孤独〜はみだし者の夢も希望もない結末

孤独〜はみだし者の夢も希望もない結末

「死にたい」男はある天気のいい朝に独り呟く。「うまく生きられなかった」何もしない、何も起きないままアラフィフとなり、白血病を発症した男は空っぽの人生をふと振り返り始める。

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                     「幕があがる」


夏休み中に引っ越してきた我が家は冬休みを待たずにまた引っ越す事となった。
学区も変わるため転校することも決まった。
2学期最後の3日間ぐらいは新しい家から父親の車で通った。
4ヶ月しかいなかったので特に思い入れはなかったのだが。

なぜ4ヶ月で引っ越す事になったのか。
それは父親の工場長としての面子である。もうただそれ一点。それのみである。

父親が新しく配属された工場では事務系社員が全員、持ち家だったらしい。
中には地元でそこそこ伝統ある雛人形などを扱う玩具屋さんのご子息などもいて、みんな立派な一軒家に住んでいたそうだ。

それなのに工場で一番トップである父親が床に穴が空きまくる、風呂とトイレが一緒の借家では格好がつかない。
正月などに部下が挨拶に来たら。
そんなこんなで急遽しばらく予定がなかった一軒家購入に踏み切ったという事らしい。

いろいろな候補があったらしいが、新しい我が家。初めての持ち家は現在住む借家からかなり遠く離れた小山の上にあった。

最寄駅までは4kmほど。バスは1時間に2〜3本。スーパーや商店はなく、一番近いスーパーでも2kmである。
しかも特別な地区らしく、お店を開いてはいけないという決まりがあり、閑静な住宅街と言えば聞こえがいいがかなり不便な所である。

一応、高級住宅街と冠がついていて確かに、我が家以外の家は結構裕福そうだ。

駅からの道は何通りかあるが、全て長い坂を登らなければいけない。
そのうちのメイン通りとなる道を登り切って、町内の入り口についたら、すぐ左にある階段を降りた所の角の家がが新居であった。

まだ町内にはそれほど家がなく、1〜2割ほどしか埋まっていない。
後の8割はまだ空き地である。

そしてこの町からは日本一高い山をかなりの大きさで見る事ができ、公園からは深海魚で有名になる海が見える。
夕焼けに染まる海と日本一の山は、とても綺麗だった。

新しく通う小学校は町の正面の坂とは反対側を下った所にある。
そして姉が通い兄や自分が通う事になる中学校は遥か遠く、4km先の駅の近くである。
その話はまた後ほど。

家から出て緩い坂を下った先の空き地には自然にできた池があった。
カエルやタガメ、アメンボなどが生息していた。
その奥の林ではカブトムシやクワガタが採れた。

その空き地を右に曲がると公園があり、広場では野球ができた。
公園の下側には小さなダムがあり、ダムの横の林の中には小さな社があって、この周りでもカブトムシやクワガタが採れた。

同じ町内にはまだ家が少ない事もあり小学生の子供は10人もいなかった。

この家には人生で2番目に長く住む。まぁ9年間だけなのだが。
ただ、もしこの家この町に引っ越さなかったら。
最初の候補だった違う町に住んでいたら。
       
                波乱の9年間が幕を開ける。


大雨が続いたある日。
憂鬱な気分を連れ去るように、雨雲が去り太陽の光がいくつかの幕となり輝く。

                「さぁ幕が上がる」