初めに言っておきますが、シュタゲゼロは間違いなく良作です。

しかし、無印みたいに、名作、とはならないでしょう。


この作品は、もしかしたら名作となりえたのに、と思わずにはいられないほど、勿体ないなーと思うことが多々あります。


その1

「6つのルートを作ったこと」

前作は一本のルート(ほかにエンディングに行く道はあったが寄り道的な存在だった)に対して、今作は6つのルートをクリアすることによって、話の全容が分かるというものだった。

これは「全ての世界線の出来事を無駄にしてはならない」という未来オカリンからのメッセージを表現したことになる。これをやりたい気持ちは分かるけれど、世界線、という舞台ではやはり難しかったのだろうと思う。

さてこの試みはいわば連作短編小説的な形をとる。要するにすべてを読んで一つの話が出来上がる。

ちなみ今作の6つのルートはどれも面白く飽きさせないもので、点数を付けると70~80点レベルの話が6つある、というわけだ。

それってすごいじゃん、と一瞬思うのだが、待ってほしい。

70~80点を6つ読むより、100点の1つ読みたいよね?ってことだ。

中々良いものを6回見るより、最高のものを1回見たいのだ。

もちろん連作短編とはすべて読むと100点に変わる、というものだが、残念ながら今作ではそれはできなかった。

というのも、前述したとおり、世界線、というものが障壁となった。すなわち、あくまでも違う世界線の話なのだ。全て見たからと言ってすべてがつながる、というわけではないので、1本に繋がった!という連作短編ならではの喜びは薄い。そしてこれが薄いのは致命的である。

もちろん全てが繋がらないわけではないのだが、それでも、いやそれだからこそ中途半端な印象はぬぐえなかった。

制作側はこの世界線を上手く使った物語をつくろうとしたはずだが、失敗、とはいわずとも成功したとは言えないと思う。


その2

「新キャラクター」

本作から出て来る、新キャラは多数いる。そして本来なら、新たなヒロインとしての役割を担うべきだとおもうのだが、それをしなかった。もちろん全員と恋愛をしろなんて思わないけれど、ヒロインとしての深さが無さ過ぎたと思う。

そして、大変勿体ない扱いだったのだ。何しろかなりの魅力的なキャラと立ち位置ばかりだったのにもかかわらず、そのほとんどを活用してなかったように思えた。

 ●椎名かがり

→おそらく今作をした人はわかると思うが、非常に勿体ない。勿体なさすぎる。前作のメインヒロインであるクリスとそっくり、しかもクリスの記憶を植え付けられている、というのに全くといっていいほどその設定を活かしてなかった。クリスとして受け入れる、とかのルートがあるべき存在だったのに、それを外したのはよくわからない。それに何故そっくりなのか、なぜ記憶がかがりにだけ定着できたのか、ということも投げっぱなしでおわる。ひどいひどすぎる。

正直「これはクリスの母親なのでは?」と途中で思い、その展開に心を躍らせたのだが(今作ではクリスの母親の話が何度も出てきており、名前は伏せられていた)全く持ってそんなことはなかった。ミスリード、のつもりなのかもしれないが、他の答えを出していないので、それにすらなっていない。ただの拍子抜けを与える人物でしかなかった。


●フブキ

→オカリンのリーディングシュタイナーと同じことが起こる新型脳炎を発症したキャラなのだが、びっくりするほど、新型脳炎を活かしていない話。そしてそのフブキも同じく全く活かすことなくいつの間にか舞台から消えていた。

前作でオカリンが経験を共有できないことで、孤独な闘いに身を投じていたのを考えると、フブキはその孤独を取り除ける存在であったのに、全くもってそんな展開にはならなかった。何で?一緒に共有できる相手、欲しかったでしょ?と疑問ばかり残る。そして、オカリンを孤独させない、という強力なヒロインになってもおかしくないのに、正直クリスを超えたっておかしくないのに、活用ゼロで終わる。何で?


●アマデウスクリス

→アマデウスクリスは一番のヒロインだったはず。なのに全然でした。最終的になくなるのはいいとしても、それまでの経緯が微妙過ぎる。もっとオカリンがアマデウスに依存していく過程を描くべきだし、それを手放す葛藤も描くべきだったのに、少なすぎる。確かに最重要人物ではあったが、なんだかなーと言った感じ。アイデアは良かったのに使いきれてない(他のヒロインもそうだけれど)。脚本の力不足としか言えないと思いますね。本当に残念。


●結論

比屋定を除く新たなヒロインを使いきれていない。これはおそらく脚本の力量で、「物語を動かすためにキャラを配置」したに過ぎない。掘り下げることも、広げることもなかったキャラがかわいそうとしかいえません。面白い話しを作ろうとし過ぎたせいで、人物を描き切れなかった。下手な脚本家の典型のように思える。



その3

「オカリンが別人」

鳳凰院凶真じゃなかった、ではなく、前作は「世界なんかどうでもいい、俺はクリスを助ける」だったはずのオカリンが今作では「みんなが不幸になる第三次世界大戦をやっぱり止めなきゃ、止めるためにクリスを助けなきゃ」になってしまった。これでいいのか???前作の自分を否定する結論でいいのか……


とここまで考えたところで気付く、分岐ルートに、ヒロインルートなし、オカリン別人……あれ?これって前作の真逆じゃないか?そういえばこの物語はクリスを助けるどころか、クリスの記録、記憶を消すことで事件は終わりを迎える。

そう考えると見えて来る。今作が”2”ではなく”0”なのも納得がいく気がする。


要するに、今作は前作の否定なのだ。否定。対立。裏。0であるのも1の逆という意味だととらえられる。有限の1と、無限の0.そう考える、不思議なくらい前作の真逆を行ったのもうなずける気がする。

アンチシュタインズ・ゲートとでも言えるような今作は、これでありなのかもしれない。

正統な続編とは言い難いけれど、これはシュタインズ・ゲートのもう一つの姿なのだろう。


前作を否定するシュタゲ。アンチシュタゲ。このあたりを意識してプレーしてみると、また違った楽しみがあるかもしれない。

良し、やはりもう一度やってみようと思う。ちなみに今は前作をやり始めたので、0をやるのはまだ先になるのだが、連続してやることで、違いをより楽しめるかもしれない。表と裏の2作。もうちょっとだけシュタゲの世界に浸りそうです。