倦怠期フライドチキン -25ページ目

JASRACについて

や、どうもごぶさたです。

今回は話題の「JASRAC」について書いてみようと思います。

今に始まったことではないのですけども、JASRACという団体は何かと
批判の的になっておるわけですが・・・


【キッカケ】

つい先日の
「音楽教室からも徴収」JASRACの方針に賛否の声(Yahoo!ニュース)
が、火に油を注いだような格好になっておりまして、

自分もJASRACには思うところがあります一方、
JASRACを使ってお仕事をさせてもらってたりもするもんですから、
この件は非常に興味を持っておりました。

で、色んな情報が入ってきたり、あるいは調べてみたりしますと、
どうも最初思ってたイメージとちょっと違うぞ?と、

考えるようになりまして、

ちょっと自分の考えをまとめておこうかな?ということで
久々にアメブロをば開いてみましたのです。

(Facebookに書こうかと思いましたが長くなりそうなので、こちらにしました。)


【JASRACは無くてもいい?】

今回の件についてのJASRACへの批判を要約するとこんな感じでしょうか。
  1. 教育目的だから徴収しなくてもいいじゃないか?
  2. 「取れるところから取る」というやり方はあざとい。
  3. 音楽教育を衰退させ、音楽業界そのものが縮小する。
  4. 学校音楽にも利用料が請求されることになるのか?
なるほど、もっとものように聞こえます。

さらに、この件に限らず言われてきたこととして、
  1. JASRACは他人の作品で暴利を貪ってういる。
  2. まるで借金の取り立てのように金を要求してくる。
  3. そのくせ、肝心の作者には正しく分配されていない。
ん。えらい言われようですね。

僕はこんな時、こういう風に考えます。
「じゃあ、JASRACなんてものは無い方がいいのかな?」

もしJASRACのような著作権管理団体がもし存在しなかったら・・・
どうなるでしょうか?

CD販売にあたり、JASRACへ管理を委託するにあたってのの手数料。
これがいらなくなるので、その分は浮きますね。
でもそれっていくらでしょう?

音楽CDの売上分配~1枚売れるといくらもらえる?~(音楽活動のヒント)

によりますと、JASRACに支払う手数料は収入の「1%」だそうです。
3000円のCD1枚売れて、30円。1000枚売れると3万円ですか。

一方、
CD販売における作者の収入は「印税」です。
現在「印税」は、JASRAC等の著作権管理団体より支払われます。
著作権管理団体が無ければ、これらの収入は入ってきません。

そうなると、どうやって売上を作者にバックするのか?
レコード会社や音楽出版社との交渉ということになるでしょう。

ただしその場合、上記の会社が著作権を管理するというような
面倒くさいことになると、その分を手数料として差っ引いた額が作者に渡るか、
もしくは「著作権買い取り」ってことになるのでしょうね。

そして、
自分の作った曲が他人にどれだけ演奏されようと、どれだけテレビやラジオで
使われようと、またカラオケで歌われようとも、
「利用料」なるものは作者に入ってこなくなるでしょうね。
(この「利用料」というものが果たして必要なのか?という議論もあります。)

ただ、「自分で作った曲をライブで演奏して、利用料を支払う」といった
ちょっとヘンな状況は解消されます。


さて、どっちがいいのでしょうか?


【「音楽教育を守る会」発足】

この騒動を受けて、“当事者”である音楽教室運営会社が
「音楽教育を守る会」を立ち上げました。

「音楽教育を守る会」 発足のお知らせ(共同通信)
「演奏権が及ぶのは公衆に聞かせるための演奏であり、音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない。文化の発展に寄与するという著作権法の目的にも合致しない。」

学校の音楽の授業に利用料が課せられるなんて話は聞いたことないし、
もっともな言い分なのかなぁ、と思いました。

しかし、もしかしてですよ、
「教育目的なら利用料免除」というルールがあるのだとしたら・・・

ある人気アーティストが
「武道館で1万人の「レッスン」をやるよ!
タンバリンでもカスタネットでもいいから、何か楽器を持ってきてね!」
とか言い出して、「コンサートみたいな」音楽教室をやると言ったら・・・

果たして利用料は免除されるんだろうか?(笑)

飛躍しすぎてますか?(^^;

でも実際、風営法で「ホールでの深夜のダンス禁止」となった時、
お客みんなで音楽に乗って「うどん粉」を踏んで
「踊ってるんじゃない。うどんを打ってるんだ。」というイベントが
実際ありましたからねぇ(^^;あながち有り得なくもないですよ。


