この頃、兄が結婚する事になった。
奥さんになる人を、何度か家に連れてきて、皆でご飯を食べたりした。
この頃、僕は15歳位、ってことは兄は29歳位。
僕が悪そうな格好をしているのを見たり、
学校でタバコが見つかって親を呼び出された話を聞いた時、
兄は、自分の会社での経験からか「タバコ吸ってもいいけど、勉強はしろよ」と言った。
学歴で、会社での扱いが全然違う、と言うような話を聞かされ、
親よりも兄の言う事は素直に聞く僕は、勉強しなきゃという気になったものだ。
そして結婚式の、どれくらい前だろうか、
母が、夜、僕の部屋に来て、
「隆志、これ見なさい。」
と、何枚かの古い写真を持ってきた。
母「これ誰かわかる?」
僕「何これ?」
白黒のような古い写真だ。
子供が写っている。
母「これ、兄ちゃんよ」
僕「!!!」
兄の、子供の頃の写真だった。
小学校の運動会で走っている姿や、中学での集合写真など。
初めて見た。
そうだ、考えてみると、兄の子供の頃の写真というのを、見た事が無かった。
「へー!!」
ちょっとテンションが上がった。
確かに兄の面影がある。
不思議な感覚だった。
僕が物心ついた時に、兄はもう高校生くらい。
僕は大きな兄しか知らない。
そこには、見た事の無い無邪気な子供の兄の姿があった。
その中に一枚、女の人と子供の兄が写っている写真があった。
その写真を見ている時に、母が言った。
母「それ、兄ちゃんのお母さんよ。」
「・・・・・・。」
事が飲み込めない。
母「兄ちゃんは、小さい頃お母さんが亡くなってね、
その後、お父さんと私が結婚して、隆志が生まれたの。」
「・・・・・・。」
父の最初の奥さん、つまり兄の本当のお母さんは、兄が小学生くらいの頃
病気で亡くなり、その後父は僕の母と再婚、そして僕が生まれたというのだ。
つまり僕と兄は、異母兄弟、腹違いというやつだ。
真っ白だ。
頭の中が真っ白になった。
「ふ、ふ~ん・・・。」
とは、言ってみたものの・・
母が色々説明をしているが、全く頭に入ってこない。
そして、
急に僕の中の何かが弾けた。
僕「出て行け!!!」
とにかく部屋から母を追い出した。
一人になりたかった。
「母さんと兄ちゃんは、他人なんだ・・。」