、理由はともあれ国に帰ったのは彼の判断。
常識ある人間であれば、自分の子を妊娠中の彼女を置いて帰りはしない。
それなのに母国での生活が上手くいかないので、やはり日本へ帰りたい。

その1番簡単な方法は結婚。
だから結婚したい。
しかも自分にお金は無いから、私に航空券を買わせてこっちに来させて結婚。
そうすればVISAが手に入る。
もしそれが不可なのであれば、私達は不要。
お腹の赤ちゃんは、彼の子供なのに…。

最低だ。

私は途中でメッセンジャーを終了し、日本に住む彼の叔父さんに電話をした。
・VISAのために結婚して欲しいと言われたこと。
・自分では何もしようとしないこと。
・自分を助けないのであれば、私も助けないと言われたこと。
そう話をすると彼の叔父さんは、
「あいつは昔から無責任でだらしない男だった。」
「ちゃんとした男なら、あなたとお腹の子を置いて帰ったりはしない。」
「それにしてあいつのVISAは、結婚しても日本へは来れない。」
そう言った。

…え?
どういうこと?!
結婚しても日本へは戻れないなんて、彼のVISAにはどんな問題があるの?
彼の叔父さんは、こう説明した。
「あいつのVISAは難民VISAなんだ。」
難民VISA?
叔父さんの説明では、難民VISAになると1度国へ帰ってしまうと数年間は日本へ来ることはできないと言う。
更に叔父さんは続けてこう話した。
「あなたは良い人だから、あいつを信じて欲しくない。」
「あいつは信用できないやつだ。」
「…なぜなら」
「あいつは仕事が終わった後、別の女と遊んでいる。」
「あなたと付き合いながら、何人も他の女と遊んでいた。」

…嘘でしょう?
彼がそんな事する人だと今まで思っていなかった。
考えたこともなかった。
彼の目は綺麗だったから。
でも、数ヶ月前から少し冷たくなった様な気がしていた。
それが彼の心を映し出す行動だったのだと、今やっとわかった。
度重なるショックで、私は立ち上がることも出来なくなった。
そしてお腹がズキズキと痛みが走り、私は泣きながらうずくまった。

それから数日間、私は仕事をすることができず家の中にずっといた。
『VISAのこと、彼に話してみよう。』
私はそう思って彼にメッセージを送った。
彼からの返答は相変わらず変わらなかった。
『結婚したらVISAを取得できる』
私は徐々に嫌気がさしてきた。
私の体調のことを話すと、
「どうしたの?」
「僕はこれから仕事。」
「お金あまり良くない。」
そんな答えしか返って来なかった。
今の彼にとって私は、きっとVISAのための道具でしかないのだろう。
彼を必要としているのは私だけ。
彼にとって私は…
私自身が必要な訳ではない。
頭の中が真っ白になった。
そしてその真っ白な中に1つの疑問が。
『もし私のお腹に赤ちゃんがいなかったとしたら、私にとって彼は必要なのだろうか?』
私は私の心に聞いた。
何故か『YES』が出てこない。
…それが私の答えだ。
今私が彼に執着してしまっているのは、1人が不安だから。
今1番側にいて欲しいのは、家族でなく友達でなく、この子の父親である彼だけ。
私はその寂しさの感情だけのために、自分の人生を自分の手で壊そうとしている。
先の無い未来とわかっていて、彼との結婚を望んでいる。
幸せになんか絶対なれない!
それなのに、『もしかしたら彼は変わってくれるかもしれない…』なんて甘い期待まで持ってしまう。
孤独とは、自分の理性をも狂わす。
正しい感情がかき消される。
架空の幸せを本物だと信じようとしてしまう。
頭ではわかっていても、感情のコントロールが壊される。
自分の判断が怖い。
ただ幸せになりたいだけなのに…。
愛されたいだけなのに…。
私は彼に捨てられ、将来彼は別の女と結婚して幸せな家庭を持つなんて許せない。
彼だけ幸せを掴むなんて絶対許せない。
何の責任も取ろうとしない彼に、何か罰を与えないと気が済まない。

自分の気持ちが一気に方向転換し始めたのがわかった。
私は彼を簡単に野放しになんてさせない。
私はどんな嘘をついたとしても、彼に私と同じ痛みを味あわせてやろう。

この瞬間から、私の中の悪が大きくなり始めた。