【JASRAC外部理事 玉井氏のコメント】

JASRACの外部理事を務める東大・玉井克哉教授(知的財産法)による大手音楽教室から著作権料徴収についてのQ&A(togetter)

この記事に多くの答えがあるような気がしました。
最大手で全国に何千もの教室を展開し、数百億の売上を挙げている事業者が「ビタ一文払わん」と頑強におっしゃる。十年以上お願いしても態度が変わらない。これでは正直者が馬鹿を見るので、腰を上げるしかったのです。
これは報道では判らなかったことでした。

要約すると、
  1. 音楽を使って利益を上げている以上、利用料は徴収しなければならない。
  2. 突然利用料の徴収を決めたわけではなく、十年以上アプローチを続けていた。
  3. 教室運営者側は、利用料率にかかわらず「ビタ一文払わない」で交渉にならない。
ということなんですね。

「大手音楽教室の年間売上数百億」という部分は検証が必要でしょうが、
つまりJASRACが考えるに、利用料がかかるか否かは「教育目的かどうか」
ではなく「営利目的か否か」ということのようです。

つまり多くの音楽教室は「教育目的だが、かつ営利目的」ということになります。

ちなみに
「個人経営などの小さな教室では死活問題になる」という話が出ていますが、
JASRACの設定する利用料率は収入の2.5%ということで、

仮に1回のレッスン料が5000円だとしたら125円ですね。


【包括契約と収益分配】

で、ここまででまだ肝心なキーワードを書いていなかったのですが、

今回JASRACが業者側に提示した契約が「包括契約」であるという点です。
この「包括契約」っていうのが諸刃の剣でしてねー。

年間の包括的利用許諾契約について(JASRAC)

一方では非常に便利なシステムでして、
例えば僕もお世話になってますが、ラジオ局で簡単に音楽が流せるのも、
YouTubeやニコ生で「歌ってみた」や「弾いてみた」を合法的に出来るのも
この「包括契約」のおかげなのですね。

が、包括契約ってのはつまるところ「何の曲使ったか知らんがとにかく払ってくれ」
っていうことなので、批判の中にある「収益配分が正しく行われていない」ということの
要因になっているのであります。

分配比率の決め方としては「サンプル調査(テレビの視聴率のようなもの)」(前述の玉井氏)
ということで、玉井氏は「統計的に正しければ、大きな問題はない。」ということですが、
全く問題ないということではないと思います。

ただ、この部分に関しては少しづつ改善もされているようです。
カラオケと放送は現在はほとんどが全曲が把握されていて、一曲一曲正確に
カウントし、それに基づいて配分していますが、それは通信カラオケが普及したり
IT技術が発達したからで、仰せの通り、喫茶店などでは全曲調査はできません。
(玉井氏)


【JASRACは「銭ゲバ」なのか?】

ここでひとつのジレンマが生まれます。

JASRAC批判のひとつに「JASRACは私腹を肥やしている」というのがあります。

まず大事なポイントとして、JASRACこと日本音楽著作権協会は
株式会社ではなく「一般社団法人」であり、非営利組織であるということです。

非営利というのは(僕もNPO法人で仕事してるので)よく誤解されるのですが、
「金を受け取ってはいかん」ということではないのですね。
必要経費分は受け取ってもいいですし、もしお金が余ったらそれをまた
経費に回せばいいのです。よーするに、余ったお金を役員や社員で分けるのが
イカンということです。

なのでシステム上、私腹を肥やすことは不可能ですし、もしやっていたとしたら
これは刑事事件ですよね。

で、

「JASRACは配分をちゃんとせい!」と言われる。

ちゃんとしようとすると人手もいるし、経費もかかる。

利用料収入から経費を差し引く。

「JASRACはピンハネをしている!」と言われる。

もうどないせえっちゅーねん!ってハナシですな。


ちなみにこんなものがありましたよ。

一般社団法人日本音楽著作権協会の年収を詳しく解説(平均年収.jp)

「JASRACは私腹を肥やしている!!」って怒ってる方、
これご覧になってどうですかね?

「美味しい仕事やんけ!」って思います?
出来るなら自分が代わりたい って思いますかね?

