副題は「北海道警悪徳刑事の告白」。
2002年、覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、その後の公判で、1993年、防犯部銃器対策室係長に就任以降の自らが関わった拳銃押収に絡む不正を告白する。
詳しくは本書(講談社刊)を読んでいただくとして、いわば「やらせ」で拳銃押収の数合わせをしたこと。
あるいは、押収実績を上げるために組織ぐるみで、覚せい剤の密輸を主導したこと、その過程で覚せい剤を中抜き、自分のスパイに横流ししてカネを得させていたこと。
ついには失意の時、自らも覚せい剤に嵌ってしまった事が赤裸々に語られている。
道警では2004年に、元釧路方面本部長であった、原田宏二氏が道警の裏金問題を告発して話題になったが、その原田氏は当時防犯部の上司であり、この本の解説を巻末に書いている。
病巣は、組織の「ノルマ」とそれを達成するための、道警内や県警との組織間競争。
そして上層部は下部組織間の「面子」を掛けさせて競争を煽る。
売り上げや、獲得件数などのノルマやその達成を競争させる、という手法は、営業組織ではよくあるが、問題は「市民の安全を守る」べき警察組織に相応しいかどうかだろう。
ノルマ達成のために、いかにも引っ掛かり安い所で、いわゆる「ネズミ取り」をやったりするのは、果たして警察組織本来のあり方として正しい事であろうか。
こうした体質が高じて、結果を求める余り、本来警察組織がとってはならないファウルラインがあいまいになってしまう、という悪弊を生む温床になる。
さらに、このノルマで競わせるやり方は、上層部にとっては、一見公平を装いながら、もっとも安易な管理手法である。
つまり、自ら仕事の経験もなく、現場の実態などを知らなくても、素人でも、無能な者でも上司に収まることが出来る手法でもある。
一部の超エリートを頂点とした組織もこれらの問題を生む遠因であろう。