仁川空港には、予定通り17時40分ごろに着陸。もうすっかり日も暮れていた。

今回の旅はHISのフライト&ホテルプランだった。ホテルがどこになるのか気になって

いたが、なんと高尺スカイドームの近く。ライブ参戦なら便利な場所だが、空港から電車を2回乗り換えて、一時間半近くかかってしまう。そこからソウル駅まで30分。

時間の有効利用をするため、ホテルにチェックインせず、そのまま東大門に向かうことにした。しかしこれがまた失敗だった。

 

初めての渡韓は長女と一緒だった。ガイドブックやSNSで行きたい所を調べて、半日は

東大門で買い物をするつもりにしていた。ところが行ってみると、思うように買いたいものが見つからない。へとへとになるまで歩き回って、これといって何も買えず、時間ばかり費やしてしまった。その時に、もう今後東大門には行かなくていい、と言っていたにもかかわらず、前回はホテルを東大門でとり、大失敗をした。

やはり私は東大門に縁がない、そう思っていた。それなのに、フライトが遅い時間だったため、その時間から買い物するなら、やはり眠らない街東大門しかない、と思い、大中小のキャリーを引きずりながら東大門にやってきた。

 

ここまでは電車に乗り地下を通り、外の空気に触れていなかった。

東大門歴史文化公園で電車を降り、コインロッカーを探して地上に出た。

一瞬凍り付いた。寒い。天気予報では、私たちがソウルに向かう日から気温が氷点下になるとのことだった。いきなり冷凍庫に入ったような冷たさだった。

あらかじめ調べておいたコインロッカーにやってきた。大型キャリーを入れられるロッカーが空いていなければおしまいだ。幸い空いていた。タッチパネルに使いたいロッカーの番号を入れ、任意の暗証番号を入力。次に進むとなんと電話番号入力画面が出てきた。しかも初めの「010-」がすでに指定されている。韓国の携帯番号しか入力できない。最近はeSIMという便利なものがあり、それを使うと韓国で使える電話番号がついてくる。前回SIMカードを購入してうまく設定できず、ネットなしで行動するはめになってしまったので、今回はWi-Fiをレンタルしていた。

万事休す。

 

電話番号のいらないコインロッカーを検索して探しに行った。

これがまた見つからない。やっと見つけた所は、もう閉店時間なのでコインロッカーも使えないと言われた。すでに寒空の下、一時間以上歩きっていた。娘の顔が曇っている。まずい。ここは一旦チキンを食べに行こう。

チキン屋さんはすぐに見つかった。ドラマでよく見る、サクサクのチキン。

不思議なことに胸肉がぱさぱさしていない。ケンタッキーの胸肉はぱさぱさすぎて喉を通りにくい。衣に秘密があるのか、揚げ方なのか。めちゃくちゃ美味しかった。

一緒に頼んだチーズボールも、糸引くチーズが美味しかった。

 

荷物はあきらめて、キャリーをゴロゴロ引きながら買い物を続けた。

二日目からの服は現地調達、と言っていたので、着替えは何も持ってきていない。

ここで気に入った服が買えるはずだった。しかしこれがなかなか見つからない。

トレンドなのか、そもそも若者の店なので、丈の短い服が多い。娘なら着られそうなのに、好みじゃないのか立ち止まって見ようともしない。

最後に入ったテナントビルは個人販売はほとんどしておらず、業者向けの卸店のようだった。たくさんの大きな袋が店先に並んでいて、行先の店名が書かれてある。

だめだ、これ以上服探しはできない。東大門にて撃沈。

 

終電をのがすといけないので、諦めてホテルに向かうことにした。

電車はまだあるようだが、なかなかやってこない。20分ほどしてようやく入ってきた電車に乗り、さっそく疲れてウトウトしていた。

ホテルの最寄り駅まであと三つの所で、乗客が全員降りていった。みんなこの辺りにたくさん住んでいるんだな、と思いながら座っていると、向こうからおじさんが近づいて来て、「降りな、降りな。ここでおしまいやで。」と私たちに向かって言った。

え?ここでおしましい?いや、待って、こんなとこで降ろされても。

 

私たちは慌てて電車を降りた。改札を出て外を見ると、終電客を拾うためにタクシーが何台か停まっている。韓国でタクシーには乗ったことがない。どうしよう。オロオロしていると、道の向こう側に停まっていたタクシーから運転手が降りて近づいてきた。

「どこのホテル?」

「ベルノイホテル」

「ああ、ベルノイ。んー2万でいいわ。」

ホテルまで2万ウォンで行くと言っているようだ。駅3つの距離でだいたい2,000円が

適正なのかどうか頭が回らない。それでも、もうそれしか手がない。

運転手を追って道を渡り、そのタクシーに乗り込んだ。すでに客が二人乗っており、

一人は助手席に乗って、と言われたので、娘を後部座席に乗せ、私は助手席に回った。

ここで私はうっかり日本の車の感覚で、左側に回った。すると運転手が、違う違うと笑って右側に促した。そうだ、ここは左ハンドル右側通行だった。

 

韓国のバスもタクシーも、運転の荒さが有名だ。以前バスに乗った時も、こんな大きな車体がスピードを出して、バンバン車線変更をするのを見て怖くなったものだ。

ところが、タクシーはその数倍恐ろしかった。ここはサーキットか、と言いたくなるほど猛スピードで走る。ブレーキを踏みたい一心で、私は右足で車の床を踏み込んでいた。生きた心地のしない10分ほどを味わい、無事にホテルに着いた。

 

ホテルベルノイソウルは、わりと大きくて立派なホテルだった。口コミでは、日本語のできるスタッフがいる時といない時がある、と書いてあったが、応対してくれたフロントの女性は日本語が話せた。部屋のカードと、注意事項を書いた紙をもらい、部屋に向かった。16階にあった。

ウロウロ歩き疲れたのと、またしても幸先の悪いスタートだった、と気持ちも沈んでしまい、シャワーも浴びずに寝てしまった。