会社にも先生にも

あの子にも友達にも内緒で

僕の夏は小さな旅で始まる

朝食は潰れたサンドイッチ

缶ビールはオヤツに入らないので

カバンに忍ばせてある


昨日の夜の冒険に敗れた僕は

今年こそはと始発の身延戦に滑り込んだ

睡眠時間二時間ちょい

まあいい

ただ海に会いにいくだけの各駅停車

事故って免許がお召しになった

あの夏の鬱屈

どうしようもなく煮詰まっていたあの頃

電車で直近まで行ける

海水浴場をググった僕は

宇佐美という聞き覚えのない駅を告げられる

それ以来の付き合いの勝手知ったる

小さな冒険なのだ


早朝からビールでキメタ僕に見える

誰かの日常が面白くて

まだ蝉の鳴き始めない季節の突端に浮かんでみる

次に麦色の陶酔を入手出来るのは

乗り換えの富士駅のホームにある

立ち食い蕎麦屋だから

今朝は3本も忍ばせてあるので

いい気分のほろ酔い人でいられるだろう

トイレ直近の席もゲット出来たし

ああ

みんなおはよう

誰もが夏に浮かれる前の

僕がかつて亜夏と名付けたこの季節の

この肉体の中だけの小宇宙の

浮かれ騒ぎにお付き合いくださいますか?


続編が書けるほど

言語野の酩酊が進んでいなければの話

なんだけどね


気掛かりは微妙な空と気温

今 車窓から見える空は

贔屓目に見ても曇り空

気温もそれほど高くはなりそうもない


もっと熱く

 うんざりするほど夏みたいな

そんなのが望みだけど

相手がどうこようと

臨機応変に即興で応戦するのが僕のスタイルだから

つまんない時間の横顔だって

奇妙に描いてみせるさ


電車の車輪とレールが奏でる

たまに変拍子になるビートがカッコいいよね

取り敢えず第一部は完!


だって尿意が!