この曲のCDを何種類か聴いたことがありますが、
学生指揮の期間中、ある一枚を聴いて一つのイメージが出来ました。
何十年も経って忘れてしまう前に書き留めます。



ある一枚とは、ミュンヘンフィルがチェリビダッケの指揮で演奏したもので、
思わず、「これ以上のものはない・・・!」と思ってしまうような、
細部まで一つの意志に貫かれた、とても理性的で素晴らしい演奏でした。


圧巻は2楽章でした。
2楽章の、88小節目。
言葉では言い表せないくらい深くて悠々とした響き。
これを聴いたとき僕は、
「あぁ、これはブラームスが昔の美しい思い出を回想しているんだ。
苦い思い出だって、目を細めながら、『それでよかったんだ』と、
かけがえのないものに触れているように思い出しているんだ」
と心の底から思いました。
その精神に触れたとき、自分が音楽に包まれるのを感じました。


ブラームスがこの曲を作ったのは何歳になってからか今ぱっと思い出せませんが、
50か40代後半だったと記憶しています。
僕がそのくらいの歳になれば、
今いる友人の何人かは、もうすでにいないかもしれません。
実際50になってその友人たちのことを思い出すとき、
どんな気持ちで思い出すだろう。
かけがえのない時間を過ごした友人たちだったら、
どんな気持ちで思い出すだろう。
そう思って、この場面の指揮を振っていました。
本当に、貴重な体験をさせてもらいました。
この曲に、この演奏に出会えて本当によかったと思います。