以下、中野さんのWIKIより引用先→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%87%8E%E5%89%9B%E5%BF%97#TPP.E5.95.8F.E9.A1.8C
TPP問題環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加は日本の国益にならないとする[74][75]。国内市場の大きい大国である米国だけが主導権をもってルールの策定を行えることに加えて安全保障上の問題から日本は米国に対して弱い立場にあるため日本に有利なルール策定はより困難で米国に妥協するしかないことその米国がドル安により輸出振興政策を志向すればTPPに参加しても日本の輸出は伸びない一方で関税という防波堤を失えば日本の農業は壊滅的な打撃を受けることISD条項に基づく訴訟によって国民皆保険制度など日本の社会制度が変えられてしまう恐れがあること安い外国の製品が輸入されるようになったことはデフレ促進の要因であり、TPPに参加すれば価格の低い商品が今以上に輸入されてデフレが促進されることなどを理由として挙げている。[76][77]。内閣官房の資料「包括的経済連携に関する検討状況」から、政府が考えるTPPの意義は経済効果の意義と外交戦略の意義の二つに分けられるとし、両者について分析を行っている。外交戦略の意義としては、TPP交渉参加国の全GDPのうち、日米だけで約90%以上を占め、日本が参加した場合は実質的に日米FTAであり、TPP交渉参加国に日本を加えた10カ国の中で、日本が輸出できる市場は実質的にアメリカだけであるとする。中国と韓国がTPPに加入する可能性については、中国は自由貿易協定以前の段階で米中関係はつかえており、また自国の利益を利己的に追及するために為替操作している国が、高度に進んだ自由貿易のルールであるTPPに参加するとは思えないとする。また、韓国は複数国間による急進的な自由貿易協定であるTPPよりも、二国間で交渉するFTAの方が有利であると考えており、韓国もTPPには参加しないと考えた方がいいとする。「『国を開く』という強い意志を示すメッセージ効果」があるとされるが、そのようなメッセージをアピールすることは、TPP交渉における日本の選択の幅を著しく狭めてしまうとする。中国と韓国はTPPに参加する可能性は低いため、TPPはアジア太平洋の新たな地域経済統合としての枠組みには発展せず、同地域の実質的基本ルールにはならないとする。多数派工作は外交戦略の初歩であり、国際ルールの策定の場では、利害や国内事情を共有する国と連携しなければ交渉は有利に進まないが、TPP交渉参加国の中には、日本と同じような利害や国内事情を有する国や、連携できそうな国は全く見当たらない。そのため、日本がTPPに参加して自国に有利になるようにルール作りを主導できる可能性はほとんどなく、TPPのルール作りは、参加各国の経済構造から生まれた政治力学によって、アメリカ主導で進むように仕組まれているとする。TPPで日本に有利なルールを作ろうとした場合、アメリカと対立することは避けられないが、現在の日本はアメリカに妥協せず主張を押し通せるポジションになく、TPPにおいて日本がアメリカとともに経済統合の枠組み作りを主導することなどできないとする。日本はTPPのルール作りで主導的役割を果たすことができないため、日本の国際的な影響力や交渉力は全く強化されないどころか、TPPへ参加することで、EPAやFTAの交渉との矛盾が生じてしまい、TPP以外の貿易交渉において、日本の交渉範囲を狭め、選択肢を極端に減らしてしまい、むしろ日本の国際的な影響力や交渉力は低下の方向に向かうことを指摘している[78]。同資料では、TPPに関する経済効果の試算がなされているが、試算は様々な前提を置いた上で弾き出された参考値であり、現実を必ずしも反映しておらず、試算結果を政策の意思決定に用いようとする場合は、しばしば一定の結論を誘導しようとする意図が働くので、試算結果にバイアスがかかるのが一般的であるとする。