おはようございます!

理学療法士の權藤大介です。
 
 
 
現場でアスリートやアーティストから栄養に関する質問が出る事は少なくありません。
 
今回は栄養の概論と糖質オフについてお話しさせていただきます。 
 
 
まず、三大栄養素である糖質(炭水化物)・脂質(脂肪)・タンパク質について説明します。
 
なぜ三大栄養素と呼ばれるのかというと、ビタミンやミネラルなどと比べると、カロリーが高い、すなわちエネルギーを多く含んでいるからです。
具体的には1gあたり糖質4kcal、脂質9kcal、タンパク質4kcalで、食品のパッケージの裏に書かれてあるカロリーは3つの栄養素がどの程度含まれているかで計算されます。
 
次にそれぞれの役割についてです。
①糖質
 生命維持や活動に必要なエネルギーを素早く作ります。特に脳や脊髄は血中グルコース(血糖)を大量に使うため、ある程度の量は欠かせません。消費されない分は肝臓や筋、脂肪に蓄えられます。
 
②脂質
 身体には60兆個もの細胞があり、その細胞一つ一つの膜を形成し細胞が破壊されるのを防いでいます。また自律神経のコントロールに必要なホルモンの原料です。ビタミンには脂肪に溶けやすい物もあり、ビタミン吸収にも役立っています。エネルギーに変換するには時間がかかりますが、一番高エネルギーです。エネルギー貯蔵庫となる脂肪を生成します。
 
③タンパク質
 身体の全細胞の原料です。細胞を増やし、栄養を取り込んで新陳代謝を起こし、免疫機能やホルモンを調整して環境の変化に対応させます。細胞の原料として使われるため、糖質と同じカロリーですが、エネルギーとしては殆ど使われません。
 
こう見ると糖質が特別高カロリーではないのが分かります。
ではなぜ、ダイエット=糖質オフなのか?
 
それは、糖質の変化するスピードが理由です!
 
下のグラフを見てもらうとわかりやすいですが、糖質を多く含んでいる小麦粉や砂糖は摂取後30分~1時間以内に血糖値に影響しますが、脂質を多く含むバターやタンパク質が多い卵は何時間経ってもほとんど変化が現れません。
糖尿病ネットワークより引用
 
血糖値が高くなると、インスリンという血糖値を下げるホルモンが働いて、肝臓や筋肉、脂肪にグルコースが貯蔵されます。
逆に運動をして血糖値が下がると、まず筋肉に貯蔵されたグルコースがエネルギーとして使われます。
しかしすぐに少なくなってしまうので、脂肪からグルコースを取り出してエネルギーとして使用します。
この脂肪から取り出すまでの時間がおよそ20分程度なので、以前は「有酸素運動は20分」と言われていました。
現在は、適切な運動強度であれば10分程度で効果があるとされています。
 
以上のように素早くエネルギーとなる糖質が多いと脂肪を使うことがないため、脂肪を使わせるためには糖質オフをした方が痩せやすいのです。
 
しかし、これは短期的なダイエット(減量)の話。
アスリートやアーティストの方はパフォーマンスを維持するためにはむやみに糖質オフをしてはいけません!
 
筋肉のグルコースが無くなると血糖値の安定のために脂肪が使われますが、筋肉内のグルコースを増やすために、筋肉のタンパク質が分解されてしまいます。そうなるとトレーニングの効果が半減してしまいます。
また筋肉が減ってしまうと代謝量が落ちてしまうので、長期的なダイエットにも不向きです。
筋肉の分解を抑制するためにも、糖質でエネルギーを補給しなければなりません。
 
筋肉をつけたい方は、運動後に体重1kgあたり0.25~0.3gのタンパク質と1~1.2gの糖質が必要とされています。
【例】
①体重60kgのアスリートの場合
・タンパク質:15~25g
・糖質:60g(小さいおにぎり2個程度)
②体重60kgで減量中の場合
・タンパク質:10g程度
・糖質:15~25g(バナナ1本分)
 
また、試合や本番前にエネルギー補給としてバナナやパスタなどから糖質を補給する方も多いですが、普段糖質を制限していると大変危険です。
習慣にない糖質が身体に入り込んでくるため、血糖値が急激に上昇します。急激な上昇に対しインスリンが大量に放出されるため、今度は血糖値が急激に下がります。
血糖値が下がれば、発汗や手足の震え吐き気などの低血糖症状が起こる可能性があります。
 
 
 
糖質の代わりにタンパク質を大量に摂取すれば、同程度のカロリーを確保できます。
しかしタンパク質を大量に摂取すると、身体にとって毒となる窒素やアンモニアが多くなり、内臓がダメージを受けてしまいます。
内臓が傷つけば、エネルギーの吸収に影響が出てしまいますので、バランスの良い食事を摂取した方が良いのです。
 
 
 
最後に。
今週から始まりますロシアW杯に、28年ぶりにエジプトが出場します。
今回からエジプトは選手一人一人の遺伝子情報をもとにトレーニング・休息・栄養を考えているとの事です。
トレーナーとしては、エジプトの活躍にも注目です!
 
近い将来、遺伝子情報がもっと身近なものになれば、より細かな健康管理ができるようになるかもしれません。
 
 
 
それまでは、また!