週末に私の娘と、主人の息子ちゃんが我が家に遊びに来てくれました。

 

主人の息子ちゃんはなんとスーツ姿で現れました。

 

今年社会人になった彼に、私がプレゼントしたスーツです。

 

現金のお祝いも実用的で喜ばれるかなと思ったのですが、

 

いろいろ考えて、まだ社会人になったばかりの若い男の子には

 

ちょっと贅沢なのですが、オーダースーツをプレゼントすることにしました。

 

仕立て上がったばかりのスーツを私に見せようと、着てきて

 

くれたのでした。

 



主人と再婚する前、初めて主人が私の実家の父に会いに来る、

 

ということがありました。

 

主人と父は仕事の業種が近かったので、共通の知人も多く

 

お互いに何となく存在を認識してはいたものの、

 

会うのは初めてでした。

 

 

 

当時父は重い病気を患って闘病しており、私が伝えて

 

父の病状を知っていた主人は、会うなら早く行かなくてはならないと

 

思っていたのだと思います。

 

風邪をひいて寝込んでいたのに、解熱剤を飲んで約束の

 

日時に実家に来てくれました。

 

 


初めて会った主人とお互いの仕事の話で盛り上がったあと、

 

帰り際になって突然父が封筒を主人に差し出しました。

 

「先生、ひとなり百万という言葉を知ってますか?

 

仕事が一番充実する40代で、これからますます活躍されるのに、

 

勝負の場所で吊るしのスーツはいけません。

 

これをもって銀座のテーラーに行って、夏用と冬用のスーツを

 

1着づつ誂えてそれを着ていらっしゃい。」

 

そう言って渡された封筒には帯のついたお札が入っていたのです。

 

 

 

当時私たちはお互いに、結婚の話は一切していませんでした。

 

子どもがいるし、住まいも離れているので、仲良く付き合って

 

いければとは思っていましたが、結婚とまでは考えてていなかったのです。

 

それなのに、初めて遊びに行ったガールフレンドの家で、

 

いきなり父親から帯のついたお札を渡されて主人は、驚いたそうです。

 

(そして、これは逃げられない、結婚しなくてはダメなのではと

 

思ったそうです(笑))

 

 

 

ですが父に勧められた通りに、その後主人は銀座のテーラーに通う

 

ようになりました。

 

父に言われた通りに2着のスーツを誂え、その後は自分でも

 

スーツやコートを作るようになりました。

 

 

 

店主に相談しながら生地を選び、襟の形やポケット、ボタンの位置、

 

どれくらい体に沿わせるのか、裏地の生地まで、すべてを決めて、

 

体のサイズを細かく測って2回の仮縫いをして、完成までに数か月かかります。

 

 

 

極上の美しいツヤのある生地の、体にぴったりの手縫いのスーツは

 

主人によく似合い、自信を与えてくれると主人は言います。

 

そしてそういう機会を作ってくれた父にとても感謝していると。

 

 

 

私が再婚することになった時に、父は、相手の子どもも、

 

自分の子どもと同じように大切にできないのであれば

 

結婚はやめなさい、結婚するならお互いの子どもを同じように

 

大切にしなさい、と言いました。

 

 

 

主人と入籍する少し前に、父は亡くなりました。

 

生きていたら、きっと主人の息子ちゃんに会う機会もあって、

 

社会人になる彼に、お祝いをしてくれたと思います。

 

父はいなくなってしまいましたが、父が主人にプレゼントして

 

くれた経験を、私が主人の息子ちゃんにさせてあげたいと思い、

 

銀座の老舗テーラーではなく、もっとカジュアルなお店ですが、

 

オーダースーツをプレゼントしました。

 

 

 

体にぴったりのスーツに身を包んだ息子ちゃんは、

 

いつもよりずいぶん大人っぽく、凛々しく見えました。