長く福祉施設に勤められ、現在は宅老所よりあいの代表をされている、

村瀬孝生先生の”認知症をつくっているのは誰なのか”を読みました。

 

私が日頃、高齢者施設で働く中で感じている違和感がいっぱい書いてあって

やっぱり私の感覚は間違っていない、と思いました。

 

「認知機能が低下した状態」が認知症です。
認知症を引き起こす原因疾患は70種類もあると言われますが、
これらを正確に鑑別できる医者はめったにいません。
鑑別できなくても「認知症です」と言えば、抗認知症薬が投与できてしまいます。
抗認知症薬には副作用があり、興奮や徘徊といった副作用が出たら、
それを抑えるために向精神薬が投与されます。
そのことによって、お年寄りは本物の認知症にされてしまうのです。
本書から「認知症を恐がる必要はない」
「認知症を病気にしない暮らしがある」ことを学んでいただきたいと思います。

 

高齢者施設で、

『便が出そうなんです、トイレに連れてってください』

という利用者さんに

『おむつだから大丈夫、その中でして』

と言う介護職員とナース。

 

拘縮で身体が固まっているからと

硬い冷たい板のベッドに寝かせてお風呂に入れる機械浴。

 

自分で食べさせていたら遅くなるからと

お粥とおかずを混ぜて

どんどん口に放り込む食事介助。

 

施設に入所したばかりで

家に帰りたい、と脱走を試みた利用者を

問題行動ありと決めつけ

ここではみられないと他の施設に送る相談員。

 

介護保険は自立支援だからと、

杖一本でヨロヨロ危なそうに歩いている人に

自分で頑張って、と手を貸さない。

 

先日、この杖一本でゆっくり歩くWさんが

私の顔を見てニコーっとしました。

『もう顔覚えたで、顔見知りっていいな、

ちょっと手貸してくれへんか』

 

私が手を差し出すと、

『いつもじゃなくていいで、

でもちょっと時間が空いたら

また手伝ってな』と。

 

ちゃんとわかってる。

自分の状態も職員の忙しさも

ちゃんとわかってる。

 

 

認知症の人を1人の人間として尊重し、その本人の立場に立って行うケア、

「パーソン・センタード・ケア」

現在の日本の介護現場で主流となりつつある認知症介護の考え方です。

 

これは、

認知症でもそうでなくても

利用者さんでも介護職員でも

老いても若くても

全ての人に必要で、

全ての人が求めている在り方だなと思います。