これは一般社員の場合ですから、上の役員はどうなんだろう?
って思いますが、上記の玉井氏の記事の中に書いてますんで
ぜひ御覧ください。


【宇多田ヒカル氏のコメント】

宇多田ヒカル、学校では「無料で使って欲しいな」著作権料徴収問題で(Yahoo!ニュース)

これはねー、最初読んだ時、僕は違和感を覚えました。

(この件については、前述の通り学校教育法で定められた「学校」での利用には
利用料は徴収しませんよ、というツッコミが入っていますが、そのことは置いといて)

おそらく嘘偽りない本音を仰ったんだと思います。
ただ、宇多田ヒカルさんほどの立場の方が、公に言っていいことではないと思いました。

つまり、宇多田さんは数々の大ヒットを飛ばし、おそらく多額の印税を、すでに
JASRACから受け取られた方だろうと思います。

そんな人だからこそ「教室の分くらいいいよ。」と言えるのであって、

もしかしたら、それこそ先程「音楽教室にとって死活問題になる」ように
音楽制作者にとって教室利用分の収入が死活問題になる人が
中にはいるかも知れません。

(もっとも、そんな程度のマイナーな作品が、果たして音楽教室で使われるか?
という実際問題はありますが。)

JASRACは「音楽著作権者の団体」(玉井氏)であるので、
いち会員にすぎない(しかし影響力はある)宇多田氏が、こういう発言をするのは
いかがなものだろうか?と思ったわけです。

で、まぁ、そういう意思を持っているアーティストが多いんだとすればですね、
ひとつの解決策なんですが、

JASRACの管理には「管理区分」というのがありましてですね、
「演奏」「録音」「放送」「配信」「ゲーム」などなどの、著作物の用途によって
(今回問題になってる音楽教室は「演奏」の区分に入るのですね)
「これは管理して下さい」「これはしないで下さい」ってのが選べるように
なってるんですね。

そこに「教育」というカテゴリを入れてですね、宇多田さんのように
「教室ではタダで使わせてあげて」っていう人は「教育」の区分だけを
管理から外して、パブリックドメインにしてしまえばいいんじゃないだろか?

と、思ったわけですよ。

はい。単なる思いつきです。実際はそう簡単にはいかんのやろな。(^^;


【JASRACの問題点】

ここまでの段階で、JASRACに対してはずいぶんな誤解があるなぁ、
ということが判りました。

んじゃJASRACには何の問題も無いのか?というと
そういうわけでもないように思えます。
さっき日本音楽著作権協会から電話が掛かってきた。JASRACね。9月の西宮公演の著作権使用料を申告しろ、という内容でした。千年前の音楽には著作権はありませんよ、と教えてあげました。めちゃめちゃ上から目線の担当者は雅楽をがらくと読んでました。勉強しろよ。 
ー岩佐堅志 (@sokohjo1) 2012年12月12日
 
以前、CGAコンテストの上映会の後、JASRACから請求が来た。
登録曲を使ったという証拠でもあるのか? その曲は具体的にどれなんだ?
JASRACの言い分は、“上映会なら曲が流れていただろうから、きっと使ったに違いない”とのこと。
使ってねぇよ!
振り込め詐欺の一種か?
— DoGA (@DoGA_CGanime) 2017年2月2日

これらが本当だとすれば、JASRACの体質なのか、担当者個人の問題なのか
判断しかねますが、「とにかく取れるところから取れ」という姿勢に見られてしまう
ことは否めなません。

上で書いようにた「ちゃんとしよう」とすればこそ、だと思いますが、
このあたりは出来る限り気をつけて貰えらたらなぁ、と思います。


あとこれは努力目標だとは思いますが、よく言われるように
「透明性」を高めることは、ぜひやってもらいたいと思います。

利用料を徴収するケース、しないケース、使用料率の根拠の明示

そして正確な配分。
手書き文書で処理していた時代とは違い、今はITがある。
難しいとは思うが、頑張って欲しいなと思います。

そして、ここが肝心なのだけど、

これに関してはJASRACだけの問題ではなく、音楽利用者の側も
協力すべきことだと思います。

個別契約か包括契約かにかかわらず、使った曲を正しく報告すれば
きめ細かい、正しい配分が可能になります。


例えば、どんなに自分の作品が売れてなかったとしても、
たとえ10円でも1円でも配分があれば、「あぁ誰かが買ってくれてるんだ」
と、アーティストの励みになると思うのです。
(あぁ・・・「ケータイクリエイターズ広場」の頃を思い出すなぁ(笑))

また、著作権に関する知識に関しても、我々が進んで勉強するべきだと思います。
ホームページもあるわけですし。

「JASRACの告知が足りないんだ!」なんてことを言い出すと、
JASRACはさらに広報や啓発活動に金をかけざるを得なくなり、
結果、アーティストに渡る収益が減ることになります。


【音楽文化の発展に影響は?】

JASRACが音楽教室から利用料を徴収することによって
「音楽業界が衰退する」という説。

音楽教室が無かったら音楽業界成り立ちませんかね?
今音楽業界を支えてるのは?音楽教室出身者だけでしょううか?

