デロイを探せ!(その47) ソ連からのデロイの引き合い | ゴンブロ!(ゴンの徒然日記)

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お盆の関西帰省や海外出張などあり、アップが途絶えてしまいました。

久方ぶりの「デロイを探せ!」アップです。

 

今回ご紹介しますのは戦後1949年のソ連からのデロイの引き合いです。

さらりと書きましたが、この話は、ゴンブロ主宰者の知る限り、史書・鉄道関係資料への記載で見たことはないので、もしかすると、世紀の大発見かもしれません。

 

発見したのは国会図書館のGHQ関連資料(マイクロフィルム)からです。

数ある英文資料の中に、突如この資料のみ、何の脈絡もなく、日本語で入っていました。

何か前後が脱落しているような気もするのですが、まずは、194961日の株式会社 進展実業のハンのある実物をご参照ください。

ソ連側からの引合に対して日本側が窓口のGHQに提出した資料でしょうか?

 

資料は以下二種類

 

★改造要項

「改造要項」とあることから、見積条件書と思ったのですが、デロイをソ連規格にして改造せよ、との内容なので、どうもソ連側の見積指示書の翻訳のような気がします。

 
 

★設計図面
一枚だけ添付されていた図面
「デロイ型電気機関車外形図」 もとは青焼き図面と思われます
芝車輛株式会社府中工場設計課の昭和23229日出図印が押印された図面です。1948年という戦後出図の図面であることにご注目ください。
図面には英文の補足もあるのですが、車輛諸元部分以外の書き込みはマイクロフィルム化の際の解像度が悪く、よく読めません。

 
 

この資料が何を示すかはよく判りませんが、ソ連から電化区間の電機に対して何らかの引合があったのは間違いないでしょう。

ゴンブロ 三原車輛製作所(その6) でも御紹介の通り、当時 ソ連/日本間では大規模な車輛購入契約(サハリン向けの蒸気機関車30両、3等客車15両、2等寝台車5両、貨車多数)が成立しており、同時期に85トン電気機関車3両の出荷も行われていました。

 

この85トン電気機関車3両は「大陸の鐵輪」によりますと、1945年日立製作所製、終戦時川崎埠頭で大陸向けに船積み待ちのものが、ソ連向けに改造の上、出荷されているものです。(軌間はソ連向け1524mmに合わせたほか、電圧:1200V1500V、出力1,100KW1,200KW、定格速度:26km/H36km/Hに改造)

ゴンブロ 三原車輛製作所(その6) でも御紹介の「電気車の科学」19493月号をご参照ください。


電気車の科学1949_03月号 

 表紙に車輛の立会試験が終わり、発送準備中と記載があることに注意。

 

ここからはゴンブロ主宰者の妄想に満ちた推測ですが、進展実業文書の日時、1949年6月は日立85トン電機の出荷が進んでいたころと思われ、この時期にソ連向けデロイの引合があったということは、彼らにとっても日本製直流3000ボルト級電機は非常に魅力的なものであったと思われます。

  


1949年当時のソ連の最新電機 VL-22 (ロシア語版Wikipediaから。写真は1960年代のものか?)


(元々のロシアの電機もルーツは米国からの輸入機にあったりするので、何となく造作が日本の電機とも似ています。)

独ソ戦に勝利を納めたとは言え、国内が戦場になり大変疲弊していた状態にあったソ連でしたが、当時の電機保有台数(約100台)から見ても、当時すでにかなりの距離の直流3000ボルト電化区間があったと思われ、85トン電機(直流1500ボルト向け)よりはデロイ(直流3000ボルト向け)が大本命であったと思われます。
(案外予備品を一括大量購入して朝鮮半島北部で就役中の「デロイ
/デロニ」の運用に資するという目的もあったりして・・・)

 

歴史の歯車次第ではシベリアの地をデロイの眷属が走っていた可能性があったかと思うと何とも不思議な気がしますし、余計に引合倒れに終わった理由が気になります。
冷戦の激化?
85トン電機の使用実績が悪かった?(継続発注がなかったのでこの可能性はあります) ソ連の風土には合わなかった? 

 

ところでこの文書を提出した進展実業」ですが、調べてみると1947年に発足のソ連貿易専門の商社でした。同社は発足後、1963年に伊藤忠商事の傘下に入り、伊藤忠の対共産圏向け進出の先兵として活躍。(そう、たぶんあの有名な瀬島龍三氏とも関係があると思われます)、今では別の会社名になっていますが、ちゃんと存続しています。

以下同社の継承会社のHPから・・・

http://www.sanko-progress.com/jp/aboutus_history.html


いつもご愛読誠に有難うございます。

国会図書館は宝の山、探せばまだ何か出てくるかも知れません。
それではまた!