2月2日の日記で引越を余儀なくされる事態について触れたが、
http://ameblo.jp/gongnei/entry-10787350717.html
実は大家がなぜ急に手持ち物件を売却してしまったのか、その理由がわかった。恐らく原因は、いま中国中で話題になっている「房産税」問題であろう。

「房産税」とは日本で言うところの「固定資産税」のことで、中国ではこれまで不動産の売買時に課税されることはあっても、保有そのものに課税されることはなかった。それが今年の1月28日から不動産の保有そのものに課税される「房産税」が、まずは上海市と重慶市の2都市で試験的に導入されることになったのである。

もちろん、この「房産税」の施行はなにも突然決まったわけではない。施行の兆候は以前からずっとあったのだ。

中国は周知の通り都市部を中心に不動産バブルが加熱しており、中国政府はかねてからこの不動産の高騰をなんとか食い止めようと、毎年のように金融や不動産関連の規制措置を次々に施行して来た。その中でも昨年度は「史上最も厳しい」と言われる不動産業界への規制がいくつも施行された年であり、年初から「房産税」導入のウワサは流れていた。ただいつ頃、どのように施行されるのかについてはウワサの域を出ず、不動産業界や消費者はやきもきしていたようだ。

この不動産業界への規制強化については、実は昨年3月に開かれた全人代において、温家宝首相が以下のように発言していた。

「金融危機対策以降、中国の不動産市場は大きく発展したが、同時に一部の都市では不動産価格が急騰し、人々は不満を抱いている。このため中央政府は2回に分けて4つの措置と11の措置を講じる。土地を囲い込んで使用しない、投機目的の買い占め、不動産価格のつり上げといった、違法·違規行為を法に依って処罰する。私は現政権の任期内にこの面を徹底的に管理し、不動産市場を健全に発展させ、不動産価格を合理的な水準に保つ決意である」

これは昨年の全人代開幕直前に、温家宝首相が中国政府網と新華網の共同取材を受け、一般のインターネット利用者とオンラインで交流した際の発言の一部だが、私はこの発言を読み、彼の不動産バブル対策への並々ならぬ決意を感じ「今年不動産業界は相当エラい事になるぞ」と内心感じていた。

そして全人代閉幕後の4月、まずは銀行ローン規制が実施された。これは、1つ目の不動産を購入する場合は従来通りだが、2つ目の不動産購入の場合頭金やローン金利が引き上げられ、3つ目の不動産購入の場合は銀行ローンを受け付けられない場合もあるとの内容だった。さらにその都市の市民でない場合、その都市で1年以上働いていた納税証明や保険記録の証明がない場合は不動産ローンを組むことができないというオマケまであった。また半年後の10月にはさらに「住宅は1家庭につき1つしか購入できない」という大胆且つ独裁的な規制を通知。あわせて不動産取引時の課税率もアップさせた。そして今年1月28日、「史上最も厳しい」と言われた2010年度不動産業界規制の総仕上げとも言うべき目玉施策「房産税」の施行がいよいよ開始されたのだ。

この「房産税」の概要は以下の通り。
●適用税率を暫定で0.6%とし、納税義務のある住居の平米あたりの取引価格が前年の新築住居平均価格の2倍以下である場合は、引き下げて暫定で0.4%とする。
●前年の新築住居平均価格は上海市統計局が毎年公布する。
●納税対象は、上海市民が上海市内で新たに購入する二軒目以降の住宅と、非市民が上海市で新たに購入する一軒目以降の住宅とする。

恐らく居住以外の目的で2つ目、3つ目のマンションを保有していたオーナーたちの多くが、慌てて売りに走ったのだろう(私たちが住んでいる部屋だけでなく、私たちの友人が借りている部屋でも同じ様な話が立て続けに起きている)。そりゃそうだ、今までは売買の時にしか発生しなかった税金が、これからは持っているだけで発生する。暫定税率は0.6%というから、たとえば500万元のマンションだと年間3万元もの税金が発生するわけだ。

だがこれで不動産投機の抑制には効果が期待されるとしても、賃貸の場合、税コストの増加分が家賃設定にそのままかぶせられるだけではないのか?恐らく現行の法律上ではオーナー側の権限が圧倒的に強く、借りる側の権利はとても弱い。オーナーが税コスト増加分を家賃に上乗せしてきても店子側はほとんど文句を言えないような気がする。

うーむ···不動産バブルの抑制はもちろん良いのだが、なんか本末転倒といった気がしないでもない···。調べてみると、賃貸物件を管理する法律である「都市家屋賃貸管理弁法」は1995年以降まったく改訂されていないらしい。要するに法律が時代についていってない。陳腐化してしまっている、ということだ。

中国でも、専門家の中には「借り手の同意がなければ家主が勝手に値上げしてはいけないことを法律化すべきだ」と提言している人もいるようである。政府の方々には、こちらのほうもぜひ早急に前向きに検討していただきたいと切実に思う今日この頃である。


※参考
http://blog.livedoor.jp/john1984jpn/archives/51748771.html
http://www.data-max.co.jp/2010/07/39_7.html
http://www.data-max.co.jp/2010/07/40_12.html
http://www.data-max.co.jp/2010/07/41_10.html
http://www.data-max.co.jp/2010/11/79_1.html
http://www.data-max.co.jp/2010/11/80_5.html
http://ch.livedoor.biz/archives/51472286.html
http://ch.livedoor.biz/archives/51525089.html
http://j.people.com.cn/94474/6905262.html