気がつくと真っ暗な山道をひたすら登っていた
茂みをかき分け、月明かりもほとんど届かないような道無き道をただひたすらに登っていた
「追いつかれてはいけない」
何に追われているのかもわからず、ただ何かに追われているような、止まったら暗闇に飲まれてしまいそうな恐怖で足を止めることができなかった
かき分けた草の感触や自分の息づかい、夜中の暗闇がそれまで見たどんな夢よりもリアルだった、もちろん恐怖心も
しばらく逃げているとポツンと寺のような建物に行き当たった、昔話に出てくるようなボロボロで小さな建物だった。
隠れられる
もうその考えしかなかった
中に入るとすぐに戸を閉めて隅にうずくまった、小さくなって後ろから追いかけてきていた「何か」が通り過ぎるのを期待した
真っ暗で無音の空間
それでも「何か」がまっすぐに建物に向かってくるのがわかってしまう
音もないのに、何が追ってくるかもわからないのに、確実に近づいてくるその「何か」が怖くてガタガタ震えが止まらなくなった
そして気づいたら閉めた戸の向こうに「何か」が居た
伝わる気配で狂ってしまいそうだった。
バッと目を開く
暗い部屋、隣から心電図の光が薄く見える
首には固定のコルセット(あとでわかるがカラーというらしい)
さっきまで草をかき分けた腕は動かないし、足はついてるかどうかすら自分ではわからなかった
まだ夜明け前らしい、頭の上では付き添いの親の寝息が聞こえる
夢と同じように暗い場所だったが、それだけで生き返るように安心した
が、今度は本当に逃げられない現実があった。
感覚のなくなった足や、片方は折れている腕
それでも眠ったらまたあの山道を登るかもしれないと思うと目を閉じることができなかった
ただただ暗い天井が夜明けで青くなっていくのを眺めていた
何も先の見えない朝がきた