さらに、試算がデフレや通貨という重大な要素を考慮していないのではないか、という点を指摘している。TPPにおける経済産業省の基本的な関心は、欧米中の市場において、韓国との競争に勝ち残るということの一点に集中しており、TPPとは韓国との国際競争に勝つための手段であるとする。しかし、グローバル化した世界において、国際競争力には、関税よりも通貨の影響が大きく、韓国企業の国際競争力の原因も通貨にあるとする。また、EUやアメリカの不況は深刻化・長期化しており、高い失業率や需要縮小に悩んでいるため、日韓ともに欧米市場で輸出が伸ばせない可能性も十分にあるとする。このような世界市場の情勢の中で、韓国が輸出を伸ばそうと努力しているのは、韓国がGDPの4割以上を輸出に依存する外需依存国だからであるが、日本はGDPに占める輸出の割合の比率は2割にも満たないという内需大国であり、韓国とは事情が異なるとする。さらに、経済産業省の見立てによれば、日本がTPPへの参加を表明すれば、念願のEUとのFTA交渉への道がひらけるとし、TPPはEUとのFTA交渉の手段に過ぎないとしている[79]。TPPにおけるアメリカの狙いは次のようなものだとしている。日本をTPPに誘い込み、TPP交渉はその参加国がアメリカの味方になるようになっており、アメリカ主導でルールが形成できる場である。アメリカはTPPに日本を誘い込んだ上で、多数派工作をして日本を包囲する。アメリカは日本の関税の引き下げと同時に、自国の関税の引き下げもするが、ドル安に誘導することにより、日本企業の輸出競争力を奪い、あるいは日本企業のアメリカでの現地生産を促し、自国の雇用を守る。アメリカにとって関税とは、国内市場を保護するためのディフェンスではなく、日本の農業関税というディフェンスを突破するためのフェイントに過ぎない。このようにしてアメリカは、日本に輸出の恩恵を与えず、国内の雇用も失わずして、日本の農産品市場を一方的に収奪することができるとする[80]。「TPPに参加するための農業構造改革」はデフレをさらに悪化させるので問題があり、たとえ効率性を上げるための改革に着手するにせよ、デフレを悪化せさないためにも、日本経済全体がデフレを本格的に脱却してからにすべきだとしている。また、現在ある自由貿易の国際ルールや主流派経済学は、貿易自由化がデフレを悪化させるという事態を考慮に入れておらず、「デフレが懸念される場合、関税を上げてよい」という柔軟な国際ルールはできそうにもないとしている。さらにTPPの農業輸出産業論は世界大不況という事態を全く考慮に入れていないのが難点であり、TPP参加による農業対策も、財政が厳しいという理由で予算が絞られている上、WTOのルールにも縛られそうになっているため、空手形に終わる可能性が高いとしている[81]。TPPに参加するか否かは自由貿易の程度の問題であり、自由貿易か鎖国かという問題ではないと指摘し、TPPへの不参加は戦後の自由貿易体制を否定するものでもなければ、日米同盟を否定するものでもないとする。また、軍事的に不安定な関係にある国同士が自由貿易を行うことは難しいため、安全保障は自由貿易の基盤として必要だとする一方、自由貿易が安全保障の基盤になるかは議論の余地があり、貿易自由化が進めば進むほど、安全保障がより強固になるとは限らないとする。それどころか、急進的な貿易自由化は世界を危険にさらし、対外的に攻撃的なナショナリズムを生みだす原因になるということは、世界の有力な知識人の間には昔からよく知られており、TPPによる急進的な貿易自由化で日本社会が不安定になり、結果として「鬱屈した反米ナショナリズム」が噴き上がる可能性すらあるとする[82]。「関税を撤廃し自由に取引すれば、その結果については全てフェアだ」という主張に対しては、売り手と買い手で合意した値段が常にフェアであるとはかぎらず、市場で取引される値段とは違う「フェアな価格」があると反論する。これが普通の価格という社会的な合意、常識的な合意があり、それから逸脱した価格には人間は不快感や不公平感を覚えるとする[83]。