日銀は10日開いた金融政策決定会合で、政策金利を0~0.1%とするゼロ金利政策の維持を決め、追加金融緩和の実施を見送った。米国の雇用の悪化や、再び円高が進む中での見送りには、「政治圧力に負けない姿勢を示すつもりだったのでは」との見方もある。ただ、政治や市場の緩和圧力は増しており、27日の次回会合は追加緩和に追い込まれる公算が大きい。



 「日本経済は、持ち直しに向かう動きがみられる」。会合後の会見で日銀の白川方明総裁はこう述べ、追加緩和を打ち出さなければならない経済情勢の悪化はみられないと説明した。



 だが、市場からは「少額でも、資産買い入れ基金増額などの追加緩和をすべきだった」(民間エコノミスト)との声が上がる。足元で、落ち着きを取り戻していた国内や海外の金融市場の潮目が変わりつつあり、悪化が手遅れになりかねないからだ。



 米国の3月の雇用統計は、非農業部門の就業者数の伸びが市場予想を大幅に下回り、欧州でも今月4日のスペイン国債入札が不調で、南欧諸国の金利が上昇した。国内も、3月の企業短期経済観測(短観)で大企業製造業の業況判断が市場予測を下回った。



 投資家はリスク回避姿勢を強め、2月14日の追加緩和後、1万円台まで上昇した日経平均は下落。1ドル=84円台まで戻った円相場も、81円台前半まで上昇している。



 こうした状況での日銀の追加緩和見送りに対し、市場関係者は「圧力を思わせる出来事が相次ぎ、『日銀は屈しない』姿勢を示す必要があった」(第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミスト)と指摘する。



 今月5日の参院では、日銀審議委員の後任にBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストをあてる人事案が、「金融緩和に消極的」との理由から野党の反対で否決された。9日には、政府が国家戦略会議に、日銀の物価政策と切り離せないデフレ脱却を検討する閣僚会合を新設し、オブザーバーとして白川総裁を「呼びつける」(政府関係者)方針を発表した。



 デフレ脱却や円高修正で「後手に回っている」と批判されてきた白川総裁に対し、政府や市場の追加緩和要請が強まるのは必至。次回会合で示す24、25年度物価見通しも、日銀が「物価安定のめど」とする「1%」に届かない公算で、「追加緩和は避けられない」(金融筋)状況だ。



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