確かに影響はあると思います。しかしどの程度でしょうか?

JASRACのコメントでは、「当面、全国展開している大手音楽教室のみが
対象となる。個人のような零細な教室は対象としない」ということです。

利用料で潰れてしまうようなところからは取らない、ということですから
その辺は安心していいんじゃないでしょうか?
(「当面」ってのがちょっと怖いですけどね。)

また仮に利用料分を受講料に転嫁したとして、

「JASRACのせいで、音楽教室の受講料が125円上がった。
だからもう教室行くのやめよう。」

そんな人間が将来、音楽業界を支えられるとは思えないんですけどもね。

それに、本当に音楽を学ぼうと思ったら音楽大学等に行く方法もあるし、
誰かプロに弟子入りする方法もあるかも知れないし、
もちろん独学でやる方法もある。

そこまで真剣に考えてない?
あくまで趣味で教室に通ってる人も多い?

だったら「娯楽」ですよね?
なおのことカラオケと変わらないじゃないですか。


売上の数%の利用料で衰退する業界なら、もうしてると思います。


【音楽権利の難しさ】

「芸術分野でここまで手厚く権利が保護されているのは音楽だけ」
というご意見がありまして、あぁなるほどなぁ、と思いました。

なんでだろう?と考えてみますに、

音楽というヤツは「カタチ」が無いんですな。そして目に見えない。

レコード?CD?それはあくまで「入れ物」に過ぎないのです。
しかも、簡単に複製が出来てしまう。非常にやっかいな物なのですね。

そして一番困りものなのは、音楽に限らず
日本人の悪い癖として、

「形のないもの、目に見えないもの」の価値を認めようとしない。
お金を払いたがらないのです。
 
「減るもんじゃあるまいし」
そういう考え方なんですよね。

そのへんの意識っていうのは、変えていかないといけないんじゃないかなぁ?
と、思うわけですが、

多分そんなところで、しっかり権利を保護しよう、ってことになったのではないかなー?
と推測するわけです。


【一番悪いのは誰だ?】
これはハッキリ言います。一番悪いのはマスコミです。
この件に限りませんが、

JASRACを悪者にして叩けば、部数が伸びる。視聴率が上がる。
その為なら、例え多少情報を捻じ曲げてでもセンセーショナルに仕上げる。
そして都合の悪い情報は隠す。

ということを、ヤツらは平気でやります。

マスコミの情報を鵜呑みにしてはいけません。
(ネットの情報だって疑わしいものも多いですが)

色んな情報を総合して、最終的に自分で考えることが大切だと思います。

本当の「銭ゲバ」「金の亡者」は、大手マスコミなのです。


【まとめ】

さて長々と書いてきましたが、そろそろここまで来た段階での、
「僕の言いたいこと」を最後にまとめます。

《JASRAC批判者へ》
  • マスコミ報道を疑い、鵜呑みにしないようにしましょう。
  • 憶測や感情だけで批判するのは、自分に帰ってくるし、醜い。
  • JASRACの取り分は収益の1割。美味しいですか?あなたならこの仕事やってみたいと思いますか?
  • 自分でよく考えましょう。物事を多角的に見て判断しましょう。ウラを読みましょう
  • JASRACの後ろには、あなたの大好きなアーティストがいるのです。
《JASRACへ》
  • 時代にあった改革をして欲しい。何かを変えるのは勇気が要りますが、そこは頑張って欲しい。
  • 出来るだけ丁寧な仕事をして欲しい。あなたたちは(人気商売である)アーティストの代理なのですから。
  • 出来る限り正確な配分を。アーティスト達の信頼に応えて欲しい。
《音楽利用者へ》
  • 音楽が無ければ成り立たない仕事で利益を得ているのなら、利用料を払うべき。
  • JASRACは交渉には応じると言っている。よく話しを聞いて欲しい。また調べて欲しい。
  • 利用報告には協力を。
  • 音楽をタダで使いたいが為だけにJASRACを批判しているのなら言語道断。
《「音楽教育を守る会」へ》
  • 「我々は音楽文化を担っているんだ!」というのなら、また、利用料を払いたくないのならば、あなたがたもJASRACのように非営利団体にしてみてはいかが?
《アーティストへ》
  • JASRACに不満があり、批判するなら、信託を取り下げればよろしい。著作権管理団体は他にもあるし、インディーズでやっていく方法もある。また実際そうしてる人もいる。
《マスコミへ》
  • 事実・真実だけを報道しろ。

以上。