世界でいちばん布団のなかがすきだ。ベッドじゃなくてお布団がいい。毛布はあんまりすきじゃないから真ん中に敷いて、どんなに寒くても足裏は冷やして眠る。夏も冬も。寒い日に布団に潜り込んだときの何とも言えないつめたさ、同化していくあたたかさは子供の頃を思い起こさせる。両親はどちらともわたしが寝ていると頭を撫でてくる人だった。それはわたしが大きくなっても。父の手はあたたかくて母の手はつめたかった。まだ貧乏でボロアパートに住んでた頃、つめたい布団のなかで微睡んでいるときの、隣の部屋からぼそぼそと聞こえる両親の声がすきだった。雨の音みたいだった。わたしが死んでも、もう二度と戻らないんだろうな。どちらにしても、子供の頃の記憶がいちばんあたたかかったよ。誰にとっても、きっと。