大輔の手には昇進の知らせとともに、別の海で新たな人生を始めるという期待と、離れ離れになることへの不安が握りしめられていた。
彼の心は胸を高鳴らせ、
これから彼と彼の家族に訪れるであろう全ての変化を予感していた。
海外での新しい役職は彼にとって、これまでの努力の証でもあった。
毎日、深夜まで残業をしてきた。
休日出勤も厭わなかった。
それらはすべてこの日のためだった。
しかし、その成功が、
同時に、彼のプライベートな時間をさらに奪うことになるのだろうか。
婚約者との間では、すでに少し距離を感じ始めていた。
小さな子供の育児で忙しく、二人きりの時間はほとんど持てない。
大輔は、昇進の知らせをどのように伝えるべきか、その言葉を選ぶことに慎重にならざるを得なかった。
彼は婚約者に対して誠実であること、
そして彼女と一緒に未来を築きたいということを強く感じていた。
「どう伝えよう…?」
彼は独り言をつぶやくと、手にした封筒を机の引き出しにそっとしまった。
まずは今夜、彼女の眼を見て、彼女の声を聞き、
一緒にこれからの人生を設計することを望んだ。
彼は決心を固め、仕事を終え、家路についた。
その晩、家では思いがけない温かさが彼を待っていた。
婚約者は、昇進を祝して彼の好きな料理を準備してくれていたのだ。
彼女はニュースを事前に聞きつけていた。
笑顔で迎え入れられる中、大輔の中にあった罪悪感と不安は、一時的に消えてしまった。
彼らは乾杯し、そして長い夜の話し合いが始まった。
この夜は、彼らにとって新しい始まりの象徴となるはずだった。