この曲を初めて聴いたとき、
「リズムが無い」
と思いました。
重厚な和声が地を這うように、天を塗りつぶすようにひたすらに進んでいく。
二回目。
リズムはある。ただし弱々しい明滅のみが。
三回目。
弦楽の隙間のない和声が音のうねりや対流を生み出しています。
それが、単音になった時や、単純な三和音になったときの美しさを引き立てます。
アルトのみずみずしい声が
遠くでかすかに見える光明に聞こえたり、
水の流れる音に聞こえたりして、
濁った中にも3次元的な広がりを感じます。
YouTubeに、アウシュビッツ強制収容所で演奏されたものがありました(2楽章)。
否定的なコメントに、
「この音楽はどこにも向かわないし、進まない。それが退屈で仕方ない。」
といったものが。
よくわかっていらっしゃる。
理解が進みました。
この音楽には、なんの解決もない。
重い空気が胸の中に堆積するだけ。
でも、それがいいんです。
強い懇願と、終わらない絶望を聴かせてくださいます。
(でもあまりに生々しくなると、聴いてられないんだろうなぁ)
今日みたいな、寒くて空が不透明な日に聴くと、
ふさぎこんでしまいますね。