【作品情報】


135回直木賞候補となった同名小説を映画化。『ウォーターボーイズ』の妻夫木聡が主演した。



【あらすじ】


週刊誌記者の田中(妻夫木聡)は1年前に世間を震撼させたエリートサラリーマン田向浩樹(小出恵介)一家殺人事件の取材で、彼や妻である友希恵(松本若菜)の知人たちにインタビューしていく。彼らの証言から浮かび上がってきたのは、理想的と思われた夫婦の実像だった。一方、田中の妹である光子(満島ひかり)が育児放棄の疑いで逮捕されるが、性的虐待を受けていた過去から精神鑑定を受けることとなる。



【感想】


「映像化不可能」のキャッチコピーが大袈裟でない原作ですが、第14回アカデミー賞脚本賞を受賞した『市民ケーン』のように記者が死者の知人たちにインタビューしていく構成を巧みに利用し、同一人物について語っているのに人によって見え方が異なることを映像や豪華キャストたちの名演(ブレイク前の中村倫也や松本まりからが抜擢されていることからもキャスティングディレクターの手腕が窺えます)で見事に表現した映画で、後に傑作『蜜蜂と遠雷』や『Arc アーク』で驚異的な映像表現を見せる石川慶監督の登場を映画界に知らしめた鮮烈な長編デビュー作です。死人に口なしと己に都合よく語る知人たちの愚かさが、精神鑑定の後に誰もいなくなった部屋で光子がつぶやく過去の虚しさを際立たせていました。