【小説】ささやかな逃避行(狭間の糸電話) | ぐっとまっくすのブログ

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少しでも勉強のお役に立てれば幸いです。

大輔はその夜、自宅のリビングの隅で、家族が眠る静けさに包まれながらスマートフォンの画面を見つめていた。

結衣からの未読メッセージが彼の心をざわつかせる。

メッセージを開く指が震える。


彼女からの言葉はいつも心を揺さぶる。
彼は窓の外に目をやり、夜空に浮かぶ星を数えるふりをしながら、罪悪感に心を痛めた。

 

「もう会うべきではない」という思いはある。
でも、彼女への思いは消せない。


彼の中で葛藤が渦を巻いていた。

そっとスマートフォンの画面を滑らせ、メッセージの返信欄に指が休む。

 

「こんな時間にごめん、起こしてしまったかな?」

 

彼の送ったメッセージは、夜の静寂を切り裂くようだった。

 

結衣もまた、自宅の寝室で目を覚まし、隣で深い眠りについている夫の寝息を聞きながら、心中複雑な思いでスマートフォンを握っていた。

 

画面が光るたびに、ドキドキする心臓の音が耳に響く。

 

彼女もまた、同じように「会わない方がいい」と自分に言い聞かせていたが、心のどこかで大輔のことを待ちわびていた。

 

大輔からのメッセージを見た瞬間、彼女の中の葛藤は崩れ落ちた。

 

「全然、起きてたよ。何かあったの?」

 

結衣の返信は慎重でありながらも、どこか安堵の色を帯びていた。

 

二人のやりとりは続いた。

互いに罪悪感を抱えつつも、止めることができない。

言葉の端々には、お互いへの配慮と、出会ってしまった運命に対する諦めが見え隠れする。

 

「今日、公園でのことをずっと考えてた。」
大輔のメッセージには迷いがあった。

 

「俺たち、これでいいのかな…」

 

「わからない…でも、今日はとても幸せだった。それだけは確か。」

 

結衣の返信は、心の内を曝け出していた。

画面を通じて繋がる二人のやりとりは、


まるで狭間の世界で交わされる糸電話のよう。

 

声を直接聞くことはないけれど、文字を通じて互いの心の声を聞く。


夜が明ける前に、二人は会話を終えた。

しかし、その繋がりを断ち切ることはできないまま、
彼らはそれぞれの生活に戻っていった。