実に6ヶ月余りだろうか

余り記憶にはないが

(おいくらですか?

   はじめまして)


出会い系に自分語りはいらない

 探し物が何なのかわからないまま

彷徨い続ける猫背が

睾丸の内圧に屈し指先を滑らせる

綺麗すぎるアイコンを晒す輩は

明らかにセミプロないし業者である

心などないテキストの向こう側へ

冷やかしとも本気ともつかないメッセージを送る

SNS界隈では詩人を名乗るこの男の

なんと味気ない求愛の言葉か

それでも一応倒置形ではある


欲しがっているものから一番遠いところを

人ごとのように葛藤もなく求めてしまう

綺麗な人を 

優しい子を

コストパフォーマンスと


心を愛撫したいと彷徨う指先


一番希薄な場所で 探したことにして

見つからないと嘆いてみせる


誰にも迷惑はかけてない

背徳などない

ひとりではしゃぎ

勝手に黄昏るだけだ

借金はないが貯金もない

破綻しないギリギリを狂い続けている


老後の孤独も困窮も自己責任だ

母を送れば

僕の命としての役目は終わる


なぜこんな風になっちまったかなんて

陳腐な不幸自慢は性に合わない

どうしようもない自己評価の低さの源は

かなり後に気付いたのだが

理解できても治せないことってあるのだ

幼少期の醜く価値のない命であるとの

淡々とした刷り込みを

疑わず受け入れた幼児は

青春初期に失った左目の光と

斜視気味になった眼球を気にする

うつむきがちな少年時代を経て

道化を演じていれば

変わった奴をまとっていれば

愛されないことの言い訳になると

愛されたいを

死に物狂いで愛されたいを噛み殺して生きてきた


客観的にみれば 愛される可能性は

ゼロではないと想像できるけれど

愛される自分をイメージできない

僕の中に

(愛されるはずのない自分)

が鎧をまとい凝り固まっている


そいつが恐らくは歌を歌わせて

詩作などさせているのだが

愛におびえたまま振り回す手に絡みつくのは

金で買えるインスタントな人肌くらいのものなのだ


わかることは

理解することは悟ることへの第一歩ではあるけれど

二歩目を踏み出せる人を僕はほとんど見出せない


僕はすでに余生に差し掛かったこの命を諦めてしまっているので

精神的自傷としての願望の発散に

無駄なブレーキなんてかけるのを

とうの昔にやめてしまっていたのだ

これはある意味

悟れない

悟らない

という

悟りの境地なのかもしれない


うら若き乙女への

倒置形の短いオファーに反応などあるわけもなく

だが悪戯心が疼き 手当たり次第有料の電子手紙を送りまくりたくなる夜もある

衝動を鎮火させるためだけではなく

こころがその深層に押し込めていた

疼きをこころで愛撫して欲しいと駄々をこねるような夜が


お綺麗ですね

アイドルさんですか?


そんな酔人の戯言に 数日のタイムラグを経て返信が届いた


ありがとう

アイドルじゃありませんよ笑


思えばそこから

ボクラという物語は

始まってしまったのだ