厳しかった今年の冬も終わりを告げ、桜とともにあっという間に街が春色になる中、あっ!!と冬への忘れ物を思い出した。 やっべ・・今年 冬の定番一回も行ってない!

 以前オフィスがあった八重洲北口から徒歩1分。大都会東京のさらにど真ん中、東京駅から徒歩一分のところに、いきなりひっそりと建つ木造2階建て。この一見場違いなこの木造2階建てはとてもdeepなスポットだ。 2階には 九州料理を食べさせるかなりdeepな雰囲気の飲み屋があり(ここも安くてうんまい!) 1階には昔ながらの寿司屋がある。  その名は すし処 伴。
 
 失礼を承知で言えば、とてもじゃないが高級感漂う感じではない。かなりの庶民派。さらに言えば最近はやりの内装でもない。昭和40/50年代の感じの雰囲気だ。
 大変失礼なのだが、こちらの握りを食べたことはほとんどない。まずいわけではない。ここのスペシャルセットがあまりにうまくてそれだけで腹いっぱいになってしまうからだ。

 がらっと戸を開けると いらっしゃいと いつもの若旦那が迎えてくれる。オヤジさんと一緒にこの二人はいつも肌襦袢を着ていて、いなせな江戸っ子の雰囲気を醸し出している。さらに若旦那はちょっと 海老蔵似。 愛想がなさそで実はある。サービス精神旺盛だけど客に媚びることはしない。粋な若旦那だ。

 こちらにうかがうと必ずお願いするのは、鯖シャブとあんこう鍋のコース。実はそれ以外ほとんど食べたことはない。 でも、知り合いに教えてもらって以来冬になると必ず一度は訪れる冬の定番だ。 

 まずは岩ノリの酢の物とイカの塩辛がお通しで登場。これをつつきながら、山崎ソーダ割りでかんぱーい。 イカの塩辛は手作り感満載、かすかなゆずの香りがたまらない。 と、ここでやおら若旦那が鍋を持ってきて、火をつける。そして・・今度はでかい皿を持ってくる。 皿いっぱいにのっているのは、そう! 鯖の切り身だ! 

 鯖は決して高級魚ではない。 むしろ、雑魚(ザコ)という人さえいる。 しかし、私はこの魚が好きだ。〆て食ってもよし、焼いてもよし、味噌煮にしてもよし、果てはカレー煮でもその強い風味をしっかり受け止める懐の深い魚だ。 さらには大分 豊予海峡でとれる関サバといえば、もはや泣く子もだまるブランド魚だ。 刺身でさえ食べられるおいしい魚。実力派な魚なのだ。


 鍋の中には利尻昆布が一枚さらんと沈んでいるだけ。この鍋のお湯が煮立ったら、若がおもむろに鯖を一枚さいばしに持ってしゃぶしゃぶする。。。 1..2.3..4..5.. うんいいかな。
ここ特製のポン酢に一人ひとりしゃぶしゃぶしたやつを入れてくれる。  いただいてみる。。。  不思議なんだよなぁ。何の変哲もない鯖なんだけど、冬の鯖にある余計なあぶらが落ち、臭みもすっと抜けている。うまみだけ残った鯖をポン酢でさっぱりと・・ うまいっ!
最初に食べたときは、一体誰がこれ考えたんだと感動したものだ。 ‘今日のは5つ数えたらお湯からあげてたべてくださいね‘ ・・・ 言い残して 若は去っていく。。。 この距離感がいい。

 飲みながら鯖をしゃぶしゃぶして食べる・・1..2..3..4..もう待ちきれない。 いっちゃえ。
次は1..2..3...4..5..6よし・・・ ひときれひときれしゃぶしゃぶする時間を微妙に変えて、わずかなしゃぶしゃぶ時間の違いで生じる歯応えや風味の違いを感じるのもまた楽しい。もう ザクザク食べてしまう。 あっさりしてていくらでも行ける感じだ。

 あっという間に鯖しゃぶを食べ終わる頃に次の大皿が出てくる。 きた~鮟鱇だ!
もう20年以上前、大洗で初めて鮟鱇のどぶ鍋?を食べたが、なぜかあまりおいしいという記憶はなかった。 それが故に鮟鱇鍋と聞いても足が向かなかったが、ここのあんこう鍋は非常にあっさりとした味付け(いやかすかな昆布だしくらい)で淡泊な鮟鱇を香りのいいポン酢で食べられて目からうろこのうまさだった。 まずは、鮟鱇の身・・・うんうまい。淡泊だけどしっかりした歯応えの身をポン酢の香りが包んで・・・野菜もネギが甘くておいしい。。。そして アン肝・・・ふるふるな淡いオレンジのやつを崩さないように引き上げてポン酢で食べると・・・・・
いや~~~酒が進む! この海のフォアグラは最高だ。

 鮟鱇も身だけでなく、ふるふるなゼラチンや骨身(これをしゃぶるのもまたいい)アン肝と楽しみ、野菜もあっという間に腹の中へ・・・・いや~~堪能したなぁと一息ついていると、きた~~~ 真打、オヤジさんがどんぶり飯を持って登場。。。‘今日のはねぇ、仙台沖で上がった鮟鱇だったのよ。どうだった?‘ サイコーでしたというと、‘もうぼちぼち終わりだからね~。今年はもう来ないのかと思ってたよ。‘。。。すみません来るの遅れまして・・・・ このオヤジさんが作ってくれるのが、雑炊。 鍋をきれいに汁だけにして、ごはんをあける。
ふつふつふつふつ・・・・ いい感じでごはんに鍋のうまみがしみ込んでいく感じを幸せな気持ちで眺める。。。

 このオヤジさん、もう齢70とは思えない元気さ。そして顔はつやっつや! 本当に元気で気のいい方だ。。。
 会話を楽しんでると、オヤジの目がきらーん。 さっと火を消して、卵を溶きいれてくれる。
 あいどうぞ~~やってくれ~~。。。 このお店の人たちは、話の引き際が絶妙だ。決して長居しないですぅ~~っとタイミングよく引いていく。長いキャリアの賜物なんだろうなぁ。

 卵が絶妙にからんだ雑炊は至福の味。 最初はそのまま、途中からは例の魔法のポン酢をすこし垂らして・・・


 ご馳走様でした。 本当に庶民の冬の定番、鯖しゃぶと鮟鱇鍋を堪能した。 なぜ庶民のかって?  これだけ堪能して漱石さん4枚っつったら・・・破格でしょ。
いつまでも楽しみたい冬のレギュラーメンバーだ。。。。。